93 / 117
93 アオちゃんの新兵器
しおりを挟む
僕の訓練に触発されたのかアオちゃんもまたナニヤラ訓練をしている。
僕がモーニングスターを振り回している傍らでシャノンと一緒になってなにごとかを話し合った後にその場に蹲って唸り始めた。
「キュ~~~~ッ、バァッ!」
胸元で握り込んでいた腕を天に向かって大きく掲げる。
「キュ~~~~ッ、バァッ!」
「キュ~~~~ッ、バァッ!」
あ、この動き知っている。じいちゃん家で金曜日の夜にやってたアニメの動きだ。
そのアニメは田舎に引っ越してきたふたりの女の子とおっきなオバケとの出会いを描いたジブリ作品でアオちゃんのお気に入りの映画のひとつだ。
その映画のなかで雨のなかお父さんの帰りをバス停で待つ女の子の前にオバケが現れて傘をもらったお礼に木の種を女の子にあげるんだ。
女の子は貰った種を自分ちの庭に植えるんだけど、その種を植えた場所に夜オバケが現れて種を生やそうとするんだ。
今アオちゃんがやっている動きはそのシーンのオバケと女の子たちがやっていたのとそっくり。
「キュ~~~~ッ、バァッ!」
「……………………ッ、…………ッ!」
アオちゃんと一緒にシャノンまで一緒に気合いを込めている。
うーん、シャノンもあのアニメ観たんだな。動きに迷いがなくなかなかに堂のいった「バァッ!」だ。
堂にいった動きなのはいいんだけれど、それで何をしようとしているのかがまったくわからない。
僕は必死の形相で屈伸運動を繰り返すふたりの前まで行きその動きの真意について尋ねた。
「アオちゃんとシャノンは何をやってるの? それは成功するとどうなるの?」
「キュ~、クルル~♪」
「ッ! …………ッ! ………ッ?」
「これはねー」って教えようと口を開きかけたアオちゃんをシャノンが身体をバタつかせて慌てて止める。「アオちゃんっはなしちゃったらダメじゃないっ! 秘密でできるようになってナッちゃんをビックリさせるってはりきっていたのアオちゃんでしょう?」だって。
シャノンの素振りを見て慌てて自分の口を抑えて黙り混むアオちゃん。
アオちゃんが僕に対して秘密を作ったのは驚いたけれどもそれも仲のいいシャノンとの秘密だ。きっと悪い内容じゃないだろうと僕は苦笑を洩らしつつもまた鉄球を振り回す訓練にもどった。
アオちゃんがどんな秘密兵器を繰り出して僕をビックリさせようとしているのかも楽しみだしね。
「ク~、キュウ」
「……、……」
何度繰り返しただろう、アオちゃんもシャノンも汗だくになってその場にぐったりとへたりこんでしまった。
僕は鉄球を振り回すのをやめて傍らに置いてあった水筒を手にするとアオちゃんたちのへたりこんでいる場所まで歩いていった。
「アオちゃん、根を詰めるのもほどほどにね。アオちゃんはがんばり屋さんだから体調をくずさないか見てて心配になってくるよ」
アオちゃんは何て言うのかな、考えたことを一発で成功させるような天才肌の気質ではない。
けれど努力して努力してどうやったら成功するのかを一生懸命に考えてたとえ失敗してもめげたりしないで必ず成し遂げる努力家だ。
かつて空を飛んだ時も練習と無茶の末にそうやって成功させた。必ずアオちゃんの思い描いたことは叶うだろう。
「シャノンも汗だくじゃないか。アオちゃんのガンバりに付き合ってくれるのは嬉しいけれども君も無理はしないでアオちゃんを応援してくれるだけでもいいんだからね」
妖精のシャノンはアオちゃんよりもずっと身体がちいさい。アオちゃんとおんなじ動きを続けていればアオちゃんよりも疲れは溜まるだろう。
シャノンにも水を分けられたらいいんだけれども、あいにくとシャノンは穴の向こう側に居るから触ることも叶わない。
シャノンとアオちゃんがこれ以上無理をしないように僕は立ち上がってパンッと大きく手を叩いた。
「さ、もう今日は暗くなってきたから訓練もおしまいにしよう。シャノン、僕たちはもう帰るからシャノンも暗くなる前にエミおばさんの家に戻るんだよ?」
シャノンの身体を気遣って僕は解散を告げる。
アオちゃんとシャノンはもう少しだけ訓練をしていたいってゴネたけれども僕は聞き入れず頑として今日の終わりを宣言した。
穴から遠ざかって行く僕とアオちゃんにシャノンはずっと手を振っていた。
いつも帰りしな、シャノンはさみしそうな表情を見せるけれども今日はことさらにさみしげだった。
たぶんアオちゃんと一緒に目標を持ってなにかを始めたのが楽しくってたまらなかったんだろう。
穴が完全に見えなくなる直前で僕とアオちゃんは振り替えってまだ手を振り続けている僕らのちいさな親友に「また明日ね」って手を振って答えた。
僕がモーニングスターを振り回している傍らでシャノンと一緒になってなにごとかを話し合った後にその場に蹲って唸り始めた。
「キュ~~~~ッ、バァッ!」
胸元で握り込んでいた腕を天に向かって大きく掲げる。
「キュ~~~~ッ、バァッ!」
「キュ~~~~ッ、バァッ!」
あ、この動き知っている。じいちゃん家で金曜日の夜にやってたアニメの動きだ。
そのアニメは田舎に引っ越してきたふたりの女の子とおっきなオバケとの出会いを描いたジブリ作品でアオちゃんのお気に入りの映画のひとつだ。
その映画のなかで雨のなかお父さんの帰りをバス停で待つ女の子の前にオバケが現れて傘をもらったお礼に木の種を女の子にあげるんだ。
女の子は貰った種を自分ちの庭に植えるんだけど、その種を植えた場所に夜オバケが現れて種を生やそうとするんだ。
今アオちゃんがやっている動きはそのシーンのオバケと女の子たちがやっていたのとそっくり。
「キュ~~~~ッ、バァッ!」
「……………………ッ、…………ッ!」
アオちゃんと一緒にシャノンまで一緒に気合いを込めている。
うーん、シャノンもあのアニメ観たんだな。動きに迷いがなくなかなかに堂のいった「バァッ!」だ。
堂にいった動きなのはいいんだけれど、それで何をしようとしているのかがまったくわからない。
僕は必死の形相で屈伸運動を繰り返すふたりの前まで行きその動きの真意について尋ねた。
「アオちゃんとシャノンは何をやってるの? それは成功するとどうなるの?」
「キュ~、クルル~♪」
「ッ! …………ッ! ………ッ?」
「これはねー」って教えようと口を開きかけたアオちゃんをシャノンが身体をバタつかせて慌てて止める。「アオちゃんっはなしちゃったらダメじゃないっ! 秘密でできるようになってナッちゃんをビックリさせるってはりきっていたのアオちゃんでしょう?」だって。
シャノンの素振りを見て慌てて自分の口を抑えて黙り混むアオちゃん。
アオちゃんが僕に対して秘密を作ったのは驚いたけれどもそれも仲のいいシャノンとの秘密だ。きっと悪い内容じゃないだろうと僕は苦笑を洩らしつつもまた鉄球を振り回す訓練にもどった。
アオちゃんがどんな秘密兵器を繰り出して僕をビックリさせようとしているのかも楽しみだしね。
「ク~、キュウ」
「……、……」
何度繰り返しただろう、アオちゃんもシャノンも汗だくになってその場にぐったりとへたりこんでしまった。
僕は鉄球を振り回すのをやめて傍らに置いてあった水筒を手にするとアオちゃんたちのへたりこんでいる場所まで歩いていった。
「アオちゃん、根を詰めるのもほどほどにね。アオちゃんはがんばり屋さんだから体調をくずさないか見てて心配になってくるよ」
アオちゃんは何て言うのかな、考えたことを一発で成功させるような天才肌の気質ではない。
けれど努力して努力してどうやったら成功するのかを一生懸命に考えてたとえ失敗してもめげたりしないで必ず成し遂げる努力家だ。
かつて空を飛んだ時も練習と無茶の末にそうやって成功させた。必ずアオちゃんの思い描いたことは叶うだろう。
「シャノンも汗だくじゃないか。アオちゃんのガンバりに付き合ってくれるのは嬉しいけれども君も無理はしないでアオちゃんを応援してくれるだけでもいいんだからね」
妖精のシャノンはアオちゃんよりもずっと身体がちいさい。アオちゃんとおんなじ動きを続けていればアオちゃんよりも疲れは溜まるだろう。
シャノンにも水を分けられたらいいんだけれども、あいにくとシャノンは穴の向こう側に居るから触ることも叶わない。
シャノンとアオちゃんがこれ以上無理をしないように僕は立ち上がってパンッと大きく手を叩いた。
「さ、もう今日は暗くなってきたから訓練もおしまいにしよう。シャノン、僕たちはもう帰るからシャノンも暗くなる前にエミおばさんの家に戻るんだよ?」
シャノンの身体を気遣って僕は解散を告げる。
アオちゃんとシャノンはもう少しだけ訓練をしていたいってゴネたけれども僕は聞き入れず頑として今日の終わりを宣言した。
穴から遠ざかって行く僕とアオちゃんにシャノンはずっと手を振っていた。
いつも帰りしな、シャノンはさみしそうな表情を見せるけれども今日はことさらにさみしげだった。
たぶんアオちゃんと一緒に目標を持ってなにかを始めたのが楽しくってたまらなかったんだろう。
穴が完全に見えなくなる直前で僕とアオちゃんは振り替えってまだ手を振り続けている僕らのちいさな親友に「また明日ね」って手を振って答えた。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
鬼神の刃──かつて世を震撼させた殺人鬼は、スキルが全ての世界で『無能者』へと転生させられるが、前世の記憶を使ってスキル無しで無双する──
ノリオ
ファンタジー
かつて、刀技だけで世界を破滅寸前まで追い込んだ、史上最悪にして最強の殺人鬼がいた。
魔法も特異体質も数多く存在したその世界で、彼は刀1つで数多の強敵たちと渡り合い、何百何千…………何万何十万と屍の山を築いてきた。
その凶悪で残虐な所業は、正に『鬼』。
その超絶で無双の強さは、正に『神』。
だからこそ、後に人々は彼を『鬼神』と呼び、恐怖に支配されながら生きてきた。
しかし、
そんな彼でも、当時の英雄と呼ばれる人間たちに殺され、この世を去ることになる。
………………コレは、そんな男が、前世の記憶を持ったまま、異世界へと転生した物語。
当初は『無能者』として不遇な毎日を送るも、死に間際に前世の記憶を思い出した男が、神と世界に向けて、革命と戦乱を巻き起こす復讐譚────。
いずれ男が『魔王』として魔物たちの王に君臨する────『人類殲滅記』である。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
田舎生活 ~農業、海、山、そして異世界人!?~
蛍 伊織
ファンタジー
<第一部 完結しました。だけどこれからも続きます!>
(ようやくスローライフに入れる・・・)
「会社辞めます。」
30歳、雄太はサラリーマンをやめて祖母が農業をやっている田舎へとやって来た。
会社勤めはもうコリゴリだ。だけどお腹は空く。
食べるためには仕方がない。雄太はとある決心した。
『婆ちゃん、俺さ農業手伝うよ。』
・・・
それから1年、いつものように収穫から帰るとあるはずの自分の家がなくなっていた。
代わりに建っていたのは見覚えのない西洋風の屋敷。
中から現れたのは3人の女の子と1人の執事だった。
<異世界の住人が田舎にやって来ました!>
面白い物好きの姫様(16)、男嫌いの女騎士(21)、魔法使いの女の子(12)
が主人公・雄太(31)と現代世界を楽しく生きる物語。
たまに訪れる苦難にも力を合わせて立ち向かいます!
※カクヨムとなろうでも同時掲載中です。
異世界転移~治癒師の日常
コリモ
ファンタジー
ある日看護師の真琴は仕事場からの帰り道、地面が陥没する事故に巻き込まれた。しかし、いつまでたっても衝撃が来ない。それどころか自分の下に草の感触が…
こちらでは初投稿です。誤字脱字のご指摘ご感想お願いします
なるだけ1日1話UP以上を目指していますが、用事がある時は間に合わないこともありますご了承ください(2017/12/18)
すいません少し並びを変えております。(2017/12/25)
カリエの過去編を削除して別なお話にしました(2018/01/15)
エドとの話は「気が付いたら異世界領主〜ドラゴンが降り立つ平原を管理なんてムリだよ」にて掲載させてもらっています。(2018/08/19)
魔法少女七周忌♡うるかリユニオン
LW
ファンタジー
あれから七年、皆が魔法を拗らせた。
元魔法少女と元敵幹部が再会するガールミーツガール。
-------------------------
七年前の夏休み、語世麗華は魔法少女の小学生だった。
魔法の妖精から力を受け取り、変身してステッキで戦い、悪の組織を壊滅させ、山麓の地方都市を守った。
それきり世界から魔法は消えて、魔法の夏は終わったはずだった。
しかしそれから七年経って、再び町に魔獣が現れる。
高校生になった麗華はかつて敵幹部だった芽愛と再会し、不完全に復活した魔法の力で魔獣を撃退する。
芽愛と協力して魔獣退治に奔走するうち、元魔法少女や元敵幹部も次々に集まってくる。
七年経ってすっかり色々拗らせてしまったかつての関係者たち。
ロリコンお姉さん、炎上Youtuber、不人気アイドル、年齢不詳の不良ぼっち。かつての敵と味方が入り乱れ、不穏な魔法が渦巻く町を駆け回る。
今年の騒動はいったい誰が何のために? 七年前に積み残した秘密と恋心の行方は?
セピア色に染まった魔法の夏がもう一度始まる。
-------------------------
#うるユニ
テキスト:LW(@lw_ru)
タイトルロゴ:いちのせらいせ様(@ffff02_f)
表紙イラスト&キャラクタ―シート:NaiDiffusionV3
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる