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リオン編   シリウスという国

リオン編   シリウスという国12

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 僕たちはおばさんの葬儀を済ませたあと、宿の庭を掘って埋めた。

 アリシアは母親の死体をそのまま置いて行こうとしたけれど、あまりにおばさんが哀れで、僕が申し出たのだ。

 死者を弔うのは神官の役目。
 裏神官である僕は『表の世界』ではその任に着いたことがない。

 でも、儀式の執り行い方は知っている。
 だから兄様に頼みこんで、僕にその役目を果たさせてもらった。

 実の娘にも罵られ、哀れに命を落としたおばさんをどうしても天に送ってあげたかったのだ。

 無念の表情のまま開いていた血走った瞳を魔力で弛緩させ、閉じさせる。
 そうするとおばさんは――――ただ眠っているかのような、安らいだ表情となった。

 僕が大好きだった、優しいあの顔。
 クロスⅦほどの美しさがあったわけではなかったけれど、それでも笑うとますます深くなるそのシワさえ、僕は好きだった。

 おぼろげだったおばさんの声がよみがえってくる。

『よく頑張ってくれたね。おかげで宿がピカピカになったよ』 

『遠慮なんかしないで、いっぱいお食べ!』

 いつも僕にかけてくれた、あの優しい声も……笑顔も……もう二度と目にすることはない。

 血をふき取り、腕を祈りの形に組ませ、綺麗なシーツにくるみ、3人がかりで掘った穴にそっと横たえて土をかけた。

 埋まっていくおばさんを見て涙が落ちた。

 さようなら……僕に『母』の夢を見せて下さった人。
 どうぞ神の愛に包まれて、安らかにお眠りください。

 そして育ててもらい、助けてもらった恩も忘れてあなたを罵ったクズの始末は僕に任せてください。
 今は兄様が止めるから何も出来ないけれど、いつか思い知らせてみせます。

 祈りを捧げ、身支度を整えた僕たちは宿を出発した。
 辺りは闇。手にしたランプの炎だけがユラユラと揺れている。
 深夜であることも幸いして、他に人影はない。

 アリシアを連れてきた質素な黒い馬車は持ち主を失ってずっと門の前につながれていた。その綱を取って僕たちは馬車を走らせた。
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