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第十話

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「へー、ここにあなたたちは住んでいるのねぇ」 

半ば強引に家の中に入ってくると、私の母は楽しそうに辺りを見回した。 

「まあいいわ。さてカレーナ、家に帰りましょうか?」 

「え?」 

両親との恐怖の日々が頭の中に鮮明に思い出される。 
そんな私の様子に気づいたのか、ナルサスが落ち着かせるように私の手を握ってくれる。 

「すみませんが、今日はこれでお引き取り願えないでしょうか。カレーナの顔を見れただけでも十分でしょう。彼女はあなたたちと暮らすことは望んでいないのです」 

少し強めの口調でそう言ったナルサスだったが、母は怯む様子もなく突然笑いだした。 

「はははっ……何を言っているのあなたは?そんなわけないでしょう。実の娘が親に対してそんなこと思う訳ないじゃない。ねえあなた」 

隣で厳しい目で腕を組んでいた父も頷く。 

「そうだな、カレーナは俺達が愛情をたっぷり与えて育てた子なんだ。だからカレーナも俺達に強い愛情を感じているはずだよ」 

「私は……」 

否定しようとするも、上手く言葉が出てこない。 

「さあ帰りましょうカレーナ……さあ」 

母が一歩近づき、私の手に触れようとする。 
しかしバッとナルサスが立ちふさがり、母をぎろりと睨みつけた。 

「失礼を承知で言わせて頂きますが、これ以上カレーナに関わらないでくれますか?彼女から全て聞きましたよ、あなた達が彼女に行っていた愚行の数々。もうカレーナの前に……」 

「はぁ?ふざけるなぁ!!」 

ナルサスの言葉を聞き終わらない内に母は怒り狂った声をあげる。 
父も憤怒の表情を浮かべていた。 

「お前なんかに私たち家族の何が分かる!?カレーナには私たちがいないといけないんだ!!邪魔なのはお前だ!!」 

そして母はポケットから刃先の鋭いハサミを出すと、それをナルサスに構えた。 

「きゃぁぁ!!止めてお母さん!!」 

私が悲鳴を上げるも、母は止まらない。 
父もそんな母を応援するかのように嬉しそうに笑っている。 
ナルサスが私と共に一歩ずつ後ろに後退する。 

「とりあえずナルサス……あなたはここで死にましょうか?」 

死の恐怖が全身を駆け巡る。 
もうダメか……そう思われた時、辺りを一蹴するような大声が響いた。 

「警察だ!!その手に持っているものを今すぐ床に置けぇ!!」 
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