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第十一話
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俺は自分の部屋のベッドの上で頭を抱えていた。
まさか浮気を疑われるなんて……。
確かに仕事の忙しさにかまけて彼女のことを放っておいた自覚はある。
しかしだからといって浮気を疑われたのを無かったことに出来るはずなどない。
「どうすればよかったんだよ……」
彼女……エマと別れることも頭の中で考え始める。
もし仮に浮気を認めれば違った未来もあったのかもしれない……しかしそれでもやってもいないことを認めるのは俺には出来なかった。
「ジェームズぅ、大丈夫?顔色悪いよ?」
向かいの席に座るソニアが心配そうに俺を見つめる。
「ああ、少し疲れてるだけだから気にしないでくれ。それより相談に乗ってくれてありがとな」
「ううん。気にしないで。でもあんまり無理したらだめだよぉ?そうだ!元気になるおまじないかけてあげるね」
「ん?」
そう言うと彼女は俺の頬に軽くキスをする。
「どう?ドキドキした?」
「え??ちょっ……何してんだ?」
「えへへ、言ったでしょ?ジェームズが早く元気になるようなおまじないだよ」
彼女は悪戯っぽく笑う。
「そっか……ありがとうな」
不思議と悪い気はしない。
「うん……ねぇジェームズ、今日はうちに泊まっていかない?」
「え?で、でも俺は……」
「お父さんとお母さんは出張だし、私の部屋なら広いし……」
「いや……でも流石にそれはまずいだろ?」
「どうして?……私のこと嫌いなの?」
ソニアは悲しげな表情を浮かべる。
「ち、違うよ!ただほら……俺、一応結婚してるしさ!」
「そっか……そうだよね、ジェームズにとっては奥さんの方が大事だよね……」
彼女は目を伏せると、寂しげに笑った。
「ごめんね……変なこと言って」
「いや、こっちこそすまない。俺の方こそ……」
「いいの、気を使わなくて」
ソニアはそう言うと立ち上がって、俺の傍まで来ると、耳元で囁く。
「私は好きだよ……ジェームズのこと」
「え……」
心臓が激しく脈打つ。
ソニアと過ごした日々が脳裏を過り、彼女の笑う姿が浮かぶ。
「ふふ、冗談だよ。そんなに本気にしないで」
彼女は俺から離れると、背を向けたまま歩き出す。
そして扉を開けると、俺にいつもの笑顔を向けた。
「バイバイ、ジェームズ」
彼女はそのまま去って行ってしまった。
残された俺は、しばらくその場で茫然としていた。
「はぁ……」
俺は大きなため息をつくと、困ったように顔を手で覆う。
「どうすりゃいいんだよ……」
彼女の気持ちに応えるべきか、それとも応えざるべきか……。
「いや、俺は何を……俺にはエマがいるじゃないか……」
浮気を疑ってくる妻がか?
心の中で自問自答をする。
「……エマは俺のことを信じてくれていないんだな……それにこれからも女性といただけで浮気を疑われるのだろうか……」
だんだんとエマの姿が頭から消えていくのがはっきりと分かる。
「はぁ……仕方がないよな……いいんだよな?」
俺が選んだ道は一つだった。
『ソニアの好意に応えよう』
まさか浮気を疑われるなんて……。
確かに仕事の忙しさにかまけて彼女のことを放っておいた自覚はある。
しかしだからといって浮気を疑われたのを無かったことに出来るはずなどない。
「どうすればよかったんだよ……」
彼女……エマと別れることも頭の中で考え始める。
もし仮に浮気を認めれば違った未来もあったのかもしれない……しかしそれでもやってもいないことを認めるのは俺には出来なかった。
「ジェームズぅ、大丈夫?顔色悪いよ?」
向かいの席に座るソニアが心配そうに俺を見つめる。
「ああ、少し疲れてるだけだから気にしないでくれ。それより相談に乗ってくれてありがとな」
「ううん。気にしないで。でもあんまり無理したらだめだよぉ?そうだ!元気になるおまじないかけてあげるね」
「ん?」
そう言うと彼女は俺の頬に軽くキスをする。
「どう?ドキドキした?」
「え??ちょっ……何してんだ?」
「えへへ、言ったでしょ?ジェームズが早く元気になるようなおまじないだよ」
彼女は悪戯っぽく笑う。
「そっか……ありがとうな」
不思議と悪い気はしない。
「うん……ねぇジェームズ、今日はうちに泊まっていかない?」
「え?で、でも俺は……」
「お父さんとお母さんは出張だし、私の部屋なら広いし……」
「いや……でも流石にそれはまずいだろ?」
「どうして?……私のこと嫌いなの?」
ソニアは悲しげな表情を浮かべる。
「ち、違うよ!ただほら……俺、一応結婚してるしさ!」
「そっか……そうだよね、ジェームズにとっては奥さんの方が大事だよね……」
彼女は目を伏せると、寂しげに笑った。
「ごめんね……変なこと言って」
「いや、こっちこそすまない。俺の方こそ……」
「いいの、気を使わなくて」
ソニアはそう言うと立ち上がって、俺の傍まで来ると、耳元で囁く。
「私は好きだよ……ジェームズのこと」
「え……」
心臓が激しく脈打つ。
ソニアと過ごした日々が脳裏を過り、彼女の笑う姿が浮かぶ。
「ふふ、冗談だよ。そんなに本気にしないで」
彼女は俺から離れると、背を向けたまま歩き出す。
そして扉を開けると、俺にいつもの笑顔を向けた。
「バイバイ、ジェームズ」
彼女はそのまま去って行ってしまった。
残された俺は、しばらくその場で茫然としていた。
「はぁ……」
俺は大きなため息をつくと、困ったように顔を手で覆う。
「どうすりゃいいんだよ……」
彼女の気持ちに応えるべきか、それとも応えざるべきか……。
「いや、俺は何を……俺にはエマがいるじゃないか……」
浮気を疑ってくる妻がか?
心の中で自問自答をする。
「……エマは俺のことを信じてくれていないんだな……それにこれからも女性といただけで浮気を疑われるのだろうか……」
だんだんとエマの姿が頭から消えていくのがはっきりと分かる。
「はぁ……仕方がないよな……いいんだよな?」
俺が選んだ道は一つだった。
『ソニアの好意に応えよう』
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