106 / 437
第13章 親衛隊候補生
7.親衛隊候補生
しおりを挟む
俺の馬鹿馬鹿!!
俺たちは『そういう設定』で城に潜入したはずだったのに、すっかり忘れてた!!
せっかく上手く行っていたのに、上手く行き過ぎて気が抜けてしまっていたようだ。
素性を偽って侵入した怪しい奴だと、王に思われたに違いない。
下手すれば捕らえられ処刑されるかも……。
身構える俺とは対照的に、アリシアは王に向かってニッコリと微笑んだ。
「まさかぁ……ですわ。
半年ほど前、親を失って途方にくれていた二人を引き取ってあげただけです。
よくある話ですわ」
「ああ、なるほどね。似てないと思っていたよ」
二人の間でたったそれだけの会話が交わされ、それで俺の危惧はなかったことになってしまった。
……さすが悪党アリシアだ。
息を吸うように嘘をつくとは。
その横でリオンが呟く。
「どうして僕は実年齢より1才年下に記載してあるのですか?」
「……ああ、君はどうごまかそうと15才以上には見えないからね。親衛隊ジュニアとしてしばらくは実務には就かせず売り出そうと思っているのだ」
王はリオンに向かってにっこりと微笑んだが、そのあと眉間に皺を寄せた。
「他にも理由はある。
実は、最近滅んだ大国の王子をアレス帝国が探していてね。
……年齢が明らかに違うから私は君を失踪した王子だと思っているわけではないのだが、瞳の色と髪の色が王子の条件にピッタリと合う。
近い年齢にすると、変な探索が来るかもしれないからイヤなのだ。
……うん、素晴らしい金だが、髪の色はやはり染めたほうがいいかな?」
「え……この髪はせっかく兄様が『綺麗』だって褒めて下さったのに……」
リオンが早速、瞳をうるませる。
……というか、瞳をうるませるだけではなく、魔剣の柄を服の上から握り締めている気がする。
殺る気満々か!
慌てる俺をよそに、王はニコニコと笑った。
「何を言ってるのだよ君。
染めるならお兄さんとお揃いの色だよ。オ・ソ・ロ・イ!!
大好きなお兄さんと同色の髪っていうのも、良いものだとは思わないかい?」
王の言葉に、弟は握っていたであろう、変形前の魔剣の柄をふわりと離した。
「……そういえば…………そうですね?
わかりました。お引き受けします」
あの事件以来、他人にはほとんど笑わなくなったリオンだが、わずかに頬が緩んでいて、明らかに喜んでいる。
……王は何気に子供の扱いが上手いのだな。
俺ではこうはいかない。
リオンは俺よりもやや明るい、オレンジがかった薄い茶系色に染めることとなった。
同時に俺にもリオンと同色に染めるよう指令が出たので、髪の色はこげ茶⇒薄茶に変えることになった。
これで兄弟そろってほぼ同色となる。
王いわく、金だとアレス帝国の目が気になるけど、光が当たったときだけ金にも見える感じが舞台栄えして良いとの事だそうだ。
俺たちは染料をもらってすぐ髪を染め替え、写真集も後日そこだけ色修正がかけられた。
俺たちは『そういう設定』で城に潜入したはずだったのに、すっかり忘れてた!!
せっかく上手く行っていたのに、上手く行き過ぎて気が抜けてしまっていたようだ。
素性を偽って侵入した怪しい奴だと、王に思われたに違いない。
下手すれば捕らえられ処刑されるかも……。
身構える俺とは対照的に、アリシアは王に向かってニッコリと微笑んだ。
「まさかぁ……ですわ。
半年ほど前、親を失って途方にくれていた二人を引き取ってあげただけです。
よくある話ですわ」
「ああ、なるほどね。似てないと思っていたよ」
二人の間でたったそれだけの会話が交わされ、それで俺の危惧はなかったことになってしまった。
……さすが悪党アリシアだ。
息を吸うように嘘をつくとは。
その横でリオンが呟く。
「どうして僕は実年齢より1才年下に記載してあるのですか?」
「……ああ、君はどうごまかそうと15才以上には見えないからね。親衛隊ジュニアとしてしばらくは実務には就かせず売り出そうと思っているのだ」
王はリオンに向かってにっこりと微笑んだが、そのあと眉間に皺を寄せた。
「他にも理由はある。
実は、最近滅んだ大国の王子をアレス帝国が探していてね。
……年齢が明らかに違うから私は君を失踪した王子だと思っているわけではないのだが、瞳の色と髪の色が王子の条件にピッタリと合う。
近い年齢にすると、変な探索が来るかもしれないからイヤなのだ。
……うん、素晴らしい金だが、髪の色はやはり染めたほうがいいかな?」
「え……この髪はせっかく兄様が『綺麗』だって褒めて下さったのに……」
リオンが早速、瞳をうるませる。
……というか、瞳をうるませるだけではなく、魔剣の柄を服の上から握り締めている気がする。
殺る気満々か!
慌てる俺をよそに、王はニコニコと笑った。
「何を言ってるのだよ君。
染めるならお兄さんとお揃いの色だよ。オ・ソ・ロ・イ!!
大好きなお兄さんと同色の髪っていうのも、良いものだとは思わないかい?」
王の言葉に、弟は握っていたであろう、変形前の魔剣の柄をふわりと離した。
「……そういえば…………そうですね?
わかりました。お引き受けします」
あの事件以来、他人にはほとんど笑わなくなったリオンだが、わずかに頬が緩んでいて、明らかに喜んでいる。
……王は何気に子供の扱いが上手いのだな。
俺ではこうはいかない。
リオンは俺よりもやや明るい、オレンジがかった薄い茶系色に染めることとなった。
同時に俺にもリオンと同色に染めるよう指令が出たので、髪の色はこげ茶⇒薄茶に変えることになった。
これで兄弟そろってほぼ同色となる。
王いわく、金だとアレス帝国の目が気になるけど、光が当たったときだけ金にも見える感じが舞台栄えして良いとの事だそうだ。
俺たちは染料をもらってすぐ髪を染め替え、写真集も後日そこだけ色修正がかけられた。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
子悪党令息の息子として生まれました
菟圃(うさぎはたけ)
BL
悪役に好かれていますがどうやって逃げられますか!?
ネヴィレントとラグザンドの間に生まれたホロとイディのお話。
「お父様とお母様本当に仲がいいね」
「良すぎて目の毒だ」
ーーーーーーーーーーー
「僕達の子ども達本当に可愛い!!」
「ゆっくりと見守って上げよう」
偶にネヴィレントとラグザンドも出てきます。
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる