愛は儚く消える

ララ

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第五話

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「ロレーナ、君は何か勘違いをしているんじゃないかい?エリー様はまだ婚約もしていないじゃないか」 

「うそ……でも実際あなたたちはこの街から出ていったじゃない!」 

なぜか私たちの意見は食い違い、私は思わず声に力が入ってしまった。 

「それはエリー様のご病気の療養のためだろ?この人が多い街よりも、緑豊かな自然の元で暮らした方が体にいいって……」 

「は?病気?療養?」 

どういうこと? 
そもそもエリー様は病気だったの? 
ボンドと一緒に暮らすために遠くの街に引っ越したんじゃないの!? 
疑問の嵐が頭の中をぐるぐる回って、何が真実なのか分からなくなってくる。 

「ん?病気だと知らなかったのかい?アーサー様が君に伝えたはずなんだが……」 

「え?」 

しかしアーサーという言葉を聞いた瞬間、バラバラに散った点が、一つの線になったような感覚を覚えた。 
様々な可能性が一瞬で体を駆け抜け、最後に残った選択肢に辿り着く。 

「ボンド……じゃあ、あなたはエリー様と婚約はしていないのね?誓って本当なのね?」 

「当たり前じゃないか!!空想の出来事をどうやって真実にすればいいのさ!」 

「そう……」 

確かに、違和感は感じていたのかもしれない。 
貴族の令嬢がただの使用人と婚約なんて……それに私はボンドとエリー様が話しているのをあまり見たことがない。 

そもそも二人の駆け落ちのような引っ越しに使用人たちがついていくはずもない、あの厳格なアーサーの父親がそれを認めるとは思わない。 

今まで内に隠していた違和感が表に表出し、それと同時にある人間の顔が頭に思い浮かんだ。 
意地悪そうに笑う顔。 

一見端正な顔立ちをしているように見えるが、実はそんなにかっこよくもない輪郭。 
そして心の籠らない言葉を吐く口。 

そう。私の婚約者アーサーである。 
もし彼が今まで私に嘘をついていたのだとしたら、全て説明がつく。 

「ボンド……私、もしかしたらアーサーに今まで嘘を教えられてきたのかも……」 

私はそう切り出し、思いのたけを全てボンドに話した。 
いつの間にか両親が私の肩に手を置いていた。 

今までの話を聞いていたのだろう。 
手の温もりが嬉しかった。 

私が全て話し終えると、ボンドは面食らったような顔をしていたが、何回も頷いて理解を示してくれた。 
両親も黙って私の話を聞いてくれていた。 

「ロレーナ、確かに君の言う通りなのかもしれない。でも、確証はない。本人に直に聞いてみるしかない」 

「……そうね」 

ボンドの決意のこもった声に私は大きく頷いた。 
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