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第十九話
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翌日。
約束通り、私と使用人は服屋を訪れていた。
「ここがそう?」
「はい、この店が友人の経営する店でございます」
中に入ると、店員たちがせわしなく動いている。
「いらっしゃいませー」
店内をさっと見渡す。
「素敵な雰囲気ね」
「はい、友人……店長の腕もいいですが、なにより品揃えが素晴らしいんですよ。ジェームズ様もきっと気に入っていただけるかと思います」
そう言いながら、使用人はずんずん進んでいく。
そして一つの商品の前で止まった。
「これなんていかがでしょうか?」
彼女が手に取ったのはネクタイピンだった。
シンプルなデザインだったが、とても上質なものに見える。
「綺麗ね。これにしようかな」
「ありがとうございます!あっ……こちらはいかがですか?」
使用人が違う商品を指さす。
「それもいいわね……」
私たちが楽しそうに悩んでいると、突然後ろから肩をポンポンと叩かれた。
「はい?」
店員かと思って後ろを振り向くと、そこには今私が一番会いたくない人が立っていた。
「あぁーやっぱり!先日はどうもエマさん!ソニアですぅ!」
そこに立っていたのは、ジェームズの幼馴染ソニアだったのだ。
「こんにちは、ソニアさん」
私は動揺を隠すように、彼女に笑いかける。
彼女はそんな私の様子を見て笑った。
「ふふ、別に隠さなくていいよ。エマさん私のこと嫌いでしょ?」
「……」
私は無言のまま彼女を見つめる。
「あれぇ?黙っちゃうんだ?まあそうだよね、嫌いなんて誰にも言えるわけないよねぇ」
どうやら私が彼女を嫌っていることはもうバレているようだ。
「そんなことありませんよ。でも、あなたの方こそ私のことが嫌いでしょ?」
私は平静を装って言った。
すると悪びれる様子もなく、自信満々にソニアは言った。
「うん、大っ嫌いだよ」
「……でしょうね」
ここまで素直になられると逆に感心してしまう。
「……ねぇ、一つ聞いていぃ?」
「なにかしら」
「エマさん……本当にジェームズのこと好きなの?」
「もちろんよ。だからこうして贈り物を選んでいるんでしょう」
「……本当?じゃあもしジェームズに好きな人が出来たら、ちゃんと別れてくれる?」
そこでソニアの目が急に真剣なものに変わった。
一瞬背筋がぞくっとするが、何とか気持ちを持ち直すと、私は冷淡に言った。
「さあ、どうかしらね」
「ふーん」
ソニアはしばらく真顔で私のことを見つめていたが、人が変わったように笑顔になると、背中を向けた。
「じゃあねエマさん。また会えるといいね……」
約束通り、私と使用人は服屋を訪れていた。
「ここがそう?」
「はい、この店が友人の経営する店でございます」
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「いらっしゃいませー」
店内をさっと見渡す。
「素敵な雰囲気ね」
「はい、友人……店長の腕もいいですが、なにより品揃えが素晴らしいんですよ。ジェームズ様もきっと気に入っていただけるかと思います」
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そして一つの商品の前で止まった。
「これなんていかがでしょうか?」
彼女が手に取ったのはネクタイピンだった。
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「綺麗ね。これにしようかな」
「ありがとうございます!あっ……こちらはいかがですか?」
使用人が違う商品を指さす。
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私たちが楽しそうに悩んでいると、突然後ろから肩をポンポンと叩かれた。
「はい?」
店員かと思って後ろを振り向くと、そこには今私が一番会いたくない人が立っていた。
「あぁーやっぱり!先日はどうもエマさん!ソニアですぅ!」
そこに立っていたのは、ジェームズの幼馴染ソニアだったのだ。
「こんにちは、ソニアさん」
私は動揺を隠すように、彼女に笑いかける。
彼女はそんな私の様子を見て笑った。
「ふふ、別に隠さなくていいよ。エマさん私のこと嫌いでしょ?」
「……」
私は無言のまま彼女を見つめる。
「あれぇ?黙っちゃうんだ?まあそうだよね、嫌いなんて誰にも言えるわけないよねぇ」
どうやら私が彼女を嫌っていることはもうバレているようだ。
「そんなことありませんよ。でも、あなたの方こそ私のことが嫌いでしょ?」
私は平静を装って言った。
すると悪びれる様子もなく、自信満々にソニアは言った。
「うん、大っ嫌いだよ」
「……でしょうね」
ここまで素直になられると逆に感心してしまう。
「……ねぇ、一つ聞いていぃ?」
「なにかしら」
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「もちろんよ。だからこうして贈り物を選んでいるんでしょう」
「……本当?じゃあもしジェームズに好きな人が出来たら、ちゃんと別れてくれる?」
そこでソニアの目が急に真剣なものに変わった。
一瞬背筋がぞくっとするが、何とか気持ちを持ち直すと、私は冷淡に言った。
「さあ、どうかしらね」
「ふーん」
ソニアはしばらく真顔で私のことを見つめていたが、人が変わったように笑顔になると、背中を向けた。
「じゃあねエマさん。また会えるといいね……」
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