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リオン編 転機
リオン編 転機7
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兄様の『親衛隊候補生』としての生活が始まった。
そうすると、兄様に養われているだけの僕は、ずっと部屋で待っていなければならない。
しょんぼりしていたら、兄様は僕も一緒に訓練室に連れて行って下さった。
そこは僕とクロスⅦとでピカピカに磨き上げていたあの地下神殿とは違い、正直に言うと薄汚い。
ミランダおばさんの宿は、古くても綺麗に掃除してあったのに。
よく見ると、師が大嫌いだったあの黒くて平べったい虫が部屋の何カ所かをカサコソと這っている。
お菓子のクズなんかも落ちていて、それを餌としているようだ。
神殿にあの虫が一匹でも出たら、師は普段の冷静さをかなぐり捨てて大騒ぎするのだが、ここの人たちは不思議なことに平気なようだった。
目の前を横切っても無視している。
う~ん。
ということは、こいつら……中々強いのかもしれない。
あの虫と共存共栄出来るぐらいなのだから、きっとかなりの剛の者なのだろう。
まさか師より強いということはないだろうが、いつ敵になるともわからない奴らだ。気をつけるにこしたことはない。
ちなみに兄様だけは虫を見て一瞬嫌な顔をなさったが、師のように大騒ぎすることはなかった。
さすが兄様。どんな時も落ち着いていらっしゃる。
兄様に危害を加えるようならあの虫も即抹殺しようと思っていたが、とりあえず隅っこのあたりでおとなしくしているようだ。
なら、僕もあまり騒ぐべきではないのかもしれない。
なにしろ僕は『外の世界でのお作法』をあまり知らない。
出過ぎたことをして兄様のご不興を買っては大変だ。
命の危機があるわけではないので、静観することにした。
親衛隊候補生は、兄様の他に二人居た。
金髪碧眼でガラが悪そうなのがブラディ。この人は17歳で最年長らしい。
黒髪長髪で頭が悪そうなのがアッサム。この人は15歳だという。
二人とも美しい顔立ちと言えないことはないが、僕の兄様の美しさと比べると月とすっぽん。薔薇と雑草。全く格が違う。
格の違いは腕前にも出ていた。
しんいりかんげいかい……とかいう候補生同士の模擬戦を見て、僕はため息をついた。
弱いっ。弱すぎるっっ!!!
強者かと思ったのに、こいつらは顔だけだった!!!!
その顔も兄様と比べれば相当にお粗末。救いようがない。
尊き兄様は、あふれる才能におごることなく幼い頃から修練していらしたので、相当に腕がたつ。
相手がこの程度なら、2人まとめてでも左手一本で楽に勝てるだろう。
でも何故か『てかげん』して、ゆっくり戦っているようだった。
これは、最近『てかげん』を勉強している僕への心遣いなのだろうか?
やっぱり兄様は優しいなあ。そう思ってニンマリする。
弱すぎる相手のふがいない戦い方を見るのはイライラするし、時々チョロチョロしている黒くて平べったいアレも気になる。
けれど、兄様単体を見ているのは楽しい。
ああ、兄様はカッコ良い!!
兄様一人居るだけで、このゴミ溜めのような場所ですら輝き出したような気がする。
兄様が親衛隊に入ったら、一緒に居られる時間が減ってしまう……そう思ってずっとしょんぼりしていたけど、兄様のカッコよく戦う姿を見ているうちに段々と気分が浮き立ってきた。
コレはコレで良いかもしれない。
掃除がてら、毎日通うことにしよう。
その僕の袖を、同じく見学に来ていた暇なアリシアが引っ張った。
……?
嫌だけど、振り向いた。
何か兄様関連の用事かもしれないからだ。
「せっかくだから、応援ぐらいしてあげなさいよ。
たった一人の兄弟なんでしょ?」
……???
僕は首をかしげた。
おうえん?
それは何だろう?
もう大抵の言葉はわかるようになった僕だけど、こうして日に一単語ぐらいは知らない言葉が出てくる。
「ひょっとして……応援の仕方知らないの?」
頷くと、アリシアが楽しそうに『おうえん』の説明を始めた。
そうすると、兄様に養われているだけの僕は、ずっと部屋で待っていなければならない。
しょんぼりしていたら、兄様は僕も一緒に訓練室に連れて行って下さった。
そこは僕とクロスⅦとでピカピカに磨き上げていたあの地下神殿とは違い、正直に言うと薄汚い。
ミランダおばさんの宿は、古くても綺麗に掃除してあったのに。
よく見ると、師が大嫌いだったあの黒くて平べったい虫が部屋の何カ所かをカサコソと這っている。
お菓子のクズなんかも落ちていて、それを餌としているようだ。
神殿にあの虫が一匹でも出たら、師は普段の冷静さをかなぐり捨てて大騒ぎするのだが、ここの人たちは不思議なことに平気なようだった。
目の前を横切っても無視している。
う~ん。
ということは、こいつら……中々強いのかもしれない。
あの虫と共存共栄出来るぐらいなのだから、きっとかなりの剛の者なのだろう。
まさか師より強いということはないだろうが、いつ敵になるともわからない奴らだ。気をつけるにこしたことはない。
ちなみに兄様だけは虫を見て一瞬嫌な顔をなさったが、師のように大騒ぎすることはなかった。
さすが兄様。どんな時も落ち着いていらっしゃる。
兄様に危害を加えるようならあの虫も即抹殺しようと思っていたが、とりあえず隅っこのあたりでおとなしくしているようだ。
なら、僕もあまり騒ぐべきではないのかもしれない。
なにしろ僕は『外の世界でのお作法』をあまり知らない。
出過ぎたことをして兄様のご不興を買っては大変だ。
命の危機があるわけではないので、静観することにした。
親衛隊候補生は、兄様の他に二人居た。
金髪碧眼でガラが悪そうなのがブラディ。この人は17歳で最年長らしい。
黒髪長髪で頭が悪そうなのがアッサム。この人は15歳だという。
二人とも美しい顔立ちと言えないことはないが、僕の兄様の美しさと比べると月とすっぽん。薔薇と雑草。全く格が違う。
格の違いは腕前にも出ていた。
しんいりかんげいかい……とかいう候補生同士の模擬戦を見て、僕はため息をついた。
弱いっ。弱すぎるっっ!!!
強者かと思ったのに、こいつらは顔だけだった!!!!
その顔も兄様と比べれば相当にお粗末。救いようがない。
尊き兄様は、あふれる才能におごることなく幼い頃から修練していらしたので、相当に腕がたつ。
相手がこの程度なら、2人まとめてでも左手一本で楽に勝てるだろう。
でも何故か『てかげん』して、ゆっくり戦っているようだった。
これは、最近『てかげん』を勉強している僕への心遣いなのだろうか?
やっぱり兄様は優しいなあ。そう思ってニンマリする。
弱すぎる相手のふがいない戦い方を見るのはイライラするし、時々チョロチョロしている黒くて平べったいアレも気になる。
けれど、兄様単体を見ているのは楽しい。
ああ、兄様はカッコ良い!!
兄様一人居るだけで、このゴミ溜めのような場所ですら輝き出したような気がする。
兄様が親衛隊に入ったら、一緒に居られる時間が減ってしまう……そう思ってずっとしょんぼりしていたけど、兄様のカッコよく戦う姿を見ているうちに段々と気分が浮き立ってきた。
コレはコレで良いかもしれない。
掃除がてら、毎日通うことにしよう。
その僕の袖を、同じく見学に来ていた暇なアリシアが引っ張った。
……?
嫌だけど、振り向いた。
何か兄様関連の用事かもしれないからだ。
「せっかくだから、応援ぐらいしてあげなさいよ。
たった一人の兄弟なんでしょ?」
……???
僕は首をかしげた。
おうえん?
それは何だろう?
もう大抵の言葉はわかるようになった僕だけど、こうして日に一単語ぐらいは知らない言葉が出てくる。
「ひょっとして……応援の仕方知らないの?」
頷くと、アリシアが楽しそうに『おうえん』の説明を始めた。
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