297 / 437
外伝 ヴァティールの独り言
外伝 ヴァティールの独り言9
しおりを挟む
可愛さ半分、憎さ半分。
赤子を育てるようになって数日がたった。
そしてある時……赤子はワタシを見て、とても嬉しそうに笑ったのである。
今まで感じたこともない、不思議な感覚だった。
世界の空気が一気に変わった気がした。
以後赤ん坊は、私を『親』だと信じ込んですくすくと育っていった。
初めてしゃべった言葉は「ぱーてぃ」だったし、いつもワタシにくっついてまわる。
チョコチョコと歩くさまは、本当に愛らしい。まさに至宝だ。
親バカは承知の上だが、娘は性格もとても愛らしい。
なにしろ、このワタシの愛をすべて注ぎ込んで育てたのだ。
ワタシはこの子が可愛くてたまらず、胸に渦巻いていた憎しみの炎すら消えそうになっていた。
それでもふと思う。
この子は『空』を知らない。
『花』も『海』も『鳥』も『森』も。
この世にはいくらでも美しいものがあるというのに、何も知らない。
いつかは娘を連れて、この忌まわしい場所から逃げよう。
ワタシを無心に慕ってくるこの娘に、この世の美しいものをすべて見せてやろう。
そう思いながら、日々を過ごしていた。
娘アッシャが15歳のときだった。
ワタシはある計画を企てていた。
アースラは隙が無い。
それでもワタシの血を娘に与え続ければ、おそらくアッシャの体は変わっていく。アースラの妹、リリーシャがそうだったように。
アッシャの潜在能力は、今でもアースラを超える。
ワタシが密かに指導すれば、アースラの檻さえ破ることが出来るだろう。
しかし、その計画はあっけなくアースラにばれた。
ワタシ達は引き離され、以後娘の顔を見ることは一切叶わなかった。
赤子を育てるようになって数日がたった。
そしてある時……赤子はワタシを見て、とても嬉しそうに笑ったのである。
今まで感じたこともない、不思議な感覚だった。
世界の空気が一気に変わった気がした。
以後赤ん坊は、私を『親』だと信じ込んですくすくと育っていった。
初めてしゃべった言葉は「ぱーてぃ」だったし、いつもワタシにくっついてまわる。
チョコチョコと歩くさまは、本当に愛らしい。まさに至宝だ。
親バカは承知の上だが、娘は性格もとても愛らしい。
なにしろ、このワタシの愛をすべて注ぎ込んで育てたのだ。
ワタシはこの子が可愛くてたまらず、胸に渦巻いていた憎しみの炎すら消えそうになっていた。
それでもふと思う。
この子は『空』を知らない。
『花』も『海』も『鳥』も『森』も。
この世にはいくらでも美しいものがあるというのに、何も知らない。
いつかは娘を連れて、この忌まわしい場所から逃げよう。
ワタシを無心に慕ってくるこの娘に、この世の美しいものをすべて見せてやろう。
そう思いながら、日々を過ごしていた。
娘アッシャが15歳のときだった。
ワタシはある計画を企てていた。
アースラは隙が無い。
それでもワタシの血を娘に与え続ければ、おそらくアッシャの体は変わっていく。アースラの妹、リリーシャがそうだったように。
アッシャの潜在能力は、今でもアースラを超える。
ワタシが密かに指導すれば、アースラの檻さえ破ることが出来るだろう。
しかし、その計画はあっけなくアースラにばれた。
ワタシ達は引き離され、以後娘の顔を見ることは一切叶わなかった。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
不憫な推しキャラを救おうとしただけなのに【魔法学園編 突入☆】
はぴねこ
BL
魔法学園編突入! 学園モノは読みたいけど、そこに辿り着くまでの長い話を読むのは大変という方は、魔法学園編の000話をお読みください。これまでのあらすじをまとめてあります。
美幼児&美幼児(ブロマンス期)からの美青年×美青年(BL期)への成長を辿る長編BLです。
金髪碧眼美幼児のリヒトの前世は、隠れゲイでBL好きのおじさんだった。
享年52歳までプレイしていた乙女ゲーム『星鏡のレイラ』の攻略対象であるリヒトに転生したため、彼は推しだった不憫な攻略対象:カルロを不運な運命から救い、幸せにすることに全振りする。
見た目は美しい王子のリヒトだが、中身は52歳で、両親も乳母も護衛騎士もみんな年下。
気軽に話せるのは年上の帝国の皇帝や魔塔主だけ。
幼い推しへの高まる父性でカルロを溺愛しつつ、頑張る若者たち(両親etc)を温かく見守りながら、リヒトはヒロインとカルロが結ばれるように奮闘する!
リヒト… エトワール王国の第一王子。カルロへの父性が暴走気味。
カルロ… リヒトの従者。リヒトは神様で唯一の居場所。リヒトへの想いが暴走気味。
魔塔主… 一人で国を滅ぼせるほどの魔法が使える自由人。ある意味厄災。リヒトを研究対象としている。
オーロ皇帝… 大帝国の皇帝。エトワールの悍ましい慣習を嫌っていたが、リヒトの利発さに興味を持つ。
ナタリア… 乙女ゲーム『星鏡のレイラ』のヒロイン。オーロ皇帝の孫娘。カルロとは恋のライバル。
バッドエンドの異世界に悪役転生した僕は、全力でハッピーエンドを目指します!
あ
BL
16才の初川終(はつかわ しゅう)は先天性の心臓の病気だった。一縷の望みで、成功率が低い手術に挑む終だったが……。
僕は気付くと両親の泣いている風景を空から眺めていた。それから、遠くで光り輝くなにかにすごい力で引き寄せられて。
目覚めれば、そこは子どもの頃に毎日読んでいた大好きなファンタジー小説の世界だったんだ。でも、僕は呪いの悪役の10才の公爵三男エディに転生しちゃったみたい!
しかも、この世界ってバッドエンドじゃなかったっけ?
バッドエンドをハッピーエンドにする為に、僕は頑張る!
でも、本の世界と少しずつ変わってきた異世界は……ひみつが多くて?
嫌われ悪役の子どもが、愛されに変わる物語。ほのぼの日常が多いです。
◎体格差、年の差カップル
※てんぱる様の表紙をお借りしました。
生まれ変わりは嫌われ者
青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。
「ケイラ…っ!!」
王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。
「グレン……。愛してる。」
「あぁ。俺も愛してるケイラ。」
壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。
━━━━━━━━━━━━━━━
あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。
なのにー、
運命というのは時に残酷なものだ。
俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。
一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。
★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!
運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました
十夜 篁
BL
初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。
そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。
「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!?
しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」
ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意!
「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」
まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…?
「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」
「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」
健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!?
そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…。
《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》
ハズレスキル《創造》と《操作》を持つ俺はくそみたいな理由で殺されかけたので復讐します〜元家族と金髪三人衆よ!フルボッコにしてやる!~
ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ハルドン伯爵家の三男として生まれた俺、カインは千万人に一人と言われている二つのスキルを持って生まれてきた。だが、その二つのスキルは〈創造〉と〈操作〉というハズレスキルだった。
そんな俺は、ある日、俺を蔑み、いじめていたやつらの策略によって洞窟の奥底に落とされてしまう。
「何で俺がこんな目に……」
毎日努力し続けてきたのに、俺は殺されそうになった。そんな俺は、復讐を決意した。
だが、その矢先……
「ど、ドラゴン……」
俺の命は早々に消えそうなのであった。
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。
幼馴染たちに虐げられた俺、「聖女任命」スキルに目覚めて手のひら返し!
さとう
ファンタジー
この世界は、聖女たちによって回っている。男は労働力、女は重要職、そして聖女は神のごとき存在だ。つまり、男は女の下……そういう認識だ。
そして、聖女は聖女から生まれる。神の奇跡によって聖女の体内に命が宿り、生まれてくる。
俺の名はセイヤ。聖女から生まれた『異端』とも呼ばれる『男』だ。
なぜか聖女から生まれた俺は、聖女の村で酷い扱いを受けて育った。粗末な小屋に住み碌な食事も貰えず、外出すれば同世代の幼馴染『聖女』たちに酷いいじめを受ける毎日。
なぜ、俺は聖女から生まれた『男』なのか。その理由は聖女たちも知らない……ただ、異端だの呪いだの言われ続ける毎日だった。。
俺には夢があった。
俺は、男しかいない職業である『炭鉱夫』になる。聖女のいない『炭鉱夫』……男だけの楽園を俺は目指して進むんだ!!
でも、俺は知らなかった。
俺という存在が、聖女たちを生み出した神による奇跡だったなんて。後に、世界中の聖女が俺を狙ってくるなんて。
今さらふざけんな! 俺は炭鉱夫になるって決めたんだ!
これは、聖女たちに狙われる、聖女嫌いの俺の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる