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第25章 最後の永遠(本編最終章)
1.最後の永遠
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あれから俺たちは、力を合わせて国を盛り立てた。
努力の結果、俺は宰相にまで上り詰め、王の片腕となった。
148カ国からなる大同盟も造り、世界のほとんどの地域に平和が訪れている。
奴隷制度も世界的に廃止させたので、今後は親に売られたり、戦争奴隷が出たりすることはないはずだ。
エルシオン領は、アレス帝国が弱体化した後に反乱を起こし、アルフレッド王も俺も、それを全力で支援した。
俺の正体はもう、王は元よりブルボアの民にも、エルシオンの民にも知れわたっている。
エルシオンにかかわると決めた時点で、俺は自分の正体を皆にさらした。
アルフレッド王に対して元の国民がそうだったように、元エルシオン国民の一部は、俺を王として担ごうとした。
一方、自分だけ逃げ延びた俺を恨んで殺そうとする者も、当然のように現れる。
それでも俺は生き延び、アルフレッド王は、俺にエルシオン王となるよう勧めた。
……しかし、それは辞退した。
俺は罪人。王として君臨するには、あまりにもふさわしくない。
もちろん、助力なら惜しまない。
エルシオンを素晴らしい国にするために私財のほとんどをつぎ込み、日々奔走した。
時は経ち、エルシオンは民主国家として独立した。
エドガーの弟が初代大統領となり、俺も就任式には参加している。
あのあと、奴隷に落とされたエドガーの弟を、俺は全力で探し出した。
恨まれ罵られたが、それでも彼は、教育の援助だけは断らなかった。
一生恨まれる覚悟だったが、何か心境の変化があったらしく、彼とも数年後和解出来、エルシオンとも同盟を結んでいる。
最後の王である父の体内にあった『魔水晶』は、アレス王が隠し持っていた。
それも取り上げ、今は俺の胸にある。
使うつもりは、もちろん無いが。
アレス帝国は、ブルボア王国のやりようを苦々しく思っていたろうが、魔獣の出現を恐れて従った。
アリシアの生んだ子供は、彼女の予想通り男の子だった。
でも『リオン』とは名づけなかった。
きっとリオンは、俺がつけたその名を『他の者』に使われるのを嫌がると思ったから。
代わりに名前は『ヴァティール』とつけた。
息子は奴に似ない『賢く穏やかで上品な青年』となって、アルフレッド王の一人娘と結婚し、次代の王となった。
アルフレッド王は比較的早く崩御なさり、俺たちの中で1番若かったエリス姫も、すでにアルフレッド王の隣で眠りについている。
最後に残ったのは、老い衰えた、俺1人。
俺たちが造りあげた国は、故国エルシオンのような『完璧なる善』の世界ではなかったが、それでも現時点で人がつくりうる最高のものだ。
足りない部分を埋めていくのは、今を生きる者たちの役目で……もう俺は、過去の1頁に登場する影に過ぎない。
俺はずいぶんと長く生き、老衰で死んだ。
罪を重ね続けた俺にしては、上々な最後だったと思う。
ヴァティールがどうなったのかは、定かではない。
アリシアは普通に老いて亡くなったので、その魂は眠りに付いたまま代々の子供のほうに移っていったのかもしれないし、また、そうではなく、アリシアの遺体の中にそのまま留まっているのかもしれない。
いずれにせよ『主』である俺が一度寿命を終えた事により、奴にかかった『魔縛』は完全に解けたはず。
これからは、彼の意思で行動できるはずだ。
案外、今の俺の様子をどこかから見ているのかもしれない。
この世で精一杯生きた俺には、もう『人間としての生』に心残りなど無かった。
静かに息を引き取った後は、遺言どおり質素な木棺に入れられ、大聖堂の地下に安置された。
*明日ラストです。
努力の結果、俺は宰相にまで上り詰め、王の片腕となった。
148カ国からなる大同盟も造り、世界のほとんどの地域に平和が訪れている。
奴隷制度も世界的に廃止させたので、今後は親に売られたり、戦争奴隷が出たりすることはないはずだ。
エルシオン領は、アレス帝国が弱体化した後に反乱を起こし、アルフレッド王も俺も、それを全力で支援した。
俺の正体はもう、王は元よりブルボアの民にも、エルシオンの民にも知れわたっている。
エルシオンにかかわると決めた時点で、俺は自分の正体を皆にさらした。
アルフレッド王に対して元の国民がそうだったように、元エルシオン国民の一部は、俺を王として担ごうとした。
一方、自分だけ逃げ延びた俺を恨んで殺そうとする者も、当然のように現れる。
それでも俺は生き延び、アルフレッド王は、俺にエルシオン王となるよう勧めた。
……しかし、それは辞退した。
俺は罪人。王として君臨するには、あまりにもふさわしくない。
もちろん、助力なら惜しまない。
エルシオンを素晴らしい国にするために私財のほとんどをつぎ込み、日々奔走した。
時は経ち、エルシオンは民主国家として独立した。
エドガーの弟が初代大統領となり、俺も就任式には参加している。
あのあと、奴隷に落とされたエドガーの弟を、俺は全力で探し出した。
恨まれ罵られたが、それでも彼は、教育の援助だけは断らなかった。
一生恨まれる覚悟だったが、何か心境の変化があったらしく、彼とも数年後和解出来、エルシオンとも同盟を結んでいる。
最後の王である父の体内にあった『魔水晶』は、アレス王が隠し持っていた。
それも取り上げ、今は俺の胸にある。
使うつもりは、もちろん無いが。
アレス帝国は、ブルボア王国のやりようを苦々しく思っていたろうが、魔獣の出現を恐れて従った。
アリシアの生んだ子供は、彼女の予想通り男の子だった。
でも『リオン』とは名づけなかった。
きっとリオンは、俺がつけたその名を『他の者』に使われるのを嫌がると思ったから。
代わりに名前は『ヴァティール』とつけた。
息子は奴に似ない『賢く穏やかで上品な青年』となって、アルフレッド王の一人娘と結婚し、次代の王となった。
アルフレッド王は比較的早く崩御なさり、俺たちの中で1番若かったエリス姫も、すでにアルフレッド王の隣で眠りについている。
最後に残ったのは、老い衰えた、俺1人。
俺たちが造りあげた国は、故国エルシオンのような『完璧なる善』の世界ではなかったが、それでも現時点で人がつくりうる最高のものだ。
足りない部分を埋めていくのは、今を生きる者たちの役目で……もう俺は、過去の1頁に登場する影に過ぎない。
俺はずいぶんと長く生き、老衰で死んだ。
罪を重ね続けた俺にしては、上々な最後だったと思う。
ヴァティールがどうなったのかは、定かではない。
アリシアは普通に老いて亡くなったので、その魂は眠りに付いたまま代々の子供のほうに移っていったのかもしれないし、また、そうではなく、アリシアの遺体の中にそのまま留まっているのかもしれない。
いずれにせよ『主』である俺が一度寿命を終えた事により、奴にかかった『魔縛』は完全に解けたはず。
これからは、彼の意思で行動できるはずだ。
案外、今の俺の様子をどこかから見ているのかもしれない。
この世で精一杯生きた俺には、もう『人間としての生』に心残りなど無かった。
静かに息を引き取った後は、遺言どおり質素な木棺に入れられ、大聖堂の地下に安置された。
*明日ラストです。
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