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私は私の未来を
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指先から血が流れ落ちて、剣が落ちる。その隙をエルネストは見逃さなかった。手を抑えているスバイツの首に剣ではなく足を振り下ろした。
例えようのない鈍い音の後に、体が地面に沈む音がした。
リシャーナは一瞬のうちに起きた出来事を瞬きもせずに見つめる。ぴくりとも動かなくなったスバイツをエルネストが素早く縛り上げる。
そばに駆け寄りたいが、体がいうことを聞いてくれない。
「える、ねす……」
名前を呼ぼうとするが、肺が広がる度に苦しくて、痛い。まともな声も出せずにいると、エルネストがこちらを振り返る。
――あぁ、どうして。
泣きそうな顔を。顔を歪めて今にも泣き出しそうなエルネストが視界に飛び込んできた。そこからはもう音のない世界だった。彼が自分に向かって駆け寄ってくる。もう立つことすらできないリシャーナは手を伸ばすしかできない。
大きな手が、悲壮な顔が、誰よりも深い所で繋がった体が近づいてくる。
エルネスト、と紡いだ唇は音をなさない。あぁ、やっとここに帰れるのだと安堵に包まれた。
「リシャーナ!」
叫びに近い声で名前を呼ばれる。その瞬間、リシャーナはずっと帰りたかった場所に戻った。もう二度と離さないとばかりに、エルネストの服を握りしめる。
「え、る」
「話さなくていい。大丈夫だ。もう、大丈夫だから」
嬉しさと安堵でまた涙がこぼれる。帰ってきた、助かった。様々な感情が痛む体を駆け巡る。
けれども、リシャーナの心を一番震わせたのはエルネストが生きていること。
「える、エルネスト様」
「リシャーナ」
あたたかな体に顔を擦り付ける。これでもう終わったのだと信じたかった。
「何が、大丈夫だ!」
二人の背後から、狂気じみた叫びが聞こえた。リシャーナが振り返ると、美しい顔を歪ませたスバイツが興奮した様子でこちらを睨んでいる。一瞬気を失っていたが、すぐに目を覚ましたのだろう。縛られているため、体を捩らせながら地面に転がっている。
「俺が捕まろうとも、何も変わらない! 国同士のつながりはどうする? リシャーナの地位はもうおしまいだろう! 救いはない!」
正論がリシャーナの心に深く刺さる。これからの未来を考えると笑われて暮らすことが容易に想像できた。しかし、リシャーナはもう何も怖くない。
「っ、おまえ……!」
隣で凄まじい怒りを露わにするエルネストの頬に手を添える。
「っ、り、」
「大丈夫よ」
土で汚れた頬にそっと唇を落とす。驚いたように目を見開くエルネストの肩を借りてゆっくり立ち上がる。そして、ニヤニヤとリシャーナを見つめるスバイツの元へゆっくりと歩みを進める。
「リシャーナ、俺のところに来い。生きていることなど苦しくて辛いことだ。俺のところにいれば、そんなことは微塵も感じさせない」
「よく動くお口ですこと」
床に這いつくばっているスバイツに向かってリシャーナはピシャリと言い放った。
――負けない。
もう何も奪われないために、泣いてうずくまるのはもう終わりにしなければならない。
「貴族として生きて行けないかもしれない。でも、私はもう誰かに何も奪われたくない。だから、私は喜んで表舞台に立ちましょう」
何かあったと囁かれても構わない。私たちは笑われるようなことをしていないのだから。前を向いてれいればいい。
自分の愛を信じてくれる人がいれば、何も怖くなかった。
例えようのない鈍い音の後に、体が地面に沈む音がした。
リシャーナは一瞬のうちに起きた出来事を瞬きもせずに見つめる。ぴくりとも動かなくなったスバイツをエルネストが素早く縛り上げる。
そばに駆け寄りたいが、体がいうことを聞いてくれない。
「える、ねす……」
名前を呼ぼうとするが、肺が広がる度に苦しくて、痛い。まともな声も出せずにいると、エルネストがこちらを振り返る。
――あぁ、どうして。
泣きそうな顔を。顔を歪めて今にも泣き出しそうなエルネストが視界に飛び込んできた。そこからはもう音のない世界だった。彼が自分に向かって駆け寄ってくる。もう立つことすらできないリシャーナは手を伸ばすしかできない。
大きな手が、悲壮な顔が、誰よりも深い所で繋がった体が近づいてくる。
エルネスト、と紡いだ唇は音をなさない。あぁ、やっとここに帰れるのだと安堵に包まれた。
「リシャーナ!」
叫びに近い声で名前を呼ばれる。その瞬間、リシャーナはずっと帰りたかった場所に戻った。もう二度と離さないとばかりに、エルネストの服を握りしめる。
「え、る」
「話さなくていい。大丈夫だ。もう、大丈夫だから」
嬉しさと安堵でまた涙がこぼれる。帰ってきた、助かった。様々な感情が痛む体を駆け巡る。
けれども、リシャーナの心を一番震わせたのはエルネストが生きていること。
「える、エルネスト様」
「リシャーナ」
あたたかな体に顔を擦り付ける。これでもう終わったのだと信じたかった。
「何が、大丈夫だ!」
二人の背後から、狂気じみた叫びが聞こえた。リシャーナが振り返ると、美しい顔を歪ませたスバイツが興奮した様子でこちらを睨んでいる。一瞬気を失っていたが、すぐに目を覚ましたのだろう。縛られているため、体を捩らせながら地面に転がっている。
「俺が捕まろうとも、何も変わらない! 国同士のつながりはどうする? リシャーナの地位はもうおしまいだろう! 救いはない!」
正論がリシャーナの心に深く刺さる。これからの未来を考えると笑われて暮らすことが容易に想像できた。しかし、リシャーナはもう何も怖くない。
「っ、おまえ……!」
隣で凄まじい怒りを露わにするエルネストの頬に手を添える。
「っ、り、」
「大丈夫よ」
土で汚れた頬にそっと唇を落とす。驚いたように目を見開くエルネストの肩を借りてゆっくり立ち上がる。そして、ニヤニヤとリシャーナを見つめるスバイツの元へゆっくりと歩みを進める。
「リシャーナ、俺のところに来い。生きていることなど苦しくて辛いことだ。俺のところにいれば、そんなことは微塵も感じさせない」
「よく動くお口ですこと」
床に這いつくばっているスバイツに向かってリシャーナはピシャリと言い放った。
――負けない。
もう何も奪われないために、泣いてうずくまるのはもう終わりにしなければならない。
「貴族として生きて行けないかもしれない。でも、私はもう誰かに何も奪われたくない。だから、私は喜んで表舞台に立ちましょう」
何かあったと囁かれても構わない。私たちは笑われるようなことをしていないのだから。前を向いてれいればいい。
自分の愛を信じてくれる人がいれば、何も怖くなかった。
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