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109 PM6:43集落にヴィアテ帝国の兵隊が現れる
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来た。ついに来てしまった。
タイミングとしては最良? いや、最悪なんだろうか? わからないけれどそれでもついに来たんだ。
侵略をし植民地化することを国策として大陸を蝕むヴィアテ帝国の尖兵が。
どうやらいきなり暴力的手段に出てはいない様だけれどもこの先事態がどう転ぶかは予断を許さない。
武器を手にして気が大きくなった人間が非力な相手に対して横暴に振る舞うのはよくある話だからだ。
一刻も早くトロールのみんなを逃がすのが最良だと考えた僕は集落への道を急いだ。
集落へ入る裏口を抜けて中心地へと進む。途中大きな身体を屈める様にして建物の影に身を隠すトロールたちを目にする。
果たしてヴィアテ帝国の尖兵たちは長老たちを伴って集落の中心地、井戸のある広場で何事かを話し合っていた。
僕とアオちゃんは彼らが見える位置に建っている小屋の影に身を潜める。
「長老と兵隊たちは何の話をしているの?」
僕たちより先に隠れていたトロールさんにちいさな声で訊ねる。
トロール族は総じて僕たちの種族よりも身体能力に優れている。それは聴力に関しても同様で僕たちでは聴こえない様な遠くからの会話でも聞き取ることが可能だ。
「最初にこの土地をヴィアテ帝国が支配するって話していた。それからオレたちが帝国に納めなきゃいけないゼイってヤツの話を」
トロール族って共同体では納税なんて習慣はない、
だから税と言われてもピンときていないんだろう。けれど話を聴けば税率は思いの外に高くそんな大量の作物を納めてしまうと生活も儘ならなくなるくらいに多い。
「そんな話をしながら集落を廻っていたら連中、井戸と水車を見つけちまったんだ」
井戸には手漕ぎのポンプは据えられている。アレは井戸掘りに使ったオーガー作りで技術を習得したコボルトの職人さんが吹田さんに作り方を教わって作ったモノだ。
まだ試作の段階であれ一個しかないけれど、帝国の軍人の興味を惹いてしまったようだ。そうか、帝国にはまだ無い技術だったのか。
帝国の兵が長老にその使い方を説明させそれを帝国に渡す様に言っているみたいだ。
そして水車も目を付けられてしまった。
もちろん大きいモノだから隠しようもないんだけれど、その用途を長老が説明すると兵はーそれも接収すると言い出した。
「こ、これは我らの生活の為にと異国からの旅人が滞在の折好意で授けてくださったモノです。お入り用でしたら代わりを作り納めますのでそれでご勘弁をっ」
長老の悲痛な嘆願の声が僕の居る場所まで聞こえてくる。
長老はそんなにも井戸や水車をありがたく思っていたんだ。けれど僕はそれで兵が収まるのならば渡してしまっても構わないと思う。
代わりのポンプや水車ならばまた作ればいいのだから。
けれど長老は頑なに渡すことを拒否する。
曰くこれは彼らと我々トロール族との友好の印だからと、これを渡してしまったらこの技術を授けてくれた旅人(僕らの事みたいだ。長老は僕やゆまは姉ちゃんの存在を隠す為にもう旅立ってここにはいないヒトだと兵に印象付けしたいみたいだ)が申し訳がたたないと。
次第に長老と兵の言い合いはヒートアップの様相を見せてゆく。
威圧するような兵の怒鳴り声、懇願する長老の声が集落の広場に満ちる。
僕をはじめ隠れているみんなが固唾を飲んでこのやり取りを見守っている。
そして事態は動いた。
動き出してしまった。
最悪な結果を伴って。
苛立ちが頂点に達した兵が腰に帯びていた剣を抜き放ち長老を袈裟斬りに斬ってしまったのだ。
僕の側からは長老のお腹の辺りから剣が生えている様に見えて、それはまるで出来の悪いお芝居か冗談の様でまるで現実味がない光景だった。
けれど次の瞬間大量に溢れ出した血と煩わしげに長老を蹴り剣を抜く兵士の行動がそれが嘘事などではない凄惨な殺戮のいち場面なのだと知らしめた。
「みっ、みなよ…… ぐっ… にげよ、にげる…… のだっ」
既に致命の重傷を負った長老、地面に倒れ込みながらも苦悶に満ちた声で最後の言葉を言い放ち事切れた。
それを耳にし建物の影に潜んでいたトロール族のみんなが一斉に動き出す。
子供を抱えたトロールの女性は長老の言葉に従って帝国の兵から出来るだけ距離を置くように逃げ出し、反対に屈強な男たちは手にした農具を振りかざし長老を殺めた兵に向かって走り出した。
「間もなく帝国の本隊がこの集落へと雪崩れ込んでくる、ソイツらは俺たちが何としても抑える。ナツたちは女や子供たちを率いて逃げるんだ」
帝国の兵の血で赤く染まったナイフを拭いながらピッグマンさんが僕に命じる。
トロール族をまとめていた長老が亡くなり今彼らの長となる人物はいない。ピッグマンさんも一族の年長者故に指示をしているけれど、本来狩人であるピッグマンさんはひとりで行動する事が多く指示を出す姿は何処かぎこちのないものだった。
けれど一生懸命に一族を束ねようとするピッグマンさんに逆らうなんて事は出来ない。僕は戦わない、戦えないトロールたちを率い吹田さんの待っているであろう穴のある場所を目指す事になった。
内閣調査局異種属調査室が開発した装置はこの危機に前に何とか完成した。そこまで辿り着けばトロールのみんなは僕たちが元居た世界に逃げられるだろう。
けど穴の場所はトロールのみんなは知らない。いや、正確には認識ができない。場所は知っているけれども穴を発見できないんだ。
だから一度でも穴を通り抜けた経験のある僕かアオちゃんかゆまは姉ちゃんが誘導をしなくちゃいけないんだ。
一度バラバラに逃げ出したトロールたちをまとめて穴に逃げ込む事を説明するのにずいぶんと時間を掛けてしまった。
その間に帝国は交渉が失敗したのを察知し軍隊を進めてきてしまった。
集落の周囲の森から火の手があがる。ガチャガチャと重々しい音を響かせながら鎧を纏った兵隊が集落の入り口に押し掛けてきた。
エルフだろうか? スラリと背が高い見た目だけれど大袈裟な鎧で全身を覆っているので判別はつかない。
帝国はエルフとドワーフ、獣人が人口の大半だとヨウタロウさんは言っていたけれど、ドワーフや獣人は兵隊にはなれないんだろうか?
僕が疑問を感じている間にも帝国の兵たちは配置に付き僕らを睨み付ける。
列の真ん中に立ったひときわ立派な鎧を纏った兵士が口上を垂れる。
「聴けっ、森に巣くう蛮族の群どもよっ、貴様らは事もあろうに帝国の守護者たる騎士を害してしまった。その罪は万死に等しいっ、その罰は族滅によって購うがよいっ。総員抜剣ッ!!」
スラリと兵たちが腰に帯びていた剣を抜く。急いで逃げなきゃいけない、骸となった長老を何処か踏まれたりしない場所に運ばなきゃいけない、ゆまは姉ちゃんを探して吹田さんの居る場所までみんなを避難させると伝えなきゃいけない。
やるべき事はたくさんあるハズなのにギラギラと光を反射させる殺意の象徴に威圧されてどうにも思考がさだまらない。
僕が心中で慌てながらもなにひとつとして行動に移せないなか、立派な鎧の兵士はその手に持った殺意の象徴、剣を天高く掲げ突撃の号令をくだそうとした。
「総員ッ、かかっ………がっ!??」
けれど号令は途中で悲鳴へと変わった。
集落を囲む柵をなぎ倒しヨウタロウさんが現れたんだからだ。
乱入してきたヨウタロウさんはそのまま数人の兵を押し倒し勢いのまま今まさに突撃の口火を切ろうとしていた立派な鎧の兵士を弾き飛ばした。
弾き飛ばされた兵士はそのまま小屋の壁を突き破って室内に飛び込む。
起きてこないのは気絶したからか、はたまた打ち所が悪く死んでしまったからだろうか。
ヨウタロウさんは弾き飛ばした兵などに目もくれず地面に横たわったままの長老を一瞥、次いで長老を庇うような位置で帝国の兵の群と対峙した。
「ソナタら、この地は我、カイチのヨウタロウが守護するナワバリ、そこでこの様な狼藉、如何な作為を以ての行為であろうか? 返答如何では生きて母国の土を踏めぬと知るがよい」
「ふん、たかが獣風情が随分と賢しらな口を利く。ならば聴くがよい、今日この時刻を以てこの蛮地は祝福あらたかなるヴィアテ帝国の一部となった。頭を垂れ皇帝陛下の御威光を讃えるがよい」
ヨウタロウさんに突き飛ばされた兵士に代わって別な兵士がヨウタロウさんの問いに応える。
応える?
いや、ちがう。あれは応えなんかじゃない。無理矢理に僕らを支配しようとする脅迫だ。
それに応えてヨウタロウさんが再び口を開く。
「笑止ッ! この大陸はソナタらの住まう大陸と海を隔て遠く離れておる、遠隔地にある帝国とやらにどうしてる従う道理が有ろうか? 見も知らぬ皇帝陛下とやらの威光、何故に讃えねばならぬのか?
挨拶もなしにこの地を訪れた無礼は目を瞑ろう、その礼を失した口上も無知故のモノと赦そう、だが我の庇護者たるトロールの長老を害した罪は重いぞっ! ソナタらの代表者たる人物を残し疾くかの地を放れるがよいっ! 殺し合いを求めるのならば故郷に戻り同胞同士血を流しあうよいっ! 平和を何よりも求めるのこの土地はソナタら狂人どもの気性には向かんっ!!」
「畜生がっ! 斬り刻んで今宵の贄にしてくれるっ!!」
ついに激昂した兵がヨウタロウさんに向かって手にした剣を降り下ろした。
「オオッ!」
それを合図に農機具を手にしたトロールたちも兵隊たちに襲い掛かった。
今度こそ本当に戦闘がはじまったんだ。
タイミングとしては最良? いや、最悪なんだろうか? わからないけれどそれでもついに来たんだ。
侵略をし植民地化することを国策として大陸を蝕むヴィアテ帝国の尖兵が。
どうやらいきなり暴力的手段に出てはいない様だけれどもこの先事態がどう転ぶかは予断を許さない。
武器を手にして気が大きくなった人間が非力な相手に対して横暴に振る舞うのはよくある話だからだ。
一刻も早くトロールのみんなを逃がすのが最良だと考えた僕は集落への道を急いだ。
集落へ入る裏口を抜けて中心地へと進む。途中大きな身体を屈める様にして建物の影に身を隠すトロールたちを目にする。
果たしてヴィアテ帝国の尖兵たちは長老たちを伴って集落の中心地、井戸のある広場で何事かを話し合っていた。
僕とアオちゃんは彼らが見える位置に建っている小屋の影に身を潜める。
「長老と兵隊たちは何の話をしているの?」
僕たちより先に隠れていたトロールさんにちいさな声で訊ねる。
トロール族は総じて僕たちの種族よりも身体能力に優れている。それは聴力に関しても同様で僕たちでは聴こえない様な遠くからの会話でも聞き取ることが可能だ。
「最初にこの土地をヴィアテ帝国が支配するって話していた。それからオレたちが帝国に納めなきゃいけないゼイってヤツの話を」
トロール族って共同体では納税なんて習慣はない、
だから税と言われてもピンときていないんだろう。けれど話を聴けば税率は思いの外に高くそんな大量の作物を納めてしまうと生活も儘ならなくなるくらいに多い。
「そんな話をしながら集落を廻っていたら連中、井戸と水車を見つけちまったんだ」
井戸には手漕ぎのポンプは据えられている。アレは井戸掘りに使ったオーガー作りで技術を習得したコボルトの職人さんが吹田さんに作り方を教わって作ったモノだ。
まだ試作の段階であれ一個しかないけれど、帝国の軍人の興味を惹いてしまったようだ。そうか、帝国にはまだ無い技術だったのか。
帝国の兵が長老にその使い方を説明させそれを帝国に渡す様に言っているみたいだ。
そして水車も目を付けられてしまった。
もちろん大きいモノだから隠しようもないんだけれど、その用途を長老が説明すると兵はーそれも接収すると言い出した。
「こ、これは我らの生活の為にと異国からの旅人が滞在の折好意で授けてくださったモノです。お入り用でしたら代わりを作り納めますのでそれでご勘弁をっ」
長老の悲痛な嘆願の声が僕の居る場所まで聞こえてくる。
長老はそんなにも井戸や水車をありがたく思っていたんだ。けれど僕はそれで兵が収まるのならば渡してしまっても構わないと思う。
代わりのポンプや水車ならばまた作ればいいのだから。
けれど長老は頑なに渡すことを拒否する。
曰くこれは彼らと我々トロール族との友好の印だからと、これを渡してしまったらこの技術を授けてくれた旅人(僕らの事みたいだ。長老は僕やゆまは姉ちゃんの存在を隠す為にもう旅立ってここにはいないヒトだと兵に印象付けしたいみたいだ)が申し訳がたたないと。
次第に長老と兵の言い合いはヒートアップの様相を見せてゆく。
威圧するような兵の怒鳴り声、懇願する長老の声が集落の広場に満ちる。
僕をはじめ隠れているみんなが固唾を飲んでこのやり取りを見守っている。
そして事態は動いた。
動き出してしまった。
最悪な結果を伴って。
苛立ちが頂点に達した兵が腰に帯びていた剣を抜き放ち長老を袈裟斬りに斬ってしまったのだ。
僕の側からは長老のお腹の辺りから剣が生えている様に見えて、それはまるで出来の悪いお芝居か冗談の様でまるで現実味がない光景だった。
けれど次の瞬間大量に溢れ出した血と煩わしげに長老を蹴り剣を抜く兵士の行動がそれが嘘事などではない凄惨な殺戮のいち場面なのだと知らしめた。
「みっ、みなよ…… ぐっ… にげよ、にげる…… のだっ」
既に致命の重傷を負った長老、地面に倒れ込みながらも苦悶に満ちた声で最後の言葉を言い放ち事切れた。
それを耳にし建物の影に潜んでいたトロール族のみんなが一斉に動き出す。
子供を抱えたトロールの女性は長老の言葉に従って帝国の兵から出来るだけ距離を置くように逃げ出し、反対に屈強な男たちは手にした農具を振りかざし長老を殺めた兵に向かって走り出した。
「間もなく帝国の本隊がこの集落へと雪崩れ込んでくる、ソイツらは俺たちが何としても抑える。ナツたちは女や子供たちを率いて逃げるんだ」
帝国の兵の血で赤く染まったナイフを拭いながらピッグマンさんが僕に命じる。
トロール族をまとめていた長老が亡くなり今彼らの長となる人物はいない。ピッグマンさんも一族の年長者故に指示をしているけれど、本来狩人であるピッグマンさんはひとりで行動する事が多く指示を出す姿は何処かぎこちのないものだった。
けれど一生懸命に一族を束ねようとするピッグマンさんに逆らうなんて事は出来ない。僕は戦わない、戦えないトロールたちを率い吹田さんの待っているであろう穴のある場所を目指す事になった。
内閣調査局異種属調査室が開発した装置はこの危機に前に何とか完成した。そこまで辿り着けばトロールのみんなは僕たちが元居た世界に逃げられるだろう。
けど穴の場所はトロールのみんなは知らない。いや、正確には認識ができない。場所は知っているけれども穴を発見できないんだ。
だから一度でも穴を通り抜けた経験のある僕かアオちゃんかゆまは姉ちゃんが誘導をしなくちゃいけないんだ。
一度バラバラに逃げ出したトロールたちをまとめて穴に逃げ込む事を説明するのにずいぶんと時間を掛けてしまった。
その間に帝国は交渉が失敗したのを察知し軍隊を進めてきてしまった。
集落の周囲の森から火の手があがる。ガチャガチャと重々しい音を響かせながら鎧を纏った兵隊が集落の入り口に押し掛けてきた。
エルフだろうか? スラリと背が高い見た目だけれど大袈裟な鎧で全身を覆っているので判別はつかない。
帝国はエルフとドワーフ、獣人が人口の大半だとヨウタロウさんは言っていたけれど、ドワーフや獣人は兵隊にはなれないんだろうか?
僕が疑問を感じている間にも帝国の兵たちは配置に付き僕らを睨み付ける。
列の真ん中に立ったひときわ立派な鎧を纏った兵士が口上を垂れる。
「聴けっ、森に巣くう蛮族の群どもよっ、貴様らは事もあろうに帝国の守護者たる騎士を害してしまった。その罪は万死に等しいっ、その罰は族滅によって購うがよいっ。総員抜剣ッ!!」
スラリと兵たちが腰に帯びていた剣を抜く。急いで逃げなきゃいけない、骸となった長老を何処か踏まれたりしない場所に運ばなきゃいけない、ゆまは姉ちゃんを探して吹田さんの居る場所までみんなを避難させると伝えなきゃいけない。
やるべき事はたくさんあるハズなのにギラギラと光を反射させる殺意の象徴に威圧されてどうにも思考がさだまらない。
僕が心中で慌てながらもなにひとつとして行動に移せないなか、立派な鎧の兵士はその手に持った殺意の象徴、剣を天高く掲げ突撃の号令をくだそうとした。
「総員ッ、かかっ………がっ!??」
けれど号令は途中で悲鳴へと変わった。
集落を囲む柵をなぎ倒しヨウタロウさんが現れたんだからだ。
乱入してきたヨウタロウさんはそのまま数人の兵を押し倒し勢いのまま今まさに突撃の口火を切ろうとしていた立派な鎧の兵士を弾き飛ばした。
弾き飛ばされた兵士はそのまま小屋の壁を突き破って室内に飛び込む。
起きてこないのは気絶したからか、はたまた打ち所が悪く死んでしまったからだろうか。
ヨウタロウさんは弾き飛ばした兵などに目もくれず地面に横たわったままの長老を一瞥、次いで長老を庇うような位置で帝国の兵の群と対峙した。
「ソナタら、この地は我、カイチのヨウタロウが守護するナワバリ、そこでこの様な狼藉、如何な作為を以ての行為であろうか? 返答如何では生きて母国の土を踏めぬと知るがよい」
「ふん、たかが獣風情が随分と賢しらな口を利く。ならば聴くがよい、今日この時刻を以てこの蛮地は祝福あらたかなるヴィアテ帝国の一部となった。頭を垂れ皇帝陛下の御威光を讃えるがよい」
ヨウタロウさんに突き飛ばされた兵士に代わって別な兵士がヨウタロウさんの問いに応える。
応える?
いや、ちがう。あれは応えなんかじゃない。無理矢理に僕らを支配しようとする脅迫だ。
それに応えてヨウタロウさんが再び口を開く。
「笑止ッ! この大陸はソナタらの住まう大陸と海を隔て遠く離れておる、遠隔地にある帝国とやらにどうしてる従う道理が有ろうか? 見も知らぬ皇帝陛下とやらの威光、何故に讃えねばならぬのか?
挨拶もなしにこの地を訪れた無礼は目を瞑ろう、その礼を失した口上も無知故のモノと赦そう、だが我の庇護者たるトロールの長老を害した罪は重いぞっ! ソナタらの代表者たる人物を残し疾くかの地を放れるがよいっ! 殺し合いを求めるのならば故郷に戻り同胞同士血を流しあうよいっ! 平和を何よりも求めるのこの土地はソナタら狂人どもの気性には向かんっ!!」
「畜生がっ! 斬り刻んで今宵の贄にしてくれるっ!!」
ついに激昂した兵がヨウタロウさんに向かって手にした剣を降り下ろした。
「オオッ!」
それを合図に農機具を手にしたトロールたちも兵隊たちに襲い掛かった。
今度こそ本当に戦闘がはじまったんだ。
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