5 / 5
先生の方が……?
しおりを挟む「環、俺に全部くれると言ったろ?」
「そ、そうはいっても。む、む、むり」
仕事終わりに拉致された。語弊はない。拉致された。腕を引かれて車の中に押し込められた時、「ああ先生と付き合えてハッピー! なんていい日! っていう日に死ぬんだ」と本気で思った。だって先生が誘拐犯だなんて思いもしないでしょう?
と、私は車の中で先生に不満をさんざんぶちまけた後、立派なホテルのスイートな一室に閉じ込められた。語弊はない。ドアを背にした先生は本当に監禁犯のようだ。
しかし、私は案外単純なのか、美味しいルームサービス(国産牛肉100パーセントハンバーグめっちゃ美味しかった)を堪能し、今現在ソファにごろりとしていた。
「あー、美味しかったー」
「よし、じゃー、はじめっか」
ぱん、と膝を叩いた先生は何のためらいもなくこう言った。
「脱いで」
全部みたいから。と言われた時に私は爆発した。語弊はない。主に赤面という意味で。
「いやです!」
「俺も脱ぐから」
「そういう問題じゃなくて」
「この間、やられっぱなしだったから。今度は俺が可愛がる」
ばさばさとシャツを脱ぎ捨てる先生。いきなり現れる裸体に私は目をそらせなかった。メガネを放り投げ、ぐしゃ、と髪を乱している。昼間あった無精髭がいつの間にか無くなっていて、精悍な顔つきの先生がいた。
「お前の好きなかっこいい俺が言ってるんだ。脱げよ」
バリトンボイスで命令される。私の本能が逆らうなと叫んだ。声に犯されているのか、私の陰部からたらりと蜜が流れ出る。
「あ、せん、せ」
あの日の夜のように、先生の硬くて太い陰茎で思いっきりかき回してほしい。そんなことを想像すると、蜜がとめどなく溢れてきた。
「期待したろ?」
「……っ」
こくり、と私は頷く。すると先生はもう一度脱げ、と私に命令した。恥ずかしさはもう消えた。先生の声が医者の私をオフにするスイッチになった。私はワンピースのファスナーを下ろす。しゅるしゅると衣擦れの音ともに、医者である叶環も脱ぎ捨てる。タートルネックのカットソーの裾に手をかけ、勢いよく脱ぎ捨てる。そして、先生が残した蝕みを見せつけた。
「……環の肌は白いから。赤が残りやすいんだな」
いつの間にかベッドに腰掛けた先生は、私のストリップ劇場をじっと見ていた。口角が上がっているので、楽しんでいるようだ。
首筋に夥しいほどの赤いキスマーク。よほど強く吸われたのか、全く消える気配が無かった。
「これが消える前に何とかするつもりだったが……」
きし、とベッドが軋む音。一歩、また一歩と先生が私に近づいてくる。
質のいいナイロン製の絨毯が近寄る先生の足音を吸収していた。今聞こえる音は、自分の心臓の音だけだ。
「たまき」
「は、い」
「好きだ」
「……は、い」
「返事は?」
「わたし、もすき」
ぷつん、と独特の拘束感から解き放たれる。シラフで口にした『好き』によって私の涙腺が決壊した。好きでいてもいいこと、先生も同じ気持ちであること。涙を流す理由としては十分だった。
しかし、解き放たれたのは私の気持ちだけではなかった。ひんやりするな、と思って下を見るとあったはずのブラジャーが消えていた。何かが弾けたとは思っていたが、それは自分の気持ちでは無かった。つまり、ブラジャーのホックを外されぽろりの状態だ。
「ひ、ひゃぁあぁ!」
「おお、やっぱり。思ったよりでかい」
弾けたのは私のブラジャーのホックだった。気がつくと先生の大きな手がやわやわと私の胸を揉んでいた。
「ちょ、まっ、」
「ん? もう待たない」
揉まれたことが刺激となり立ち上がった乳首を先生の指が弾いた。しゃっくりをしたかのように喉が引き攣る。こりこりと甘くしごかれ、甘ったるい声が室内に響いた。
「大きいと感度悪いとか嘘だよな」
「ん、んっ……くっん」
環は乳首責められるのが好きだよなぁ、と勝手を知ったように先生が語る。違うと否定したくても、強い刺激に何も言えなくなってしまった。
「あっ、ぅ……ん」
「環の味を知りたい」
この間私が言ったことをそっくりそのまま返された。ばか、と小さく先生の胸を叩く。にや、と片方の口角だけ上げた先生と目が合うと勢いよく腰を引かれた。一瞬の浮遊感の後に、柔らかいベッドに体を押し付けられた。
そしてすぐに、ぷっくり立ち上がった乳首を舐められた。
「っ、あぁん!」
「いいか?」
乳首を舐められながら話すせいか。私は子犬のように泣き続けるしかなかった。私の肌を味わうように、先生は乳首以外にも舌を這わす。熱くて、でも通り過ぎて行ったあとはひんやりして。与えられる様々な感覚に、私の脳はパニックを起こしそうになっていた。
「ん、っァ、あぁん……」
すごく気持ちいい。だらしなく開かれた口から何度もその言葉が飛びだす。酒など飲まなくても、私はやっぱり先生から与えられる快楽に弱かった。
「今日はじっくり……な?」
ちゅぽ、とわざと音を立てて、先生は私の乳首から口を離した。柔らかい髪をかきあげて、そんな風に言われたらもう私は……。
「おねがいします……きもちいいの、好き」
こう言うしか無かった。
□□
「ん、っ……あぁ、そこ、ばっかり」
私は今絶賛喘ぎ中。私の味を知りたいと言った先生の言葉に嘘はなかった。散々私の乳首をいじめ抜いた後、今度は濡れそぼった陰部に狙いを定めた。
「だって環のクリトリス、気持ちよさそうだから」
ぐに、とはち切れんばかりに膨らんだクリトリスを舌で押しつぶされる。もう何度目か分からない絶頂が私を襲う。先生の柔らかな髪を握りしめて、快感の波に飲まれた。
真っ白な世界から戻ってくるためには、おとぎ話のようなキスが必要なのかもしれない。先生の厚ぼったい唇が私のものに重なると、私はすぐに戻ってこれた。
「なあ、俺もそろそろ限界なんだ」
「……え、え?」
「あの日みたいに強請れよ」
耳元を舐られるながらそう囁かれた。あの日のおねだりは酔っていたから出来たんです、と首を振って抵抗する。しかし、質量を増した先生の陰茎が私のクリトリスを刺激した瞬間。羞恥はもろく崩れ去った。
「……せんせいのかたちにして……」
叶環は、はやくいれてとおねだりしちゃういやらしい人間だ。
でも、それは、先生の前だけ。
「上等」
私は足を広げて、次にくる快感を待った。
□□
「先生、町田さんがお話したいと」
「ん。すぐいく」
「先生、この薬はこの量であってます?」
「計算式教えたろ? ステロイドカバーも抜けてる」
職場では指導医の関係。
家に帰れば、恋人。
それってずぅっといっしょにいられてすごく幸せなことだよね。でも最近私は思うことがあるの。
「環! 診察を始めるぞ!」
「ここでは叶です」
公私をわけられていないのは先生のほうかもって。私が真夏でもタートルネックを着なくちゃいけないってことはそういうことでしょ?
1
お気に入りに追加
556
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
ハイスぺ副社長になった初恋相手と再会したら、一途な愛を心と身体に刻み込まれました
中山紡希
恋愛
貿易会社の事務員として働く28歳の秋月結乃。
ある日、親友の奈々に高校のクラス会に行こうと誘われる。会社の上司からモラハラを受けている結乃は、その気晴らしに初めてクラス会に参加。賑やかな場所の苦手な結乃はその雰囲気に戸惑うが
そこに十年間片想いを続けている初恋相手の早瀬陽介が現れる。
陽介は国内屈指の大企業である早瀬商事の副社長になっていた。
高校時代、サッカー部の部員とマネージャーという関係だった二人は両片思いだったものの
様々な事情で気持ちが通じ合うことはなかった。
十年ぶりに陽介と言葉を交わし、今も変わらぬ陽介への恋心に気付いた結乃は……?
※甘いイチャイチャ溺愛系のR18シーンが複数個所にありますので、苦手な方はご注意ください。
※こちらはすでに全て書き終えていて、誤字脱字の修正をしながら毎日公開していきます。
少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです。
ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない
絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。
ついうっかり王子様を誉めたら、溺愛されまして
夕立悠理
恋愛
キャロルは八歳を迎えたばかりのおしゃべりな侯爵令嬢。父親からは何もしゃべるなと言われていたのに、はじめてのガーデンパーティで、ついうっかり男の子相手にしゃべってしまう。すると、その男の子は王子様で、なぜか、キャロルを婚約者にしたいと言い出して──。
おしゃべりな侯爵令嬢×心が読める第4王子
設定ゆるゆるのラブコメディです。
【R18】婚約破棄に失敗したら王子が夜這いにやってきました
ミチル
恋愛
婚約者である第一王子ルイスとの婚約破棄に晴れて失敗してしまったリリー。しばらく王宮で過ごすことになり夜眠っているリリーは、ふと違和感を覚えた。(なにかしら……何かふわふわしてて気持ちいい……) 次第に浮上する意識に、ベッドの中に誰かがいることに気づいて叫ぼうとしたけれど、口を塞がれてしまった。
リリーのベッドに忍び込んでいたのは婚約破棄しそこなったばかりのルイスだった。そしてルイスはとんでもないこと言い出す。『夜這いに来ただけさ』
R15で連載している『婚約破棄の条件は王子付きの騎士で側から離してもらえません』の【R18】番外になります。3~5話くらいで簡潔予定です。
色々と疲れた乙女は最強の騎士様の甘い攻撃に陥落しました
灰兎
恋愛
「ルイーズ、もう少し脚を開けますか?」優しく聞いてくれるマチアスは、多分、もう待ちきれないのを必死に我慢してくれている。
恋愛経験も無いままに婚約破棄まで経験して、色々と疲れているお年頃の女の子、ルイーズ。優秀で容姿端麗なのに恋愛初心者のルイーズ相手には四苦八苦、でもやっぱり最後には絶対無敵の最強だった騎士、マチアス。二人の両片思いは色んな意味でもう我慢出来なくなった騎士様によってぶち壊されました。めでたしめでたし。
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
【完結】一夜の関係を結んだ相手の正体はスパダリヤクザでした~甘い執着で離してくれません!~
中山紡希
恋愛
ある出来事をキッカケに出会った容姿端麗な男の魅力に抗えず、一夜の関係を結んだ萌音。
翌朝目を覚ますと「俺の嫁になれ」と言い寄られる。
けれど、その上半身には昨晩は気付かなかった刺青が彫られていて……。
「久我組の若頭だ」
一夜の関係を結んだ相手は……ヤクザでした。
※R18
※性的描写ありますのでご注意ください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
こんばんは、
好きならこれぐらい、ありかな!!
と思う内容でした。
良かったです。
この前の話も何回か読み返してます。
いいですよね。ハッピーエンド
感想ありがとうございました!
何度も読み直していると嬉しいお言葉に感謝いたします!返信が遅くなりまして大変失礼しました。また他のもお読みいただけたら幸いです!