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第五話
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は?なんであのブスがメラード王子の婚約者なわけ?
女を知らないメラード王子を淫らに誘惑したのかしら?
「……エルザ。どうかしたのかい?」
婚約者のウィルソン王子の言葉に、はっと我に返る。
「……いえ。何でもありませんよ。ちょっと考え事をしていただけです」
メラード王子の後を追ってノアが応接間を出ていくと、私たちは疲れたようにソファーに腰を下ろしていた。
「考え事か……ちなみに何を考えていたんだい?」
「えっと……ノアのことですかね」
最初ウィルソン王子の婚約者に選ばれた時は、心臓が飛び出てしまう程に嬉しかった。
公爵令嬢だが王族との関わりなんてほとんどない私には、そんな夢は叶わないと思っていた。
無駄な理想は絵本のなかにだけ留めておけばいい……そう思って生きてきた。
しかし、私は選ばれた。
ウィルソン王子がパーティー会場で私に一目惚れをしたためだった。
彼から求婚された時は涙さえ流した。
だが今は違った。
実際に婚約者になってみて分かったが、ウィルソン王子はガタイと口だけいい、取るに足らない男だった。
頭は悪く、勉強も出来ず、周りからの信頼は厚いみたいだが、王となる資格は微塵も備わっていなかった。
「なるほど、ノアのことか。君たちは従姉同士なのだろう?昔の彼女はどんなだったんだい?」
ウィルソンは興味津々でノアのことについて聞いてきた。
「そうですね……彼女は……」
そこまで言って、私はニヤリと不気味な笑みを浮かべた。
そうよ、あんなブスがメラード王子の婚約者なんておかしい話だわ。
間違いは正してあげないと。
「ノアは……昔、私をいじめていたんです……」
「え?」
ウィルソンの顔が強張った。
ふふ、あなたが馬鹿で良かったわ。
「さっきは仲が良い雰囲気を出していましたが……本当は、彼女に話しかけるのも辛くて……でもいつかはバレてしまうだろうから、黙っているわけにもいかなくて。ウィルソン王子に心配かけないように自然な振る舞いをしていたんですぅ……」
そう言って涙を浮かべると、ウィルソンは机をドンと叩いた。
「なんだと!!!あの女……俺のエルザをいじめていただなんて!!!」
私は涙を流す気弱な女を演じたが、内心では高らかに笑い声をあげていた。
ふふっ!これであのブスもお終いね!
私の計画を邪魔したんだもの、当然の報いよ!!!
「エルザ。ノアについて詳しく話してくれ。頼む」
「はい……」
この時、僅かに開かれた応接間の扉から二人の話を聞いている者がいた。
しかしエルザもウィルソンも、それぞれの思惑に夢中でそのことに気が付かなかった。
女を知らないメラード王子を淫らに誘惑したのかしら?
「……エルザ。どうかしたのかい?」
婚約者のウィルソン王子の言葉に、はっと我に返る。
「……いえ。何でもありませんよ。ちょっと考え事をしていただけです」
メラード王子の後を追ってノアが応接間を出ていくと、私たちは疲れたようにソファーに腰を下ろしていた。
「考え事か……ちなみに何を考えていたんだい?」
「えっと……ノアのことですかね」
最初ウィルソン王子の婚約者に選ばれた時は、心臓が飛び出てしまう程に嬉しかった。
公爵令嬢だが王族との関わりなんてほとんどない私には、そんな夢は叶わないと思っていた。
無駄な理想は絵本のなかにだけ留めておけばいい……そう思って生きてきた。
しかし、私は選ばれた。
ウィルソン王子がパーティー会場で私に一目惚れをしたためだった。
彼から求婚された時は涙さえ流した。
だが今は違った。
実際に婚約者になってみて分かったが、ウィルソン王子はガタイと口だけいい、取るに足らない男だった。
頭は悪く、勉強も出来ず、周りからの信頼は厚いみたいだが、王となる資格は微塵も備わっていなかった。
「なるほど、ノアのことか。君たちは従姉同士なのだろう?昔の彼女はどんなだったんだい?」
ウィルソンは興味津々でノアのことについて聞いてきた。
「そうですね……彼女は……」
そこまで言って、私はニヤリと不気味な笑みを浮かべた。
そうよ、あんなブスがメラード王子の婚約者なんておかしい話だわ。
間違いは正してあげないと。
「ノアは……昔、私をいじめていたんです……」
「え?」
ウィルソンの顔が強張った。
ふふ、あなたが馬鹿で良かったわ。
「さっきは仲が良い雰囲気を出していましたが……本当は、彼女に話しかけるのも辛くて……でもいつかはバレてしまうだろうから、黙っているわけにもいかなくて。ウィルソン王子に心配かけないように自然な振る舞いをしていたんですぅ……」
そう言って涙を浮かべると、ウィルソンは机をドンと叩いた。
「なんだと!!!あの女……俺のエルザをいじめていただなんて!!!」
私は涙を流す気弱な女を演じたが、内心では高らかに笑い声をあげていた。
ふふっ!これであのブスもお終いね!
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「エルザ。ノアについて詳しく話してくれ。頼む」
「はい……」
この時、僅かに開かれた応接間の扉から二人の話を聞いている者がいた。
しかしエルザもウィルソンも、それぞれの思惑に夢中でそのことに気が付かなかった。
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