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オーディオブック(フルボイス)
【オーディオブック版】第1-1話「未開の領域」
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エアルドネル戦記、第1-1話(いちてんいちわ)
未開の領域[ナレ]
◇
最初に、白人の幼女が刺される。
『い゛や゛あ゛あ゛ッ!! マ゛マ゛!!』[幼女]
司祭が裸体の肋骨を広げ、心臓を抜いて、天に掲げた。
小さな遺体が祭壇から捨てられる。
すぐに兵士たちが歓声をあげた。
「……え?」[早苗]
目の前には10人。
縄で繋がれた全裸の白人、黒人、アジア人たちが一列に。
「……あれ、僕は」
トラックに轢かれて死んだはず。
ここはどこだ?
意識がハッキリして、周囲の光景が鮮明になる。
(……辺りは草原)[早苗]
周囲を中世風の身なりの兵士たちが囲っていた。
その背後には騎兵たち。
なんて思っている間にも、次の黒人が命乞いをした。
『糞ファッキン野郎!やめろ!ファァァック!!』[黒人男40代]
みぞおちに、ナイフが突き刺さる。
心臓を抜かれた男は悲鳴をあげ、痙攣したあと、絶命した。
ああ、何が起こっている。
まずは状況整理だ。
(……僕は学者。目が覚めると、この儀式の現場にいる)[早苗]
生贄だろうか。全裸で、なおかつ手を縄で縛られている。
逃げ隠れる場所は――背後に森林がある。
距離はおよそ600メートル。僕は走るのが遅いから時速10キロ――3分36秒か。
(……ダメだ。騎兵に追いつかれる)[早苗]
そもそも、まず縄を解かないと。
見ると、次はアジア系の女性が処刑台に。
『誰か!! 死にたくない!!!』[女性20代]
彼女も心臓を引き抜かれ、目の前の生贄はあと7人に。
理由は分からない……
だが、様々な人種の人たちが、ここで処刑されている。
『痛てぇよ! 助けてくれ!!』[男性50代]
あと6人。インド系の男が絶命した。
(そもそも、これは何の儀式だ。あの司祭は?)
兵士たちの言葉に耳を傾ける――
『ああ、神よ。この生贄で街を呪いから救いたまえ』[男30代]
兵士たちは、英語を話していた。
ただし16世紀あたり、ルネサンス時代の英語。
(……呪い。病気のことか)
でもこの生贄で病を治す儀式は、古典時代の物のハズ。
時代がバラバラだ。
映画の撮影? ではない。改変された過去に戻った?
ふと、目の前の大柄な白人男性に、小声で聞かれる。
『あんた、英語は?』[大柄男性(以降、青年)]
『話せる』と答える。
『よし。このままじゃダメだ。なにか行動を起こさないと』[青年]
(……現代のアメリカ英語だ)[早苗]
マイアミ州のスラング。フロリダなまりもある。同じ現代人であろう。
『オレの縄を解いてくれ。その後、オレもオマエを解く』
『わかった』
ちょうどいい。他人の縄を解く方が簡単だ。
静かに結び目を凝視する。
(この結び目。縄を折り返して輪に。つまり……)
周囲を見るが、兵士たちの視線は祭壇に集まっている。
背を向けて、男の縄を押し込む。
すぐに縄は緩くなった。
『……はやっ! ナイスだ、すごいな! 次はオマエの縄を……』[青年]
だが、その時間はない。
鎧を着た兵士が寄ってくる。
残りはあと1人。次はこの目の前の白人が、殺される番のようだ。
『オレはマックス。恩を返す。オマエは逃げろ』[青年(以降、マックス)]
『……何をする気だ?』
マックスが祭壇に連れていかれる。
だが隙を見て彼は、握っていた縄を捨て、渾身の力で兵士を殴り倒した。
『来いよ、キタねぇファック野郎ども!』
続けて、別の兵士を蹴りつける。
同時だろうか。
兵士の1人が咄嗟に近寄り、剣で縄を切ってくれる。
「逃げなさい!」[女性20代]
日本語だった。女の声。誰だ。
(――いや時間がない)
兵士たちの注意がマックスに。
『――マックス!』
だが彼は、すでに囲まれている。
心臓が警鐘のように鳴りだす。
猛烈に走り、逃げだしていた――
◇
「ハァ……ハァ……」
道幅が狭い森林の中で、息を整える。
追っ手は見当たらない。馬はここでは速度を出せないだろう。
(……なんだこの世界は。それにさっきの日本語の女は?)
周囲の木の幹は異様に太く、背が低い。地球では見たことがない種だ。
次第に森を抜ける。
細長い、おとぎ話に出るような中世式の畑が。
ふと――
「……村か」
いくらか歩いた先に、半壊した村が。
ほとんどの家は、ただの掘っ立て小屋だ。ちいさくて汚い、麦わらとボロ木材の小屋。
中世初期のヨーロッパのように見える。
(……荒れ放題でひとけがない)
見ると、手足を切断された亡骸が、木に吊るされている。
この世界は、恐怖で民衆を支配しているのか。
「……皮の靴だ」
村の中心に、先程の兵たちにより略奪されたのか、戦利品が集められている。
衣類もある。チュニック、中世の膝まである服だ。
すぐに着替える、が……
「……着た瞬間、痒いな」
生地の織りが太く粗い。だが、全裸よりはマシだ。
他に何かないか探していると――
「――っ!!」
ケモミミの女の子が、民家の柱に、鎖で結ばれていた。
茶色のミディアムヘアと、髪と同じブラウンの垂れた犬耳。そしてボロ布一枚の服。
彼女も戦利品の一つのように見えた。
(……まて、ケモミミ?)[早苗]
ありえない。
まさか、この世界は……
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未開の領域[ナレ]
◇
最初に、白人の幼女が刺される。
『い゛や゛あ゛あ゛ッ!! マ゛マ゛!!』[幼女]
司祭が裸体の肋骨を広げ、心臓を抜いて、天に掲げた。
小さな遺体が祭壇から捨てられる。
すぐに兵士たちが歓声をあげた。
「……え?」[早苗]
目の前には10人。
縄で繋がれた全裸の白人、黒人、アジア人たちが一列に。
「……あれ、僕は」
トラックに轢かれて死んだはず。
ここはどこだ?
意識がハッキリして、周囲の光景が鮮明になる。
(……辺りは草原)[早苗]
周囲を中世風の身なりの兵士たちが囲っていた。
その背後には騎兵たち。
なんて思っている間にも、次の黒人が命乞いをした。
『糞ファッキン野郎!やめろ!ファァァック!!』[黒人男40代]
みぞおちに、ナイフが突き刺さる。
心臓を抜かれた男は悲鳴をあげ、痙攣したあと、絶命した。
ああ、何が起こっている。
まずは状況整理だ。
(……僕は学者。目が覚めると、この儀式の現場にいる)[早苗]
生贄だろうか。全裸で、なおかつ手を縄で縛られている。
逃げ隠れる場所は――背後に森林がある。
距離はおよそ600メートル。僕は走るのが遅いから時速10キロ――3分36秒か。
(……ダメだ。騎兵に追いつかれる)[早苗]
そもそも、まず縄を解かないと。
見ると、次はアジア系の女性が処刑台に。
『誰か!! 死にたくない!!!』[女性20代]
彼女も心臓を引き抜かれ、目の前の生贄はあと7人に。
理由は分からない……
だが、様々な人種の人たちが、ここで処刑されている。
『痛てぇよ! 助けてくれ!!』[男性50代]
あと6人。インド系の男が絶命した。
(そもそも、これは何の儀式だ。あの司祭は?)
兵士たちの言葉に耳を傾ける――
『ああ、神よ。この生贄で街を呪いから救いたまえ』[男30代]
兵士たちは、英語を話していた。
ただし16世紀あたり、ルネサンス時代の英語。
(……呪い。病気のことか)
でもこの生贄で病を治す儀式は、古典時代の物のハズ。
時代がバラバラだ。
映画の撮影? ではない。改変された過去に戻った?
ふと、目の前の大柄な白人男性に、小声で聞かれる。
『あんた、英語は?』[大柄男性(以降、青年)]
『話せる』と答える。
『よし。このままじゃダメだ。なにか行動を起こさないと』[青年]
(……現代のアメリカ英語だ)[早苗]
マイアミ州のスラング。フロリダなまりもある。同じ現代人であろう。
『オレの縄を解いてくれ。その後、オレもオマエを解く』
『わかった』
ちょうどいい。他人の縄を解く方が簡単だ。
静かに結び目を凝視する。
(この結び目。縄を折り返して輪に。つまり……)
周囲を見るが、兵士たちの視線は祭壇に集まっている。
背を向けて、男の縄を押し込む。
すぐに縄は緩くなった。
『……はやっ! ナイスだ、すごいな! 次はオマエの縄を……』[青年]
だが、その時間はない。
鎧を着た兵士が寄ってくる。
残りはあと1人。次はこの目の前の白人が、殺される番のようだ。
『オレはマックス。恩を返す。オマエは逃げろ』[青年(以降、マックス)]
『……何をする気だ?』
マックスが祭壇に連れていかれる。
だが隙を見て彼は、握っていた縄を捨て、渾身の力で兵士を殴り倒した。
『来いよ、キタねぇファック野郎ども!』
続けて、別の兵士を蹴りつける。
同時だろうか。
兵士の1人が咄嗟に近寄り、剣で縄を切ってくれる。
「逃げなさい!」[女性20代]
日本語だった。女の声。誰だ。
(――いや時間がない)
兵士たちの注意がマックスに。
『――マックス!』
だが彼は、すでに囲まれている。
心臓が警鐘のように鳴りだす。
猛烈に走り、逃げだしていた――
◇
「ハァ……ハァ……」
道幅が狭い森林の中で、息を整える。
追っ手は見当たらない。馬はここでは速度を出せないだろう。
(……なんだこの世界は。それにさっきの日本語の女は?)
周囲の木の幹は異様に太く、背が低い。地球では見たことがない種だ。
次第に森を抜ける。
細長い、おとぎ話に出るような中世式の畑が。
ふと――
「……村か」
いくらか歩いた先に、半壊した村が。
ほとんどの家は、ただの掘っ立て小屋だ。ちいさくて汚い、麦わらとボロ木材の小屋。
中世初期のヨーロッパのように見える。
(……荒れ放題でひとけがない)
見ると、手足を切断された亡骸が、木に吊るされている。
この世界は、恐怖で民衆を支配しているのか。
「……皮の靴だ」
村の中心に、先程の兵たちにより略奪されたのか、戦利品が集められている。
衣類もある。チュニック、中世の膝まである服だ。
すぐに着替える、が……
「……着た瞬間、痒いな」
生地の織りが太く粗い。だが、全裸よりはマシだ。
他に何かないか探していると――
「――っ!!」
ケモミミの女の子が、民家の柱に、鎖で結ばれていた。
茶色のミディアムヘアと、髪と同じブラウンの垂れた犬耳。そしてボロ布一枚の服。
彼女も戦利品の一つのように見えた。
(……まて、ケモミミ?)[早苗]
ありえない。
まさか、この世界は……
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