59 / 116
59 キマイラ連絡変
しおりを挟む
太郎さんにお願いして吹田さんに連絡をしてもらった。
けれどやっぱり吹田さんは怪我を負っていて今は病院で治療中だそうだ。
アナウンサーさんに押され足場の倒壊に巻き込まれたにも関わらず打撲のみの軽傷で済んだらしいんだけど、万が一を期して鮫肌さんが救急車に吹田さんを押し込んだそうだ。
心配だったけど鮫肌さんから吹田さんの様子が聞けてホッとした。
そして代わりにスマフォに出たのは吹田さんの秘書の鮫肌さん。けど吹田さんが動けない為に仕事を鮫肌さんが肩替わりしているそうで彼女もかなり忙しいそうだ。
「夏君、申し訳ありませんが手短に用件をお願いします」
いつもよりも早口でそう言う鮫肌さんは確かに余裕がなさそうだった。
僕は籠目大社の結界が破られ現れた幻獣がかつて見たキマイラであること、そのキマイラがアオちゃんを狙ってこちらに向かっていることを伝えた。
途中鮫肌さんから「そのお話の根拠は何なのでしょうか?」と訊かれたので「カメラが踏み潰される直前に撮したキマイラの眼です。あれはカメラの向こう側にアオちゃんが居るのに確実に感付いていました」って応えた。
スマフォの向こう側の鮫肌さんは僕の言葉を鼻で笑ったりせずに「そうですか」と受け入れてくれた。
『カメラ越しの視線に殺気を感じた』キリッ)だなんて自分で言いながらも「こんなこと信じる訳がないよなぁ」…なんて思っていたから鮫肌さんの反応はかなり意外でつい僕は言葉に詰まってしまった。
「幻獣については容易にサンプルの入手もかなわず未だ未知な部分ばかりなのです。例え荒唐無稽に思える習性だろうと頭ごなしに否定すべきではないと室長は申していましたし、夏君はこの世界で最も幻獣についてを知っている人物であると私たちは考えています」
「僕が? ですか?」
「ええ、皆川夏君、あなたこそがです」
なんで? だってまだ僕なんか子どもだし、幻獣なんてアオちゃんとシャノンぐらいしか知らない。幻獣やあっちの世界、結界なんかに関してならばじいちゃんのほうがずっと物知りだし、国に対策室があるくらいだからそれらを専門に研究しているひとたちだって居るはずだろう。
だのになぜに僕が最も幻獣を知ってるって言えるのだろう?
「アオちゃんがそばに居るからですよ」
「え、あっ!」
なんで? 判んない? って雰囲気を顔が見えなくても察したのだろう。鮫肌さんはすこし微笑んだ声で応えてくれた。
「卵から孵った直後からずっと一緒に居てその幻獣を育て教育し、ましてや空を翔ばせ魔法まで覚えさせる。果たしてアナタ以上に幻獣の専門家と言える人物は居るのかしら?」
「なるほど」
正確に言えばシャノンと暮らしているエミおばさんもいるから一番かどうかは疑問だけれど、アオちゃんを通じて幻獣を知っていると言われれば自信を以てそうだと胸を張れる。
「それに私自身も夏君の性分ならば多少ながらも知っています。アナタは面白半分に嘘を吐いたりデタラメを口走ったりする性格ではありませんからね」
「信じてくれてありがとうございます、鮫肌さん」
「で、夏君は件の幻獣、『キマイラ』がアオちゃんを襲いにそちらまでやって来るので我々異種属調査室からの護衛を増やして欲しいのですね?」
「はい、そうです」
さすがは有能秘書の名を欲しいままにする鮫肌桃子さん、一を聴いて十を知るってこーゆーのなんだろうね。
もしかしたら僕が連絡をする必要もなくすでに増援部隊を送ってくれた後なのかも…
「申し訳ありませんが」
ありゃ!?
「事情は把握していても」
ありゃりゃっ!??
「夏君の要望にお応えはできそうにないんです」
ありゃりゃりゃりゃーーーーっ!???
鮫肌さんの話では彼女が納得できる話でも所詮は子どもの話、彼女の独断でひとを動かすことは出来ないそうだ。異種属調査室が入ってる内閣調査局ってののえらいひとたちを説得出来ないし、今無理矢理ひとを動かせばキマイラの周囲を手薄にしてしまい、住民に危害が加えられてしまう危険性もあるそうだ。
そう、今異種属調査室は他の部署のひとたちにも協力してもらって全力でキマイラの動向を監視中なのだと鮫肌さんは教えてくれた。
「確かに夏君の言葉通りキマイラは何かしらの目的を持った足取りであるように見受けられます。そしてその進む先はアナタたちの住んでいる県の方角。夏君の言葉を裏付ける行動と言えるでしょう。
…さらには」
と、そこで鮫肌さんは何かを言い澱んだ。
たぶんあまりいい情報じゃないんだろう。だけど鮫肌さんは「アオちゃんを護ろうとするならば知るべきでしょうね、心して聴いてちょうだいね」って言って教えてくれた。
「籠目大社から十数キロ離れた場所にある動物園をキマイラは襲ったわ。そこでヤツは他の動物には目もくれずある動物を襲ったの、その動物はコウモリ、キマイラは檻のなかにいたフィリピンオオコウモリを襲い捕食したわ」
コウモリ? オオコウモリってのが僕の知っているコウモリとどれくらい大きさに差があるのか知らないけれど、空を飛ぶ生き物は浮くためにあまり余計な肉を付けないって聴いたことがある。もっと食べ甲斐のある、襲い甲斐のある動物ってのは他にもいるだろう。
豚や牛みたいな肉の多い動物や、嫌な話だけどたくさんいて掴まえやすいニンゲンだとか… だのになんでわざわざ檻を破る手間を掛けてまでコウモリなんかを襲ったんだろう?
「コウモリの翼を得る目的で襲ったみたいですね」
「んん? 翼を得る目的??」
僕の疑問が電話越しに通じたのか、鮫肌さんはキマイラがコウモリを襲った理由を教えてくれたけれども、ますますクエスチョンが増えただけだった。
けれどやっぱり吹田さんは怪我を負っていて今は病院で治療中だそうだ。
アナウンサーさんに押され足場の倒壊に巻き込まれたにも関わらず打撲のみの軽傷で済んだらしいんだけど、万が一を期して鮫肌さんが救急車に吹田さんを押し込んだそうだ。
心配だったけど鮫肌さんから吹田さんの様子が聞けてホッとした。
そして代わりにスマフォに出たのは吹田さんの秘書の鮫肌さん。けど吹田さんが動けない為に仕事を鮫肌さんが肩替わりしているそうで彼女もかなり忙しいそうだ。
「夏君、申し訳ありませんが手短に用件をお願いします」
いつもよりも早口でそう言う鮫肌さんは確かに余裕がなさそうだった。
僕は籠目大社の結界が破られ現れた幻獣がかつて見たキマイラであること、そのキマイラがアオちゃんを狙ってこちらに向かっていることを伝えた。
途中鮫肌さんから「そのお話の根拠は何なのでしょうか?」と訊かれたので「カメラが踏み潰される直前に撮したキマイラの眼です。あれはカメラの向こう側にアオちゃんが居るのに確実に感付いていました」って応えた。
スマフォの向こう側の鮫肌さんは僕の言葉を鼻で笑ったりせずに「そうですか」と受け入れてくれた。
『カメラ越しの視線に殺気を感じた』キリッ)だなんて自分で言いながらも「こんなこと信じる訳がないよなぁ」…なんて思っていたから鮫肌さんの反応はかなり意外でつい僕は言葉に詰まってしまった。
「幻獣については容易にサンプルの入手もかなわず未だ未知な部分ばかりなのです。例え荒唐無稽に思える習性だろうと頭ごなしに否定すべきではないと室長は申していましたし、夏君はこの世界で最も幻獣についてを知っている人物であると私たちは考えています」
「僕が? ですか?」
「ええ、皆川夏君、あなたこそがです」
なんで? だってまだ僕なんか子どもだし、幻獣なんてアオちゃんとシャノンぐらいしか知らない。幻獣やあっちの世界、結界なんかに関してならばじいちゃんのほうがずっと物知りだし、国に対策室があるくらいだからそれらを専門に研究しているひとたちだって居るはずだろう。
だのになぜに僕が最も幻獣を知ってるって言えるのだろう?
「アオちゃんがそばに居るからですよ」
「え、あっ!」
なんで? 判んない? って雰囲気を顔が見えなくても察したのだろう。鮫肌さんはすこし微笑んだ声で応えてくれた。
「卵から孵った直後からずっと一緒に居てその幻獣を育て教育し、ましてや空を翔ばせ魔法まで覚えさせる。果たしてアナタ以上に幻獣の専門家と言える人物は居るのかしら?」
「なるほど」
正確に言えばシャノンと暮らしているエミおばさんもいるから一番かどうかは疑問だけれど、アオちゃんを通じて幻獣を知っていると言われれば自信を以てそうだと胸を張れる。
「それに私自身も夏君の性分ならば多少ながらも知っています。アナタは面白半分に嘘を吐いたりデタラメを口走ったりする性格ではありませんからね」
「信じてくれてありがとうございます、鮫肌さん」
「で、夏君は件の幻獣、『キマイラ』がアオちゃんを襲いにそちらまでやって来るので我々異種属調査室からの護衛を増やして欲しいのですね?」
「はい、そうです」
さすがは有能秘書の名を欲しいままにする鮫肌桃子さん、一を聴いて十を知るってこーゆーのなんだろうね。
もしかしたら僕が連絡をする必要もなくすでに増援部隊を送ってくれた後なのかも…
「申し訳ありませんが」
ありゃ!?
「事情は把握していても」
ありゃりゃっ!??
「夏君の要望にお応えはできそうにないんです」
ありゃりゃりゃりゃーーーーっ!???
鮫肌さんの話では彼女が納得できる話でも所詮は子どもの話、彼女の独断でひとを動かすことは出来ないそうだ。異種属調査室が入ってる内閣調査局ってののえらいひとたちを説得出来ないし、今無理矢理ひとを動かせばキマイラの周囲を手薄にしてしまい、住民に危害が加えられてしまう危険性もあるそうだ。
そう、今異種属調査室は他の部署のひとたちにも協力してもらって全力でキマイラの動向を監視中なのだと鮫肌さんは教えてくれた。
「確かに夏君の言葉通りキマイラは何かしらの目的を持った足取りであるように見受けられます。そしてその進む先はアナタたちの住んでいる県の方角。夏君の言葉を裏付ける行動と言えるでしょう。
…さらには」
と、そこで鮫肌さんは何かを言い澱んだ。
たぶんあまりいい情報じゃないんだろう。だけど鮫肌さんは「アオちゃんを護ろうとするならば知るべきでしょうね、心して聴いてちょうだいね」って言って教えてくれた。
「籠目大社から十数キロ離れた場所にある動物園をキマイラは襲ったわ。そこでヤツは他の動物には目もくれずある動物を襲ったの、その動物はコウモリ、キマイラは檻のなかにいたフィリピンオオコウモリを襲い捕食したわ」
コウモリ? オオコウモリってのが僕の知っているコウモリとどれくらい大きさに差があるのか知らないけれど、空を飛ぶ生き物は浮くためにあまり余計な肉を付けないって聴いたことがある。もっと食べ甲斐のある、襲い甲斐のある動物ってのは他にもいるだろう。
豚や牛みたいな肉の多い動物や、嫌な話だけどたくさんいて掴まえやすいニンゲンだとか… だのになんでわざわざ檻を破る手間を掛けてまでコウモリなんかを襲ったんだろう?
「コウモリの翼を得る目的で襲ったみたいですね」
「んん? 翼を得る目的??」
僕の疑問が電話越しに通じたのか、鮫肌さんはキマイラがコウモリを襲った理由を教えてくれたけれども、ますますクエスチョンが増えただけだった。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~
水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート!
***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!
愛されなければお飾りなの?
まるまる⭐️
恋愛
リベリアはお飾り王太子妃だ。
夫には学生時代から恋人がいた。それでも王家には私の実家の力が必要だったのだ。それなのに…。リベリアと婚姻を結ぶと直ぐ、般例を破ってまで彼女を側妃として迎え入れた。余程彼女を愛しているらしい。結婚前は2人を別れさせると約束した陛下は、私が嫁ぐとあっさりそれを認めた。親バカにも程がある。これではまるで詐欺だ。
そして、その彼が愛する側妃、ルルナレッタは伯爵令嬢。側妃どころか正妃にさえ立てる立場の彼女は今、夫の子を宿している。だから私は王宮の中では、愛する2人を引き裂いた邪魔者扱いだ。
ね? 絵に描いた様なお飾り王太子妃でしょう?
今のところは…だけどね。
結構テンプレ、設定ゆるゆるです。ん?と思う所は大きな心で受け止めて頂けると嬉しいです。
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
ふざけんな!と最後まで読まずに投げ捨てた小説の世界に転生してしまった〜旦那様、あなたは私の夫ではありません
詩海猫
ファンタジー
こちらはリハビリ兼ねた思いつき短編の予定&完結まで書いてから投稿予定でしたがコ⚪︎ナで書ききれませんでした。
苦手なのですが出来るだけ端折って(?)早々に決着というか完結の予定です。
ヒロ回だけだと煮詰まってしまう事もあるので、気軽に突っ込みつつ楽しんでいただけたら嬉しいですm(_ _)m
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
顔をあげると、目の前にラピスラズリの髪の色と瞳をした白人男性がいた。
周囲を見まわせばここは教会のようで、大勢の人間がこちらに注目している。
見たくなかったけど自分の手にはブーケがあるし、着ているものはウエディングドレスっぽい。
脳内??が多過ぎて固まって動かない私に美形が語りかける。
「マリーローズ?」
そう呼ばれた途端、一気に脳内に情報が拡散した。
目の前の男は王女の護衛騎士、基本既婚者でまとめられている護衛騎士に、なぜ彼が入っていたかと言うと以前王女が誘拐された時、救出したのが彼だったから。
だが、外国の王族との縁談の話が上がった時に独身のしかも若い騎士がついているのはまずいと言う話になり、王命で婚約者となったのが伯爵家のマリーローズである___思い出した。
日本で私は社畜だった。
暗黒な日々の中、私の唯一の楽しみだったのは、ロマンス小説。
あらかた読み尽くしたところで、友達から勧められたのがこの『ロゼの幸福』。
「ふざけんな___!!!」
と最後まで読むことなく投げ出した、私が前世の人生最後に読んだ小説の中に、私は転生してしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる