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第13章 親衛隊候補生

9.親衛隊候補生

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 それから季節が進んで春が来た。

 俺は14才をとっくに過ぎ、背もそのへんの大人並みに大きくなった。
 父上は長身だったし、来年にはもっと高くなるだろう。

 リオンも12才となり少しは伸びたのだが、今年も俺のほうが伸び率が高いので弟は益々小さく、可愛らしく見える。

 アッサムとブラディは俺とアリシアでしごきにしごいたので多少はマシな腕になった。
 リーダーを新米の俺たちがしごかねばならないというのも変な気分だが、アリシアがヤれというので仕方ない。

 一応先輩たちに敬語は使っているけど、こんな調子なので敬っていないことはバレバレだと思う。
 それでもまぁ、関係はそう悪いものではなかった。

 リオンは相変わらず……というか、魔剣は封印して訓練用の模造刀を使っているにもかかわらず、相手に怪我をさせてしまうことが多い。
 それは体術にも言えることで、前以上に強くなっていることは間違いない。
 なのでシゴキは任せなかった。

 最初の練習試合の時、リオンはけが人を出している。
 その後も数回。
 王は苦笑しながらも許してくれたが、あまり続くと心証が悪くなるのは間違いない。

 リオンは背はさほど伸びないのに、パワーだけは目に見えて上がっている。
 もちろんそれは鍛錬の成果であるが、それだけではない。

 リオンが言うには、誕生日ごとに『大魔道士アースラの封印』がひとつづつ解けて、自然とパワーが上がるらしい。
 20才で魔獣を完璧に操る大魔道士の出来上がりというわけだ。

 以前魔獣ヴァティールがリオンのことを『アースラが造った最悪の人器』と言っていたが、多分『この事』を指して言っていたのだろう。
 パワーが上がること自体は頼もしくもあるが、普通の子供として育てたい俺は、リオンの魔の力が皆にバレないかヒヤヒヤもする。

 リオンは人外の力など持たなくてもいい。
 俺が弟を守っていくのだから。


 休日は二人で本を読んだり、カードゲームなどをしてゆっくりと過ごしていた。
 遠くまで遊びに連れていってやることはめったに出来ないけど、それでもリオンは嬉しそうだ。

 贅沢なんか言わない。
 俺たちが欲しいのは、ごく普通の幸せだけ。

 リオンは相変わらず俺以外の者には懐かないけど、そういうところも可愛いし、リオンも幸せ。俺も幸せ。他に何を望むと言うのだろう。

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