彼を好きな理由

神木カロ

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16、信じちゃダメだよ

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結婚、、、?
この人、今、結婚って言いました?

「付き合ってもいないのにキスして、結婚?は!?意味わかんないんだけど!」

最初は驚いてぼーっとしてたけど、ファーストキスを勝手に奪われたことは耐え難いことだった。

彼の腕から逃れるようにしゃがんで壁と三月の体の間の隙間から脱出した。

そのまま教室のドアまで行って開けてから振り返ると、満足気に微笑む三月がヒラヒラと手を振っている。

こいつは自分が悪いことしたって欠片も思ってないっ!!!

「あんたと関わると嫌なことばっかり!」

こんなこと言ってしまったらどうなるのかなんて考えずに、感情まかせに思いっきり叫んでそのまま走る。

私のことが好きなら、私が嫌がるようなことしないでしょ普通!!

ファーストキスも好きな人とするために大事にとっておいたし、あんな暴力的な壁ドンもいらなかったよ!

甘酸っぱいレモンのファーストキスを返してよ!

私のファーストキスがお弁当とオレンジジュースの味だなんて、嫌だ!嫌すぎる!!









教室に戻って怒りをぶちまけようと菜月に近寄ると、私よりもずっと怒っていた。

「何言われたの?何された?」

私は三月じゃないのに、、、と思うほど眉間にシワを寄せて睨まれる。

もし菜月に『聞いてよ!ファーストキスも奪われたの!』なんて言おうものなら三月の所に殴り込みに行きかねない。

「こ、告白された、かも」

「は!?あんな態度で、六花のこと好きだって!?」

「そうらしい」

「なんでそんなに曖昧な言い方なの?好きって言われたんでしょ?到底信じられないけど」

しょうがないので、キスされた部分は省いて先ほどのことを話す。

「ちゃんと告白されてないじゃん!あんなに強引に誘拐したのにそんだけ!?」

実際はそれだけじゃないんだけど、と思い出してまたイライラしてきた。

「ちゃんと告白も出来ないやつに逆らえないとか、悔しい!」

「もういいよ!逆らっちゃえば!?なんかされても水谷先生がいるし!」

「そうだよね!もうなんて言われても何されても絶対いうこと聞いてあげないよ!」

キーンコーンカーンコーン

昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴って、自分の席に戻ろうと立ち上がると菜月が「待って」と袖を引っ張った。

「あいつが六花のこと好きって、信じちゃダメだよ」

真剣な菜月の表情に、私はしっかりとうなづいた。
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