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第15章 幸せの行方

5.幸せの行方

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 弟は、ずっと俺のいい付けを守って暮らしていた。
 魔力を使うことなどは一度もなかった。

 この城に来てからは、ちょっと内気な少年剣士……後には愛らしい売り子としてごく普通に暮らしていたのだ。

 でもリオンが『例の件』を知っていたと言うのなら、多分魔力を使って王との会話をこっそり聞いていたのだろう。

 眠りに落ちる前、俺はリオンに紅茶を勧められたが、その後の記憶がない。
 どこかから睡眠薬を調達して入れたのかもしれないし、そのたぐいの魔術を使ったのかもしれない。

 そうまでして俺を止め、王の部屋にリオンが行く理由は一つ。

「……リオンは、君の代わりに暗殺隊に入ることを申し出に来た。
 ただ私は断った。
 いくらなんでも、あんな年端もいかない子を暗殺隊に入れるわけにはいかない。
 それでもリオンは納得しなかった」

「……この壁を爆破したのも、ほかの隊員にケガを負わせたのも……リオンなのでしょうか?」

 俺の言葉に、王は頷いた。

「残念ながらその通りだ。
 ……あんなに強い戦闘魔術は見たことがない。
 あの子は、いったい何者なのだ?」

 アルフレッド王が重ねて問う。

「それは……今は申し上げられません。それよりリオンはどうしたのです?
 まさか、捕えて牢にでも……」

 その言葉に王は首を振った。

「それこそ『まさか』だ。
 リオンは、我々の手におえる相手ではない。
 地図を手に『ヴァーユ』の頭目の首を狩りに飛び出して行ってしまった。
 しかし弟君の戦闘魔術能力がいくら高くとも、彼はまだ子供だ。
 ……今からアリシアを除く親衛隊員に招集をかける。迎えに行ってあげなさい」

 アルフレッド王の言葉はありがたかった。

 居室を壊し、王の御前で無礼を働いたのなら、普通はそれ相応の覚悟をせねばならない。
 これがアルフレッド王ではなく、他国の王であったなら、俺に『弟を討伐せよ』との命令が下ってもおかしくはない。

 それほどの事をリオンはやった。

 それなのに……。

 リオンの能力を王に知られたら忌まれるのではないか……国家再興の道具として使われてしまうのではないか……そう警戒していた自分が、バカみたいだ。

 王の言葉は俺にとって本当に嬉しいもので、ちょっぴり涙が滲んだ。
 もっと最初から、リオンの能力について王に相談しておけば良かった。

 部屋も計画もめちゃくちゃにした上、暗殺隊員たちに怪我まで負わせてしまったリオンなのに、王は温情をかけて下さった。

 俺はこの恩を忘れず、一生王に仕えることを決意した。
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