上 下
13 / 18

第十三話

しおりを挟む
「やあ、ハンナ。また会ったね」

校長からの突然の呼び出し。
悪い予感はしていたが、まさかガラン公爵がいるなんて。
校長室に入った私は、思わず一歩後ずさってしまう。

「あの……校長先生、なぜガラン公爵がここに……?」

私の問いに校長は額に汗を浮かべながら答える。

「実は、公爵が君に話をしたいとおっしゃっているんだ」

「え?公爵が?」

公爵は小さく頷くと、こちらへ手招きする。

「そんな所で突っ立ってないでこちらで話そう。さあ」

恐る恐る公爵の近くまで歩を進める。
途端に彼の威圧感に襲われ、体が震えてきた。
校長も緊張しているのか、椅子に座らずに立ち上がっていた。

「……そう、その辺でいいよ。では、話を始めようか」

公爵は軽く息を吐くと、暗闇のような暗い瞳で私を見下ろす。

「先日、君を見た時、私はある違和感に襲われた。実は私の両目には見た者が魔法を使っているかどうか分かる魔法が宿っているのだが……君をよく見てみると、どうやら魔法を使っているみたいだったのだ」

「え……で、でも私魔法なんて使ってません……」

身の覚えのない公爵の言葉に私はたじろぐ。

「それに放課後の魔法使用は禁止されていますよね?どうして公爵は魔法を使えたんですか?」

私の問いに公爵が微かに笑みを浮かべた。

「私の魔法はこの学校に掛けられている魔法より魔力が強いのだ。だから使える。二つの魔法がぶつかれば魔力が強い方が勝つことは君も知っているだろう……?」

「……はい」

小さく頷くと、公爵が話を続ける。

「ハンナ。自分で自覚がないようだが、君は今この瞬間も魔法を使っているのだよ。とてつもない魔力だ……私にも匹敵するかもな……ふふっ」

彼はどこか嬉しそうだ。

「失礼。話を戻すが……先日君を観察してもその魔法の正体は分からなかった。分身魔法や洗脳の類かとも思ったが、そんな小細工に私が引っかかる訳がない。結局その場では分からなかった私は、家に帰り書物を漁った。そして発見したのだ……」

公爵は手に持った本を机の上に置いた。
そのままパラパラとめくると、時間転移魔法のページで手を止める。

「ハンナ。お前が使っていたのはこれだろ?時間転移魔法……古代魔法の一種で今はタイムスリップとも呼ばれている……」

瞬間全身に鳥肌が走る。
タイムスリップのことは誰にも言っていない。
信じてくれないからという理由もあるが、実はもう一つ理由がある。

古代魔法の使用は禁止されており、使用が確認された場合、最悪死刑になってしまうのだ。

公爵は嬉しそうに言った。

「罰を受けるのはお前の方だったようだな」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴方といると、お茶が不味い

わらびもち
恋愛
貴方の婚約者は私。 なのに貴方は私との逢瀬に別の女性を同伴する。 王太子殿下の婚約者である令嬢を―――。

【完結】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか?

曽根原ツタ
恋愛
「クラウス様、あなたのことがお嫌いなんですって」 エルヴィアナと婚約者クラウスの仲はうまくいっていない。 最近、王女が一緒にいるのをよく見かけるようになったと思えば、とあるパーティーで王女から婚約者の本音を告げ口され、別れを決意する。更に、彼女とクラウスは想い合っているとか。 (王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは身を引くとしましょう。クラウス様) しかし。破局寸前で想定外の事件が起き、エルヴィアナのことが嫌いなはずの彼の態度が豹変して……? 小説家になろう様でも更新中

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

ハイパー王太子殿下の隣はツライよ! ~突然の婚約解消~

緑谷めい
恋愛
 私は公爵令嬢ナタリー・ランシス。17歳。  4歳年上の婚約者アルベルト王太子殿下は、超優秀で超絶イケメン!  一応美人の私だけれど、ハイパー王太子殿下の隣はツライものがある。  あれれ、おかしいぞ? ついに自分がゴミに思えてきましたわ!?  王太子殿下の弟、第2王子のロベルト殿下と私は、仲の良い幼馴染。  そのロベルト様の婚約者である隣国のエリーゼ王女と、私の婚約者のアルベルト王太子殿下が、結婚することになった!? よって、私と王太子殿下は、婚約解消してお別れ!? えっ!? 決定ですか? はっ? 一体どういうこと!?  * ハッピーエンドです。

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

王子は婚約破棄を泣いて詫びる

tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。 目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。 「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」 存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。  王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~

柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。 その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!  この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!? ※シリアス展開もわりとあります。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

処理中です...