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プロローグ2

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「もしもし? お母さん?」

 いつもと変わらぬ穏やかな声が返ってきた。
「美咲? もう休みに入ったと?」

 しまった、と美咲は渋い顔を浮かべる。

「いや・・・今日は休みをもらったの。一流企業だから毎日忙しいでしょ? だからね、有給ってやつ」

「そうか。それはよかった。たまには体休めんと。どんだけ期待されとっても倒れたら元も子もないとよ」

「わかってる」

 美咲は仕事の話を避けた。

「あ、そうそう。ちょうど今、荷物届いたところなんだ」

「そうか。思ったより早かったねぇ」

「いつもいいって言ってるのに。お母さんだって大変じゃない? こっちは大丈夫だよ。結構給料もらってるんだから。それにさ、お菓子はもういいよ。子供じゃあるまいし」

「昔は美味しい美味しい言って食べよったろーもん」

「昔と今は違うんだよ。私はもう大人なの」

「都会に住むだけで、言葉遣いだけやなくて、言う事も変わってきようごたぁね」

「都会は関係ないって」

「東京に行ったきり一度も帰ってこんし」

「忙しいの。それに・・・今大きなプロジェクト任されてるから」

「お母さんそっち行こうか?」

 その言葉が一番ヒヤリとする。美咲は強い口調で拒否した。

「いい! 私のことは大丈夫。だから心配しないで。また、電話するね。じゃあ」

 母に喋る隙を与えず美咲は電話を切った。ダンボール箱を見つめながらため息を吐き、母に申し訳なさを感じた。

 全部嘘だ。母は娘のことを信じているというのに・・・。

 二年前、美咲は一流企業に就職が決まり東京へ出てきた。だが、一年も経たないうちにやめてしまった。アパレル関係の仕事だったのだが、思っていたよりも刺激がなく、ただこき使われるだけの日々が続いた。

 こんなはずじゃなかった。憧れの東京で仕事して出世して大金持ちになって、母に楽させてやる。そんな夢を描いていたのに。
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