17 / 18
第十七話
しおりを挟む
「二人とも今すぐ逃げなさい。ここは私が……」
早口にタリアはそう言ったが、私は素直にそれに従うことはなかった。
校長室での公爵の言葉が頭に蘇る。
『噂では本当にそれを必要とする者だけに古代魔法は扱えるというがな』
私はタリアの横に立った。
そして小声で彼女に言う。
「タリアさん。なぜか分かりませんが……先ほどから頭の中に呪文が浮かんできているんです。直感ですが、これは魔法を数倍の威力にして跳ね返せる魔法じゃないかなと……」
「……は?何言ってるの?」
「つまり、下がるのはタリアさんだということです」
私は微かに笑みを浮かべながらそう言うと、タリアの前に立った。
「ほう、ほう!ハンナ!恋敵を守るために前に立つか!やはりお前は面白い奴だぁ!!!」
公爵の手に魔力が集まる。
タリアが焦ったようにリチャードに顔を向ける。
「リチャード!ハンナが……」
「はい」
リチャードは額に汗を浮かばせながらも、諦めたように口を開いた。
「危険だということは分かっています。しかし……こういう時のハンナを止める術はありません。僕がそれを一番よく分かっています。ハンナを信じましょう」
「ありがとう、リチャード!」
私は後ろを見ないままに言った。
タリアがぼそぼそと何か呟いていたが、私はそれを無視して公爵から放たれるであろう魔法に意識を集中させる。
「ハンナ……罪を償う時が来たぁ!!!私のものになれぇ!!!」
公爵が獣のように雄たけびを上げると、こちらに向けた手の平から、大きな光の玉が発射された。
高密度に魔力が練りこまれたそれは乱回転をしながら突進してくる。
私はバッと両手の平を前に出す。
「罪を償うのはあなたよ!!!」
瞬間、光の玉が私の手の平に衝突し、辺りが光に包まれた……
早口にタリアはそう言ったが、私は素直にそれに従うことはなかった。
校長室での公爵の言葉が頭に蘇る。
『噂では本当にそれを必要とする者だけに古代魔法は扱えるというがな』
私はタリアの横に立った。
そして小声で彼女に言う。
「タリアさん。なぜか分かりませんが……先ほどから頭の中に呪文が浮かんできているんです。直感ですが、これは魔法を数倍の威力にして跳ね返せる魔法じゃないかなと……」
「……は?何言ってるの?」
「つまり、下がるのはタリアさんだということです」
私は微かに笑みを浮かべながらそう言うと、タリアの前に立った。
「ほう、ほう!ハンナ!恋敵を守るために前に立つか!やはりお前は面白い奴だぁ!!!」
公爵の手に魔力が集まる。
タリアが焦ったようにリチャードに顔を向ける。
「リチャード!ハンナが……」
「はい」
リチャードは額に汗を浮かばせながらも、諦めたように口を開いた。
「危険だということは分かっています。しかし……こういう時のハンナを止める術はありません。僕がそれを一番よく分かっています。ハンナを信じましょう」
「ありがとう、リチャード!」
私は後ろを見ないままに言った。
タリアがぼそぼそと何か呟いていたが、私はそれを無視して公爵から放たれるであろう魔法に意識を集中させる。
「ハンナ……罪を償う時が来たぁ!!!私のものになれぇ!!!」
公爵が獣のように雄たけびを上げると、こちらに向けた手の平から、大きな光の玉が発射された。
高密度に魔力が練りこまれたそれは乱回転をしながら突進してくる。
私はバッと両手の平を前に出す。
「罪を償うのはあなたよ!!!」
瞬間、光の玉が私の手の平に衝突し、辺りが光に包まれた……
107
お気に入りに追加
295
あなたにおすすめの小説
【完結】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか?
曽根原ツタ
恋愛
「クラウス様、あなたのことがお嫌いなんですって」
エルヴィアナと婚約者クラウスの仲はうまくいっていない。
最近、王女が一緒にいるのをよく見かけるようになったと思えば、とあるパーティーで王女から婚約者の本音を告げ口され、別れを決意する。更に、彼女とクラウスは想い合っているとか。
(王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは身を引くとしましょう。クラウス様)
しかし。破局寸前で想定外の事件が起き、エルヴィアナのことが嫌いなはずの彼の態度が豹変して……?
小説家になろう様でも更新中
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
ハイパー王太子殿下の隣はツライよ! ~突然の婚約解消~
緑谷めい
恋愛
私は公爵令嬢ナタリー・ランシス。17歳。
4歳年上の婚約者アルベルト王太子殿下は、超優秀で超絶イケメン!
一応美人の私だけれど、ハイパー王太子殿下の隣はツライものがある。
あれれ、おかしいぞ? ついに自分がゴミに思えてきましたわ!?
王太子殿下の弟、第2王子のロベルト殿下と私は、仲の良い幼馴染。
そのロベルト様の婚約者である隣国のエリーゼ王女と、私の婚約者のアルベルト王太子殿下が、結婚することになった!? よって、私と王太子殿下は、婚約解消してお別れ!? えっ!? 決定ですか? はっ? 一体どういうこと!?
* ハッピーエンドです。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる