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第二話
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「見ろ、あれがララか……なんて可愛らしい子なんだ……」
「綺麗な髪だ……もしや王太子妃様よりも……」
「あんな子が側妃なんて、王太子殿下が羨ましい」
ララ・アンドルトの登場は、一瞬で王宮内の男たちの目をくぎ付けにした。
ララは、いかにも男が好きそうな可愛らしい見た目をしており背も小さいがゆえ、おそらく男性陣は庇護欲のようなものを感じ得るのだろう。
廊下を歩くララを、男たちは目を見開いてじっと見つめていた。
私とハンバルには、国王陛下自らがララを紹介してくれた。
まるで自分の娘のように陛下はララの肩に手をやっていた。
「二人とも、紹介しよう、彼女がララ・アンドルト。ハンバル、お前の側妃になる女性だ」
陛下がそう言うと、彼女はさっとカーテシーをする。
「ハンバル、お前はララとの間に子を作るのだ。分かったな?」
いつかはこういうこともあるかもしれないと予想はしていたが、現実を突きつけられると辛かった。
ハンバルが自分以外の女性と一夜を共にし、子を作る。
彼に好意を抱いてしまった今の私にとっては、こんなにも辛いことはない。
ハンバルは何か言いたげにしていたが、やがて諦めたように「はい……」と頷いた。
それを聞いた陛下は嬉しそうに笑う。
「ふふっ……では彼女の世話は任せたぞ、マーガレット」
「……かしこまりました」
感情の籠らない声でそう言うと、陛下は満足そうにその場を去った。
三人だけになるとララはハンバルの手を握った。
「ハンバル殿下!お会いできるのをずぅっと楽しみにしておりましたわ!殿下の子を産めるなんて幸福の限りです!」
「そ、そうなんだ……」
元気よく、しかし甘い声でそう言ったララに、ハンバルは顔を赤くしていた。
それを見て私の胸がチクリと痛む。
ララは私に挨拶をすることもなく続ける。
「それにしても殿下の御手、温かくて気持ちいいですね……ふふっ……私の手は……どうですか?」
そう言うとララはハンバルを上目づかいに見やった。
ハンバルが恥ずかしそうに目を逸らす。
「き、君の手も温かいよ。き、気持ちいいかな……」
「それなら良かったです。ふふっ」
彼女の笑顔にハンバルの頬が緩む。
私は王太子妃という立場でありながらも、どこか敗北感を感じ暗く俯いた。
ララはそんな私に目を移すと、落ち着いた声で言った。
「王太子妃様もよろしくお願いしますね。まだまだ未熟な部分もあるとは思いますが、お手柔らかにお願い致します」
「え、ええ……」
彼女の本性が現れたのは、それから少ししてのことだった。
「綺麗な髪だ……もしや王太子妃様よりも……」
「あんな子が側妃なんて、王太子殿下が羨ましい」
ララ・アンドルトの登場は、一瞬で王宮内の男たちの目をくぎ付けにした。
ララは、いかにも男が好きそうな可愛らしい見た目をしており背も小さいがゆえ、おそらく男性陣は庇護欲のようなものを感じ得るのだろう。
廊下を歩くララを、男たちは目を見開いてじっと見つめていた。
私とハンバルには、国王陛下自らがララを紹介してくれた。
まるで自分の娘のように陛下はララの肩に手をやっていた。
「二人とも、紹介しよう、彼女がララ・アンドルト。ハンバル、お前の側妃になる女性だ」
陛下がそう言うと、彼女はさっとカーテシーをする。
「ハンバル、お前はララとの間に子を作るのだ。分かったな?」
いつかはこういうこともあるかもしれないと予想はしていたが、現実を突きつけられると辛かった。
ハンバルが自分以外の女性と一夜を共にし、子を作る。
彼に好意を抱いてしまった今の私にとっては、こんなにも辛いことはない。
ハンバルは何か言いたげにしていたが、やがて諦めたように「はい……」と頷いた。
それを聞いた陛下は嬉しそうに笑う。
「ふふっ……では彼女の世話は任せたぞ、マーガレット」
「……かしこまりました」
感情の籠らない声でそう言うと、陛下は満足そうにその場を去った。
三人だけになるとララはハンバルの手を握った。
「ハンバル殿下!お会いできるのをずぅっと楽しみにしておりましたわ!殿下の子を産めるなんて幸福の限りです!」
「そ、そうなんだ……」
元気よく、しかし甘い声でそう言ったララに、ハンバルは顔を赤くしていた。
それを見て私の胸がチクリと痛む。
ララは私に挨拶をすることもなく続ける。
「それにしても殿下の御手、温かくて気持ちいいですね……ふふっ……私の手は……どうですか?」
そう言うとララはハンバルを上目づかいに見やった。
ハンバルが恥ずかしそうに目を逸らす。
「き、君の手も温かいよ。き、気持ちいいかな……」
「それなら良かったです。ふふっ」
彼女の笑顔にハンバルの頬が緩む。
私は王太子妃という立場でありながらも、どこか敗北感を感じ暗く俯いた。
ララはそんな私に目を移すと、落ち着いた声で言った。
「王太子妃様もよろしくお願いしますね。まだまだ未熟な部分もあるとは思いますが、お手柔らかにお願い致します」
「え、ええ……」
彼女の本性が現れたのは、それから少ししてのことだった。
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