上 下
14 / 19

第十四話

しおりを挟む
「入ってください」

私が部屋の外に向かって声を上げると、少しだけ開いた扉が動いて若い男の使用人が入ってきた。
眼鏡姿が印象的な男だった。

「私とベルに加え、彼が証人です。今までの話を外で聞いてくれてました。そうですよね?」

私が顔を向けると、使用人は頷く。

「はい。最初から全て聞かせていただきました」

使用人がぼそぼそと呟くと、母はそれを聞いてふふっと笑いだした。

「ふふっ……誰が出てくるかと思えば……こんな使用人一人の証言を誰が鵜呑みにするのかしら?さぞかしご立派な計画でも立てていたんでしょうけど、無駄足になってしまったわね。ふふ」

「……本当にそうでしょうか?」

私は諭すように母の顔を見た。
自然と声に力が入る。

「何が言いたいの?」

母も鬼のような形相で私を睨みつけてくる。
胸に手を置いて気持ちを落ち着かせる。
大丈夫。怖くない。

「どうやら使用人のことすら頭にないようですね」

挑発するように私が言う。

「は?何を言って……ん?ちょっと待って……あなた」

母は使用人に顔を向け、首を傾げた。
 
「こんな人……この家にいたかしら……いや、いない……でもどこかで……」

そして考えるようにブツブツと独り言を言った。

「ここの使用人ではない?……でもどこかで会ったような……」

「まだ分かりませんか?」

おもむろに使用人が眼鏡を取った。
頭に手をやり、髪形を変える。
落ち着いた印象がガラッと変わり、活発な青年のような見た目に変化した。

「あ……あなたは……」

どうやら母は気づいたようだ。
口に手を当てて、顔は真っ青になっている。
小動物のように小刻みに体も震えていた。

「会うのは二度目ですよね?」

使用人は軽く微笑むと、丁寧にお辞儀をした。
 
「そ、そんな……あなたは……トリル様……なぜここに……どうして?」

使用人の正体はホワイト公爵の息子、トリルであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】姉に婚約者を寝取られた私は家出して一人で生きていきます

稲垣桜
恋愛
私の婚約者が、なぜか姉の肩を抱いて私の目の前に座っている。 「すまない、エレミア」 「ごめんなさい、私が悪いの。彼の優しさに甘えてしまって」  私は何を見せられているのだろう。  一瞬、意識がどこかに飛んで行ったのか、それともどこか違う世界に迷い込んだのだろうか。  涙を流す姉をいたわるような視線を向ける婚約者を見て、さっさと理由を話してしまえと暴言を吐きたくなる気持ちを抑える。   「それで、お姉さまたちは私に何を言いたいのですか?お姉さまにはちゃんと婚約者がいらっしゃいますよね。彼は私の婚約者ですけど」  苛立つ心をなんとか押さえ、使用人たちがスッと目をそらす居たたまれなさを感じつつ何とか言葉を吐き出した。 ※ゆる~い設定です。 ※完結保証。

妹の婚約者自慢がウザいので、私の婚約者を紹介したいと思います~妹はただ私から大切な人を奪っただけ~

マルローネ
恋愛
侯爵令嬢のアメリア・リンバークは妹のカリファに婚約者のラニッツ・ポドールイ公爵を奪われた。 だが、アメリアはその後に第一王子殿下のゼラスト・ファーブセンと婚約することになる。 しかし、その事実を知らなかったカリファはアメリアに対して、ラニッツを自慢するようになり──。

信じないだろうが、愛しているのはお前だけだと貴方は言う

jun
恋愛
相思相愛の婚約者と後半年で結婚という時、彼の浮気発覚。そして浮気相手が妊娠…。 婚約は破棄され、私は今日もいきつけの店で一人静かにお酒を飲む。 少し離れた席で、似たような酒の飲み方をする男。 そのうち話すようになり、徐々に距離が縮まる二人。 しかし、男には家庭があった…。 2024/02/03 短編から長編に変更しました。

【完結】悪女のなみだ

じじ
恋愛
「カリーナがまたカレンを泣かせてる」 双子の姉妹にも関わらず、私はいつも嫌われる側だった。 カレン、私の妹。 私とよく似た顔立ちなのに、彼女の目尻は優しげに下がり、微笑み一つで天使のようだともてはやされ、涙をこぼせば聖女のようだ崇められた。 一方の私は、切れ長の目でどう見ても性格がきつく見える。にこやかに笑ったつもりでも悪巧みをしていると謗られ、泣くと男を篭絡するつもりか、と非難された。 「ふふ。姉様って本当にかわいそう。気が弱いくせに、顔のせいで悪者になるんだもの。」 私が言い返せないのを知って、馬鹿にしてくる妹をどうすれば良かったのか。 「お前みたいな女が姉だなんてカレンがかわいそうだ」 罵ってくる男達にどう言えば真実が伝わったのか。 本当の自分を誰かに知ってもらおうなんて望みを捨てて、日々淡々と過ごしていた私を救ってくれたのは、あなただった。

今日で都合の良い嫁は辞めます!後は家族で仲良くしてください!

ユウ
恋愛
三年前、夫の願いにより義両親との同居を求められた私はは悩みながらも同意した。 苦労すると周りから止められながらも受け入れたけれど、待っていたのは我慢を強いられる日々だった。 それでもなんとななれ始めたのだが、 目下の悩みは子供がなかなか授からない事だった。 そんなある日、義姉が里帰りをするようになり、生活は一変した。 義姉は子供を私に預け、育児を丸投げをするようになった。 仕事と家事と育児すべてをこなすのが困難になった夫に助けを求めるも。 「子供一人ぐらい楽勝だろ」 夫はリサに残酷な事を言葉を投げ。 「家族なんだから助けてあげないと」 「家族なんだから助けあうべきだ」 夫のみならず、義両親までもリサの味方をすることなく行動はエスカレートする。 「仕事を少し休んでくれる?娘が旅行にいきたいそうだから」 「あの子は大変なんだ」 「母親ならできて当然よ」 シンパシー家は私が黙っていることをいいことに育児をすべて丸投げさせ、義姉を大事にするあまり家族の団欒から外され、我慢できなくなり夫と口論となる。 その末に。 「母性がなさすぎるよ!家族なんだから協力すべきだろ」 この言葉でもう無理だと思った私は決断をした。

王妃ですけど、側妃しか愛せない貴方を愛しませんよ!?

天災
恋愛
 私の夫、つまり、国王は側妃しか愛さない。

私よりも姉を好きになった婚約者

神々廻
恋愛
「エミリー!お前とは婚約破棄し、お前の姉のティアと婚約する事にした!」 「ごめんなさい、エミリー.......私が悪いの、私は昔から家督を継ぐ様に言われて貴方が羨ましかったの。それでっ、私たら貴方の婚約者のアルに恋をしてしまったの.......」 「ティア、君は悪くないよ。今まで辛かったよな。だけど僕が居るからね。エミリーには僕の従兄弟でティアの元婚約者をあげるよ。それで、エミリーがティアの代わりに家督を継いで、僕の従兄と結婚する。なんて素敵なんだろう。ティアは僕のお嫁さんになって、2人で幸せな家庭を築くんだ!」 「まぁ、アルったら。家庭なんてまだ早いわよ!」 このバカップルは何を言っているの?

獣人公爵様に溺愛されすぎて死にそうです!〜乙女ゲーム攻略ダイアリー〜

神那 凛
恋愛
気づくと異世界乙女ゲームの世界! メインキャラじゃない私はイケメン公爵様とイチャラブライフを送っていたら、なぜかヒロインに格上げされたみたい。 静かに暮らしたいだけなのに、物語がどんどん進んでいくから前世のゲームの知識をフル活用して攻略キャラをクリアしていく。 けれどそれぞれのキャラは設定とは全く違う性格で……

処理中です...