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第八話
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コンコン。
部屋のドアを叩く音が鳴り、ユースチスは体を起こした。
「ユースチス……ちょっといいか?」
父さんか……。
ユースチスはベッドから離れると、ドアを開けた。
そこには彼の父ゼフの姿があった。
「……ユースチス、さっきのことだが……」
さっきのこと……父さんが馬車で警官に賄賂を渡したことだろうな。
そう思ったユースチスはニヤリと笑った。
「ああ……大丈夫だよ父さん。誰にも言わないから。それにしても父さんも悪いねぇ。いつもそうやって不祥事でももみ消しているのかい? まあ俺にとっては結果オーライだったけどさ」
ゼフの眉がピクリと動くが、それに構うことなくユースチスは続ける。
「これからもさ、何かあったら父さんに頼むことにするよ。……それにしてもクレアたちはざまぁみろだね! 生意気言いやがってあいつら……」
「ユースチス……」
「誰も俺を裁けない、これからもよろしく頼むよとうさ……」
「ユースチス!!!」
「……え?」
ゼフが突然大きな声を出したので、ユースチスの体がビクッと震えた。
先ほど警官に賄賂を渡していた時の面影はなく、いつもの厳しい父の顔に戻っていた。
「どうしたの? 父さん……」
ユースチスは訳も分からず疑問符を浮かべたが、ゼフは真っすぐユースチスを睨みつける。
「ユースチス……どうやら全く反省していないようだな」
「……え?」
「すみません、こちらへ……」
ゼフが後ろを向いて声を出すと、どこからか先ほどの警官が小走りに走ってきた。
家の中に待機していたらしい。
「ユースチスさん、とりあえずあなたを署へと連行します」
「はぁ!? ふざけんな! お前さっきお金貰ってただろ!? あれでチャラになるんじゃないのかよ!」
警官がため息交じりに言う。
「あのお金はゼフさんに返しました。本当に貰う訳がないでしょう。……僕とゼフさんでわざとああいうことをやって、あなたが反省するか試していたんですよ」
「な、なんだと……ふざけんなよ……」
ユースチスはやっと事情を理解したのか、顔色が徐々に青白くなっていく。
「ユースチス、私は言ったはずだ。チャンスを無駄にするなと。もちろん反省したからと言って罪がなくなるわけではないが、誠意は示すことが出来るだろう」
「く……くそっ……くそぉぉぉぉぉ!!!!!!」
「では、行きましょうか」
その後、ユースチスは警官に連れられ家を去った……
部屋のドアを叩く音が鳴り、ユースチスは体を起こした。
「ユースチス……ちょっといいか?」
父さんか……。
ユースチスはベッドから離れると、ドアを開けた。
そこには彼の父ゼフの姿があった。
「……ユースチス、さっきのことだが……」
さっきのこと……父さんが馬車で警官に賄賂を渡したことだろうな。
そう思ったユースチスはニヤリと笑った。
「ああ……大丈夫だよ父さん。誰にも言わないから。それにしても父さんも悪いねぇ。いつもそうやって不祥事でももみ消しているのかい? まあ俺にとっては結果オーライだったけどさ」
ゼフの眉がピクリと動くが、それに構うことなくユースチスは続ける。
「これからもさ、何かあったら父さんに頼むことにするよ。……それにしてもクレアたちはざまぁみろだね! 生意気言いやがってあいつら……」
「ユースチス……」
「誰も俺を裁けない、これからもよろしく頼むよとうさ……」
「ユースチス!!!」
「……え?」
ゼフが突然大きな声を出したので、ユースチスの体がビクッと震えた。
先ほど警官に賄賂を渡していた時の面影はなく、いつもの厳しい父の顔に戻っていた。
「どうしたの? 父さん……」
ユースチスは訳も分からず疑問符を浮かべたが、ゼフは真っすぐユースチスを睨みつける。
「ユースチス……どうやら全く反省していないようだな」
「……え?」
「すみません、こちらへ……」
ゼフが後ろを向いて声を出すと、どこからか先ほどの警官が小走りに走ってきた。
家の中に待機していたらしい。
「ユースチスさん、とりあえずあなたを署へと連行します」
「はぁ!? ふざけんな! お前さっきお金貰ってただろ!? あれでチャラになるんじゃないのかよ!」
警官がため息交じりに言う。
「あのお金はゼフさんに返しました。本当に貰う訳がないでしょう。……僕とゼフさんでわざとああいうことをやって、あなたが反省するか試していたんですよ」
「な、なんだと……ふざけんなよ……」
ユースチスはやっと事情を理解したのか、顔色が徐々に青白くなっていく。
「ユースチス、私は言ったはずだ。チャンスを無駄にするなと。もちろん反省したからと言って罪がなくなるわけではないが、誠意は示すことが出来るだろう」
「く……くそっ……くそぉぉぉぉぉ!!!!!!」
「では、行きましょうか」
その後、ユースチスは警官に連れられ家を去った……
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