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第二話
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「え?」
背後で声がして私は振り返った。
そこには黒い服と黒いとんがり帽子をかぶった老婆の姿があった。
本で見るような魔女の姿だった。
「あ、あなた誰! どうやってこの部屋に入ってきたの!?」
老婆は部屋の扉の前に立っていた。
気味悪い笑みを浮かべている。
「ひゃひゃっ……元気なお嬢さんだね……」
「は?」
「私が魔法を使ってやる必要もないかね……」
「な、何を言っているの?」
どういうこと?
魔法?まさか本当に魔女だなんて言うつもり?
私がそう思うと、老婆はまるで心でも読んだかのように返答をした。
「私は魔女さ。空を飛んでいたらお嬢さんの辛そうな顔が見えてね。気になって部屋に入ってきたのさ」
「部屋に? ど、どうやって? 鍵は閉まってたはずでしょ!」
「魔法だよ」
「え?」
「魔法って言ったのさ。魔女をあんまり舐めないことだね」
どうやら老婆……いや、魔女は魔法で部屋に入ってきたらしい。
確かに部屋の扉は鍵を閉めていたし、窓から入ったのなら私が気づかないはずがない。
この人の言っている通り魔法で片付けてしまえば、筋は通るが……。
「それよりお嬢さん、何かあったのかい? 魔女と話せる機会なんてそうないよ、話してみなさい」
「え? で、でも……」
「ほら」
私は未だに警戒心を保っていたが、魔女の温かい口調に誘われ、気づいたら口を開いていた。
「私は……」
今までの辛い経験が言葉になって溢れだした。
魔女は何も言わずに黙って話を聞いていた。
いつの間にか涙が流れていた。
開けっ放しの窓から冷たい風が入っているはずなのに、体は熱くなっていた。
「今まで本当に辛くて……辛くて……」
全てを話し終える頃には魔女は私の肩を抱いていた。
温かい手だった。
「話してくれてありがとうね。やっぱりお嬢さんには私の力が必要かもね」
「力?」
「そうだよ。私の……転生をさせることが出来る力が」
「転生? 何ですかそれは?」
「新しく生まれ変わるのさ。新しい人生、新しい家族、もう一度やり直せる!」
「もう一度……」
魔女の言葉を聞いた瞬間、涙は止まった。
「でも、本当にそんなことが可能なんですか?」
私がそう問いかけると魔女は笑った。
「お嬢さんが私を信じるならね」
魔女の話が本当かどうかなんてわからない。
でも、もしここから抜け出すことが出来るのなら……。
私は……私は……!
「お婆さん。お願いします。私を助けてください」
「うん、決心したようだね。じゃあいくよ」
魔女は頷くと、呪文のようなものを唱え始めた。
空気の流れが変わり、部屋が地震でも起こったみたいに揺れる。
「お嬢さん……よい未来を」
瞬間、眩い光が目の前に現れた。
光が私を包み込み、視界が真っ白になってゆく。
そしてそれと同時に瞼がどんどん重くなっていった。
何が起こっているの?
すごく……眠い……
光に導かれるままに私は瞼を閉じた……
背後で声がして私は振り返った。
そこには黒い服と黒いとんがり帽子をかぶった老婆の姿があった。
本で見るような魔女の姿だった。
「あ、あなた誰! どうやってこの部屋に入ってきたの!?」
老婆は部屋の扉の前に立っていた。
気味悪い笑みを浮かべている。
「ひゃひゃっ……元気なお嬢さんだね……」
「は?」
「私が魔法を使ってやる必要もないかね……」
「な、何を言っているの?」
どういうこと?
魔法?まさか本当に魔女だなんて言うつもり?
私がそう思うと、老婆はまるで心でも読んだかのように返答をした。
「私は魔女さ。空を飛んでいたらお嬢さんの辛そうな顔が見えてね。気になって部屋に入ってきたのさ」
「部屋に? ど、どうやって? 鍵は閉まってたはずでしょ!」
「魔法だよ」
「え?」
「魔法って言ったのさ。魔女をあんまり舐めないことだね」
どうやら老婆……いや、魔女は魔法で部屋に入ってきたらしい。
確かに部屋の扉は鍵を閉めていたし、窓から入ったのなら私が気づかないはずがない。
この人の言っている通り魔法で片付けてしまえば、筋は通るが……。
「それよりお嬢さん、何かあったのかい? 魔女と話せる機会なんてそうないよ、話してみなさい」
「え? で、でも……」
「ほら」
私は未だに警戒心を保っていたが、魔女の温かい口調に誘われ、気づいたら口を開いていた。
「私は……」
今までの辛い経験が言葉になって溢れだした。
魔女は何も言わずに黙って話を聞いていた。
いつの間にか涙が流れていた。
開けっ放しの窓から冷たい風が入っているはずなのに、体は熱くなっていた。
「今まで本当に辛くて……辛くて……」
全てを話し終える頃には魔女は私の肩を抱いていた。
温かい手だった。
「話してくれてありがとうね。やっぱりお嬢さんには私の力が必要かもね」
「力?」
「そうだよ。私の……転生をさせることが出来る力が」
「転生? 何ですかそれは?」
「新しく生まれ変わるのさ。新しい人生、新しい家族、もう一度やり直せる!」
「もう一度……」
魔女の言葉を聞いた瞬間、涙は止まった。
「でも、本当にそんなことが可能なんですか?」
私がそう問いかけると魔女は笑った。
「お嬢さんが私を信じるならね」
魔女の話が本当かどうかなんてわからない。
でも、もしここから抜け出すことが出来るのなら……。
私は……私は……!
「お婆さん。お願いします。私を助けてください」
「うん、決心したようだね。じゃあいくよ」
魔女は頷くと、呪文のようなものを唱え始めた。
空気の流れが変わり、部屋が地震でも起こったみたいに揺れる。
「お嬢さん……よい未来を」
瞬間、眩い光が目の前に現れた。
光が私を包み込み、視界が真っ白になってゆく。
そしてそれと同時に瞼がどんどん重くなっていった。
何が起こっているの?
すごく……眠い……
光に導かれるままに私は瞼を閉じた……
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