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リオン編   友達

リオン編   友達4

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 僕らクロス神官は『外』には出られない。
 身内と過ごす事も無く、ただ修行に明け暮れた。

 人々のために『善の結界』を張り続けてきた。

 修行で怪我をしてつらい日もあった。
 眠けと疲労でフラフラになった日もあった。

 それは僕だけでなく、クロスⅦや代々の術士も一緒だ。

 他国がわが国を侵略しようとするたび、クロス神官は王から祈りの強化を求められる。
 国内にゆるく張る程度でもキツイのに、敵兵たちの戦意を『砕く』ほどに結界レベルを上げるのは、まさしく『命を削るような作業』だった。

 それでも僕らは、王と共に人々を守ることを喜び、誇りに思っていた。

 エルシオン軍は約40万人から成っていたという。

 それなのに、僕らクロス神官がたった数人で300年間守り続けた国を、易々と陥落させてしまった。

 これを怠惰といわず何といえば良いのだ。
 兄様はただ僕の境遇を哀れんで……そして、親である王に殺されそうになりながらも僕を連れ出してくださっただけなのに。

 城にはまだ王がいて、大勢の臣も居た。
 僕らよりずっと長く生きていて、体の大きい軍人達も。

 彼らの怠惰により国が滅んだのだから、兄様が一方的にエドガーさんに批難され、殴られるなんて絶対におかしい。

 でもエドガーさんの言葉から、わかってしまった。
 『クロス神官』は師が言っていたような『全国民から感謝されるような存在』ではなかった事が。

 僕は地下神殿で暮らしていたあの頃だって、けっして不幸ではなかった。

 何の娯楽も無く、ただ毎日修行し、人々のために祈り続ける生活だったけど。
 『幸せ』という言葉すら知らなかったけど。
 それでも僕は満足していた。

 未来の王たる兄様と臣民のお役に立つために、つらい修行も喜んで受けた。
 いつかアースラ様やクロスⅦのような立派な神官魔道士となって兄様や国民に喜んでもらうことが出来れば、それで良かった。

 にもかかわらず、何故兄様が僕をあれほど哀れんだのか……。
 あの時の僕にはわからなかったけど、今ならわかる。

 多分兄様も知っていたに違いない。
 僕らクロス神官に感謝する国民なんか『一人もいない』ってことを。

 その事を兄様は、けっして言わなかったけれど。
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