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リオン編   異変

リオン編   異変6

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『化け物』

 それは僕に対して言ったのだろうか?

 どうして兄様?

 いつだって僕のことを可愛がって下さっていたのに。
 大切にして下さったのに。

 どうして突然、そんな事を言うのか僕にはわからなかった。
 こらえきれなくなった涙が溢れ、顎を伝ってポトポトと床に落ちる。

 そうだ。
 涙は元々、悲しい時に溢れるものなのだった。

 兄様と暮らしていくうちに、すっかり忘れてしまっていたけれど。

「……酷いです……兄様……。
 僕は兄様を守ろうとしただけなのに、兄様は僕を『化け物』と呼ぶのですね……」

 叫びだしてしまいそうな気持ちを押さえつけ、僕は何とか声を絞り出した。
 そして、兄様をじっと見つめた。

 わかって欲しい
 僕の『心から兄様を慕う気持ち』を。
 どうか……どうか……お願い兄様。

「僕は、地下のあの部屋で兄様のために祈りを捧げる毎日でも良かった。
 クロスⅦの言うとおり、兄様のために魔力を使い、心を捧げ、一生陽の当たらぬ地下で暮らしても良かった。
 でも兄様が一緒に行こうとおっしゃって下さったから、僕は大好きな兄様の言うことをきいた。
 ……兄様だけを信じてここまで来たのに……」

 必死で言葉を紡ぐ僕から逃げるように、兄様は後ずさってゆく。

 どうして?

 どうして?

 どうして?

 どうして兄様?

 僕には本当にわからなかった。

 どうしてあの優しかった兄様が、こんな態度をとるのか。
 もう、僕が嫌いになってしまったのだろうか?

 僕がどんなに馬鹿でも、いつも優しくして下さった兄様なのに。
 クロスⅦを殺した僕を、城や家族を捨ててまで守ってくださった兄様なのに。

 ……いったいあの時と、何が違うのだというのだろう。

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