205 / 437
リオン編 異変
リオン編 異変6
しおりを挟む
『化け物』
それは僕に対して言ったのだろうか?
どうして兄様?
いつだって僕のことを可愛がって下さっていたのに。
大切にして下さったのに。
どうして突然、そんな事を言うのか僕にはわからなかった。
こらえきれなくなった涙が溢れ、顎を伝ってポトポトと床に落ちる。
そうだ。
涙は元々、悲しい時に溢れるものなのだった。
兄様と暮らしていくうちに、すっかり忘れてしまっていたけれど。
「……酷いです……兄様……。
僕は兄様を守ろうとしただけなのに、兄様は僕を『化け物』と呼ぶのですね……」
叫びだしてしまいそうな気持ちを押さえつけ、僕は何とか声を絞り出した。
そして、兄様をじっと見つめた。
わかって欲しい
僕の『心から兄様を慕う気持ち』を。
どうか……どうか……お願い兄様。
「僕は、地下のあの部屋で兄様のために祈りを捧げる毎日でも良かった。
クロスⅦの言うとおり、兄様のために魔力を使い、心を捧げ、一生陽の当たらぬ地下で暮らしても良かった。
でも兄様が一緒に行こうとおっしゃって下さったから、僕は大好きな兄様の言うことをきいた。
……兄様だけを信じてここまで来たのに……」
必死で言葉を紡ぐ僕から逃げるように、兄様は後ずさってゆく。
どうして?
どうして?
どうして?
どうして兄様?
僕には本当にわからなかった。
どうしてあの優しかった兄様が、こんな態度をとるのか。
もう、僕が嫌いになってしまったのだろうか?
僕がどんなに馬鹿でも、いつも優しくして下さった兄様なのに。
クロスⅦを殺した僕を、城や家族を捨ててまで守ってくださった兄様なのに。
……いったいあの時と、何が違うのだというのだろう。
それは僕に対して言ったのだろうか?
どうして兄様?
いつだって僕のことを可愛がって下さっていたのに。
大切にして下さったのに。
どうして突然、そんな事を言うのか僕にはわからなかった。
こらえきれなくなった涙が溢れ、顎を伝ってポトポトと床に落ちる。
そうだ。
涙は元々、悲しい時に溢れるものなのだった。
兄様と暮らしていくうちに、すっかり忘れてしまっていたけれど。
「……酷いです……兄様……。
僕は兄様を守ろうとしただけなのに、兄様は僕を『化け物』と呼ぶのですね……」
叫びだしてしまいそうな気持ちを押さえつけ、僕は何とか声を絞り出した。
そして、兄様をじっと見つめた。
わかって欲しい
僕の『心から兄様を慕う気持ち』を。
どうか……どうか……お願い兄様。
「僕は、地下のあの部屋で兄様のために祈りを捧げる毎日でも良かった。
クロスⅦの言うとおり、兄様のために魔力を使い、心を捧げ、一生陽の当たらぬ地下で暮らしても良かった。
でも兄様が一緒に行こうとおっしゃって下さったから、僕は大好きな兄様の言うことをきいた。
……兄様だけを信じてここまで来たのに……」
必死で言葉を紡ぐ僕から逃げるように、兄様は後ずさってゆく。
どうして?
どうして?
どうして?
どうして兄様?
僕には本当にわからなかった。
どうしてあの優しかった兄様が、こんな態度をとるのか。
もう、僕が嫌いになってしまったのだろうか?
僕がどんなに馬鹿でも、いつも優しくして下さった兄様なのに。
クロスⅦを殺した僕を、城や家族を捨ててまで守ってくださった兄様なのに。
……いったいあの時と、何が違うのだというのだろう。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
子悪党令息の息子として生まれました
菟圃(うさぎはたけ)
BL
悪役に好かれていますがどうやって逃げられますか!?
ネヴィレントとラグザンドの間に生まれたホロとイディのお話。
「お父様とお母様本当に仲がいいね」
「良すぎて目の毒だ」
ーーーーーーーーーーー
「僕達の子ども達本当に可愛い!!」
「ゆっくりと見守って上げよう」
偶にネヴィレントとラグザンドも出てきます。
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる