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第十四話
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「入ってください」
私が部屋の外に向かって声を上げると、少しだけ開いた扉が動いて若い男の使用人が入ってきた。
眼鏡姿が印象的な男だった。
「私とベルに加え、彼が証人です。今までの話を外で聞いてくれてました。そうですよね?」
私が顔を向けると、使用人は頷く。
「はい。最初から全て聞かせていただきました」
使用人がぼそぼそと呟くと、母はそれを聞いてふふっと笑いだした。
「ふふっ……誰が出てくるかと思えば……こんな使用人一人の証言を誰が鵜呑みにするのかしら?さぞかしご立派な計画でも立てていたんでしょうけど、無駄足になってしまったわね。ふふ」
「……本当にそうでしょうか?」
私は諭すように母の顔を見た。
自然と声に力が入る。
「何が言いたいの?」
母も鬼のような形相で私を睨みつけてくる。
胸に手を置いて気持ちを落ち着かせる。
大丈夫。怖くない。
「どうやら使用人のことすら頭にないようですね」
挑発するように私が言う。
「は?何を言って……ん?ちょっと待って……あなた」
母は使用人に顔を向け、首を傾げた。
「こんな人……この家にいたかしら……いや、いない……でもどこかで……」
そして考えるようにブツブツと独り言を言った。
「ここの使用人ではない?……でもどこかで会ったような……」
「まだ分かりませんか?」
おもむろに使用人が眼鏡を取った。
頭に手をやり、髪形を変える。
落ち着いた印象がガラッと変わり、活発な青年のような見た目に変化した。
「あ……あなたは……」
どうやら母は気づいたようだ。
口に手を当てて、顔は真っ青になっている。
小動物のように小刻みに体も震えていた。
「会うのは二度目ですよね?」
使用人は軽く微笑むと、丁寧にお辞儀をした。
「そ、そんな……あなたは……トリル様……なぜここに……どうして?」
使用人の正体はホワイト公爵の息子、トリルであった。
私が部屋の外に向かって声を上げると、少しだけ開いた扉が動いて若い男の使用人が入ってきた。
眼鏡姿が印象的な男だった。
「私とベルに加え、彼が証人です。今までの話を外で聞いてくれてました。そうですよね?」
私が顔を向けると、使用人は頷く。
「はい。最初から全て聞かせていただきました」
使用人がぼそぼそと呟くと、母はそれを聞いてふふっと笑いだした。
「ふふっ……誰が出てくるかと思えば……こんな使用人一人の証言を誰が鵜呑みにするのかしら?さぞかしご立派な計画でも立てていたんでしょうけど、無駄足になってしまったわね。ふふ」
「……本当にそうでしょうか?」
私は諭すように母の顔を見た。
自然と声に力が入る。
「何が言いたいの?」
母も鬼のような形相で私を睨みつけてくる。
胸に手を置いて気持ちを落ち着かせる。
大丈夫。怖くない。
「どうやら使用人のことすら頭にないようですね」
挑発するように私が言う。
「は?何を言って……ん?ちょっと待って……あなた」
母は使用人に顔を向け、首を傾げた。
「こんな人……この家にいたかしら……いや、いない……でもどこかで……」
そして考えるようにブツブツと独り言を言った。
「ここの使用人ではない?……でもどこかで会ったような……」
「まだ分かりませんか?」
おもむろに使用人が眼鏡を取った。
頭に手をやり、髪形を変える。
落ち着いた印象がガラッと変わり、活発な青年のような見た目に変化した。
「あ……あなたは……」
どうやら母は気づいたようだ。
口に手を当てて、顔は真っ青になっている。
小動物のように小刻みに体も震えていた。
「会うのは二度目ですよね?」
使用人は軽く微笑むと、丁寧にお辞儀をした。
「そ、そんな……あなたは……トリル様……なぜここに……どうして?」
使用人の正体はホワイト公爵の息子、トリルであった。
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