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第十八話
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「そういえばオルガ、まだあれ飲んでるかい?」
「え?あれって?」
「えっと……アルスなんとかって子から貰った……えっと、なんか水みたいなやつ」
きっとアルスフィーヌがくれた魔法薬の小瓶のことを言っているのだろう。
「あれ飲むとよく眠れるって言ってただろ?」
「ええ、まだ飲んでるわ」
「そっか。もしよかったら一杯だけ分けてくれないかな?」
「別に構わないけれど……どうしたの?」
私が聞くと、ロイは少し困った顔をして答えた。
「実はその……寝不足でね。会社が一応部屋は用意してくれるのだけど、全然眠れなくて。せめて家にいる時だけでも寝ていたいんだ」
はぁ~っとわざとらしいため息をつくロイ。
「わかったわ、じゃあ今持ってくる」
「ありがとう。悪いけど、部屋まで持ってきてもらってもいいかな?」
「ええ」
私は席を立った。
(あれ……?)
キッチンに向かおうとしたその時、私の脳裏にある考えがひらめいた。
動きを止めることなく、思考を続ける。
魔法薬の小瓶とコップを手に取ると、彼の部屋まで行く。
「ああオルガ、悪いね」
「いえ、大丈夫よ」
机に小瓶とコップを置いて、彼の目を見つめる。
「どうかしたオルガ?」
「ねぇ……ロイ」
「ん?」
「あなたは……私のこと好きよね?」
「っ!!」
ロイが驚いたように私を見た。
その表情には焦りが見える。
私は口角を上げて彼に聞いた。
「ロイ……本当のことを言って」
「そんなことか……」
ロイは次の瞬間にはいつもの彼に戻っていた。
「君のことを愛していないわけないじゃないか」
「そう……」
私は小瓶の蓋を開けると、中身をコップに注いだ。
ロイが私のことを本当に愛してくれますように……そう願いながら。
*
「はい、お待たせ」
私はそう言って、魔法薬の入ったコップをロイに渡した。
「あ、あぁ……ありがとう……」
私はベッドの横に置いてある椅子に座った。
「じゃあ……いただきます」
ロイはゆっくりと口に含んだ。
ごくりと喉が鳴る。
「ど、どうかしら……?」
「う、うん……すごく美味しいよ、これ」
ロイは私を見て笑っている。
「よかった……」
私はほっとして胸をなでおろした。
これで安心ね。
「ありがとう、じゃあ俺はこのまま寝させてもらうよ。昨日徹夜してたからくたくたなんだ……」
ロイはあくびをしながらベッドの中に入っていった。
「うん、ゆっくり休んで」
「あぁ……」
ロイは布団を被って目を閉じた。
それを確認した後、私は椅子から立ち上がる。
「じゃあお休みなさい、ロイ」
「…………」
返事はない。
もう眠ってしまったようだ。
「ふぅ……」
とりあえず、これでよし……。
私はロイの部屋を出て、自分の部屋に戻った……。
「え?あれって?」
「えっと……アルスなんとかって子から貰った……えっと、なんか水みたいなやつ」
きっとアルスフィーヌがくれた魔法薬の小瓶のことを言っているのだろう。
「あれ飲むとよく眠れるって言ってただろ?」
「ええ、まだ飲んでるわ」
「そっか。もしよかったら一杯だけ分けてくれないかな?」
「別に構わないけれど……どうしたの?」
私が聞くと、ロイは少し困った顔をして答えた。
「実はその……寝不足でね。会社が一応部屋は用意してくれるのだけど、全然眠れなくて。せめて家にいる時だけでも寝ていたいんだ」
はぁ~っとわざとらしいため息をつくロイ。
「わかったわ、じゃあ今持ってくる」
「ありがとう。悪いけど、部屋まで持ってきてもらってもいいかな?」
「ええ」
私は席を立った。
(あれ……?)
キッチンに向かおうとしたその時、私の脳裏にある考えがひらめいた。
動きを止めることなく、思考を続ける。
魔法薬の小瓶とコップを手に取ると、彼の部屋まで行く。
「ああオルガ、悪いね」
「いえ、大丈夫よ」
机に小瓶とコップを置いて、彼の目を見つめる。
「どうかしたオルガ?」
「ねぇ……ロイ」
「ん?」
「あなたは……私のこと好きよね?」
「っ!!」
ロイが驚いたように私を見た。
その表情には焦りが見える。
私は口角を上げて彼に聞いた。
「ロイ……本当のことを言って」
「そんなことか……」
ロイは次の瞬間にはいつもの彼に戻っていた。
「君のことを愛していないわけないじゃないか」
「そう……」
私は小瓶の蓋を開けると、中身をコップに注いだ。
ロイが私のことを本当に愛してくれますように……そう願いながら。
*
「はい、お待たせ」
私はそう言って、魔法薬の入ったコップをロイに渡した。
「あ、あぁ……ありがとう……」
私はベッドの横に置いてある椅子に座った。
「じゃあ……いただきます」
ロイはゆっくりと口に含んだ。
ごくりと喉が鳴る。
「ど、どうかしら……?」
「う、うん……すごく美味しいよ、これ」
ロイは私を見て笑っている。
「よかった……」
私はほっとして胸をなでおろした。
これで安心ね。
「ありがとう、じゃあ俺はこのまま寝させてもらうよ。昨日徹夜してたからくたくたなんだ……」
ロイはあくびをしながらベッドの中に入っていった。
「うん、ゆっくり休んで」
「あぁ……」
ロイは布団を被って目を閉じた。
それを確認した後、私は椅子から立ち上がる。
「じゃあお休みなさい、ロイ」
「…………」
返事はない。
もう眠ってしまったようだ。
「ふぅ……」
とりあえず、これでよし……。
私はロイの部屋を出て、自分の部屋に戻った……。
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