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第十話
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ああ。頭が痛い。
焼けるように熱い。
……あれ、これはヨハン王子。
私もいる。
天国かな?
こんな素敵なドレス……着たことない。
お揃いの指輪。
やっと付けられた。
良かった。
「……ヴィクトリア」
声がする。
誰?
「起きろ……ヴィクトリア!」
あ、ヨハン王子だ。
泣いてるのかな?
「ヴィクトリアぁぁ!!!」
王子の叫びが私の耳にこだまし、私はゆっくりと意識を取り戻した。
病院のにおいがして目をゆっくりと開けると、そこには涙を流す王子の顔があった。
「王子……?」
「ヴィクトリア……ヴィクトリアぁ!!」
次第に思い出す。
自分になにがあったのか。
「王子……私、生きているのですね……」
「ああ。そうだ……生きてる。お前は生きてる!」
どうやら私は助かったらしい。
王子が強く私の手を握ってくれている。
「王子、そういえば夢を見たんです。私と王子が……」
と、そこで私はあれが夢でないことに気づいた。
何度も経験したあの感じ……今思えばあれは未来視だった。
「夢?」
「あ、いや……なんでもないです!忘れてください!」
恥ずかしいから未来視の内容は黙っていよう。
私と王子の結婚式は確実に訪れるのだから……。
激しい頭痛に襲われ、リリアはその場に膝をついた。
心配して使用人が駆け寄ってくるも、その声が遠くなっていく。
未来視が起こったのだ。
「嘘でしょ……」
しかしその内容はあまりにも残酷なもので、彼女はおもむろに立ち上がると、その場を離れようとした。
「リリア様!大丈夫ですか!?突然動かれては危ないですよ!」
しかし使用人が彼女の手を力いっぱいに掴み、その場に押し留める。
「やめなさい!離して!」
彼女が声を上げるも、使用人は離す様子を微塵も見せない。
使用人はリリアを心配してそうしたのだろうが、リリアとしてはこの場を一刻も早く離れたかった。
と、その時。
「きゃぁ!!!泥棒よ!!!」
遠くから使用人の声が響き、マントで身を隠した怪しい男がこちらへ走ってきた。
手には包丁が握られている。
「ぎゃ!!」
リリアの手を掴んでいた使用人は驚いて、思わずリリアの手を離した。
さっきまで逃れようと足に力を入れていたリリアは、急に手を離され、反動で泥棒の前に飛び出してしまう。
「どけ!女!」
泥棒は血走った目でリリアを睨むと、手に持った包丁を振りかざした。
「うぅ……」
腹に包丁を刺されたリリアはその場にくずれ落ち、意識を失う。
未来視で視た未来は変えることはできない。
彼女が数十秒前に見た未来は、自分が泥棒に刺されるものだったのだ。
その後彼女は奇跡的に一命をとりとめたが、王子の婚約者を刺した罪で、無期懲役に処された。
焼けるように熱い。
……あれ、これはヨハン王子。
私もいる。
天国かな?
こんな素敵なドレス……着たことない。
お揃いの指輪。
やっと付けられた。
良かった。
「……ヴィクトリア」
声がする。
誰?
「起きろ……ヴィクトリア!」
あ、ヨハン王子だ。
泣いてるのかな?
「ヴィクトリアぁぁ!!!」
王子の叫びが私の耳にこだまし、私はゆっくりと意識を取り戻した。
病院のにおいがして目をゆっくりと開けると、そこには涙を流す王子の顔があった。
「王子……?」
「ヴィクトリア……ヴィクトリアぁ!!」
次第に思い出す。
自分になにがあったのか。
「王子……私、生きているのですね……」
「ああ。そうだ……生きてる。お前は生きてる!」
どうやら私は助かったらしい。
王子が強く私の手を握ってくれている。
「王子、そういえば夢を見たんです。私と王子が……」
と、そこで私はあれが夢でないことに気づいた。
何度も経験したあの感じ……今思えばあれは未来視だった。
「夢?」
「あ、いや……なんでもないです!忘れてください!」
恥ずかしいから未来視の内容は黙っていよう。
私と王子の結婚式は確実に訪れるのだから……。
激しい頭痛に襲われ、リリアはその場に膝をついた。
心配して使用人が駆け寄ってくるも、その声が遠くなっていく。
未来視が起こったのだ。
「嘘でしょ……」
しかしその内容はあまりにも残酷なもので、彼女はおもむろに立ち上がると、その場を離れようとした。
「リリア様!大丈夫ですか!?突然動かれては危ないですよ!」
しかし使用人が彼女の手を力いっぱいに掴み、その場に押し留める。
「やめなさい!離して!」
彼女が声を上げるも、使用人は離す様子を微塵も見せない。
使用人はリリアを心配してそうしたのだろうが、リリアとしてはこの場を一刻も早く離れたかった。
と、その時。
「きゃぁ!!!泥棒よ!!!」
遠くから使用人の声が響き、マントで身を隠した怪しい男がこちらへ走ってきた。
手には包丁が握られている。
「ぎゃ!!」
リリアの手を掴んでいた使用人は驚いて、思わずリリアの手を離した。
さっきまで逃れようと足に力を入れていたリリアは、急に手を離され、反動で泥棒の前に飛び出してしまう。
「どけ!女!」
泥棒は血走った目でリリアを睨むと、手に持った包丁を振りかざした。
「うぅ……」
腹に包丁を刺されたリリアはその場にくずれ落ち、意識を失う。
未来視で視た未来は変えることはできない。
彼女が数十秒前に見た未来は、自分が泥棒に刺されるものだったのだ。
その後彼女は奇跡的に一命をとりとめたが、王子の婚約者を刺した罪で、無期懲役に処された。
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