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リオン編 シリウスという国
リオン編 シリウスという国9
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「ああ、申し遅れましたが私はアリシアと申します。
とりあえず手錠をはずして下さいませんこと?」
アリシアと名乗ったその人は優雅に手を持ち上げた。
兄様には劣るけど、とても綺麗な人だ。
綺麗だから僕たちみたいに奴隷商人に捕まっていたのかな?
容姿が良いほうが、高く売れるって話だったし……。
そんなことを考える。
一方兄様は、死んだ男のポケットから見つけ出した鍵で、素早く女の人の拘束を解いていた。
アリシアと名乗ったその人は赤くなった手首を少しさすっていたが、僕たちの方を向いて怪訝そうに言った。
「それで母さんはどこに出かけたのかしら?
やっと娘を買い戻せたのに、居ないって変よねえ?」
え……。
「母さんよ。ミランダ・シャーレット。この宿の女主人。あなた達、新人?
まあこの辺では知れ渡っているでしょうけど、母さんは行く当ての無い孤児を拾って働かせてあげたばっかりに、タカリ屋に搾り取られて私を借金のカタに取られたの。
だけど『やっとお金が貯まったから一刻も早く買い戻したい』って連絡があったんで、売られていった先のお屋敷から連れて来られたのよ。
さ、主人の娘に道を開けなさい」
女性の言葉は、僕の心を深くえぐった。
僕が母のように思っていたおばさんは、僕らを惨酷な方法で騙した。
兄様や僕が卑しき人間の奴隷として惨めな暮らしを送ると知っていて、お金と引き換えに売り渡したのだ。
悪魔のような人だと思った。
死んで当然な人だとも。
しかしそんなおばさんにも情はあった。
本当の娘に対してだけは。
彼女は自分の『本当の娘』を買い戻すために、僕らを騙して売ったのだ。
でも……どうしてこの女の人じゃないと駄目なのだろう?
兄様にはずっと一緒に暮らした、同じ母親から生まれた妹姫が居た。
僕は2年前に初めて兄様に会った。
それでも兄様は僕を可愛がり、親や妹を置いて僕と暮らすことを選んでくれた。
……どうして僕らがこの女の人の代わりに『子供』になるのではいけなかったのだろうか?
おばさんが僕らに自分の子供になるよう言ってくれた時、僕は喜んだ。
凄く凄く嬉しかった。
おばさんの子供となって兄さまと一緒に暮らしたかった。
ずっと幸せでいたかった。
喜んでほしくて、いっぱい褒められたくて……一生懸命仕事もした。
きっと僕らはこの女の人より、おばさんの役に立つ。
一生懸命働くし、おばさんに『オヤコウコウ』だっていっぱい出来る。
そう思っていたのに、おばさんは僕らを売った。
目の前に居る実娘……この女のせいで、優しかったおばさんは僕らを裏切ったのだ。
もしこの女がもう死んでいたなら、おばさんだって娘のことをすっかりあきらめて、僕らを『本当の子供』のように可愛がってくれたはずなのに。
僕達がどれほど苦しんだか、この女はきっと知らない。
知ろうともしない。
結局エドガーさんや、兄様の施しに喜んで手を出したあの婦人と一緒なのだ。
そして偉そうに僕らに命令する。
「主人の娘に道を開けなさい」
……と。
とりあえず手錠をはずして下さいませんこと?」
アリシアと名乗ったその人は優雅に手を持ち上げた。
兄様には劣るけど、とても綺麗な人だ。
綺麗だから僕たちみたいに奴隷商人に捕まっていたのかな?
容姿が良いほうが、高く売れるって話だったし……。
そんなことを考える。
一方兄様は、死んだ男のポケットから見つけ出した鍵で、素早く女の人の拘束を解いていた。
アリシアと名乗ったその人は赤くなった手首を少しさすっていたが、僕たちの方を向いて怪訝そうに言った。
「それで母さんはどこに出かけたのかしら?
やっと娘を買い戻せたのに、居ないって変よねえ?」
え……。
「母さんよ。ミランダ・シャーレット。この宿の女主人。あなた達、新人?
まあこの辺では知れ渡っているでしょうけど、母さんは行く当ての無い孤児を拾って働かせてあげたばっかりに、タカリ屋に搾り取られて私を借金のカタに取られたの。
だけど『やっとお金が貯まったから一刻も早く買い戻したい』って連絡があったんで、売られていった先のお屋敷から連れて来られたのよ。
さ、主人の娘に道を開けなさい」
女性の言葉は、僕の心を深くえぐった。
僕が母のように思っていたおばさんは、僕らを惨酷な方法で騙した。
兄様や僕が卑しき人間の奴隷として惨めな暮らしを送ると知っていて、お金と引き換えに売り渡したのだ。
悪魔のような人だと思った。
死んで当然な人だとも。
しかしそんなおばさんにも情はあった。
本当の娘に対してだけは。
彼女は自分の『本当の娘』を買い戻すために、僕らを騙して売ったのだ。
でも……どうしてこの女の人じゃないと駄目なのだろう?
兄様にはずっと一緒に暮らした、同じ母親から生まれた妹姫が居た。
僕は2年前に初めて兄様に会った。
それでも兄様は僕を可愛がり、親や妹を置いて僕と暮らすことを選んでくれた。
……どうして僕らがこの女の人の代わりに『子供』になるのではいけなかったのだろうか?
おばさんが僕らに自分の子供になるよう言ってくれた時、僕は喜んだ。
凄く凄く嬉しかった。
おばさんの子供となって兄さまと一緒に暮らしたかった。
ずっと幸せでいたかった。
喜んでほしくて、いっぱい褒められたくて……一生懸命仕事もした。
きっと僕らはこの女の人より、おばさんの役に立つ。
一生懸命働くし、おばさんに『オヤコウコウ』だっていっぱい出来る。
そう思っていたのに、おばさんは僕らを売った。
目の前に居る実娘……この女のせいで、優しかったおばさんは僕らを裏切ったのだ。
もしこの女がもう死んでいたなら、おばさんだって娘のことをすっかりあきらめて、僕らを『本当の子供』のように可愛がってくれたはずなのに。
僕達がどれほど苦しんだか、この女はきっと知らない。
知ろうともしない。
結局エドガーさんや、兄様の施しに喜んで手を出したあの婦人と一緒なのだ。
そして偉そうに僕らに命令する。
「主人の娘に道を開けなさい」
……と。
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