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第13章 親衛隊候補生

5.親衛隊候補生★

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 アリシアは、我が国とも交易のある隣国出身者だ。
 しかも公爵家の侍女を4年間もしていた。

 世界一栄えていた巨大王国の皇太子であった俺の事も、噂にぐらいは知っていてもおかしくはない。

 これでも俺は容貌・頭脳・剣技と三拍子揃った優秀な王子だったのだ。
 他国でも相当噂に上っていたのではあるまいか。

 しかしアリシアは、ため息をついた。

「あそこの王子って本当、酷かったわ。マザコンに加えてロリコン、シスコンの三重苦で超有名だったわよねぇえ~?
 え~っと正式な名前は……ダメね、皆マザコン王子って呼んでたから本名はエルなんとかとしか思い出せないワ」

 と、思いっきり失礼なことを喋った。

 その後、俺に目を向けて、

「こっちのエルはブラコンだけだから……だいぶマシ……かしらね?
 良かったわねぇエル! 三重苦じゃなくて!!」

 彼女はニッコリと微笑んでみせた。

 でも俺は、引きつった笑みを返すのが精一杯だった。

 ……俺がその三重苦の王子本人なんだよっ!!!

 今はブラコンも加わって四重苦……いやいや、単に家族想いなだけで、馬鹿にされる覚えなどない。

 ないんだけど……素性を隠しているので、反論出来ないのが悔しい。
 ギリギリと無言で奥歯を噛み締めていたら、

「兄様、『ぶらこん』って何ですか?」

 リオンが無邪気に首を傾げ、可愛らしく俺に聞いてきた。

 ああ、癒されるなぁ。
 幼い仕草に透き通るような綺麗な声。
 俺を信じきっている大きな瞳。

 なんて可愛いんだ。

 無神経な大人であるアリシアとは大違いだ。
 まじ天使。

 もう拝んでしまおうか。

「あのね、ブラコンっていうのは弟が大好き過ぎて、大変な状態のことなのよ~?」

 リオンに見とれている間に、おせっかいなアリシアが横から口を挟む。

「そっか……良かった。
 何か兄様の悪口っぽく聞こえたので、もう少しでアリシアさんの首を落とすところでした」

 リオンが左手を可愛らしく胸に当てて、安心したようにほぅ……と息を吐く。
 そんな仕草も本当にカワイイ。

 ただ、弟なら本当にアリシアの首を落としかねないのだが、念写真屋のおじさんは冗談だと思ったらしく、呑気に「ははは」とだけ笑っていた。

 次に念写真師はアリシアを撮り始めた。



 アリシアの格好は親衛隊見習いの男子服をアレンジしたものだが、あまり戦闘向きとは言えない。

 豊かな胸はキチンと軍服に隠されているのだが、体のラインに沿ってピッタリと裁断されているので、胸のでっかさがいっそう際立つ。

 スカートはミニ丈で、戦闘などしたら確実にパンツが見える。
 それに、薄く透ける薔薇模様のストッキングが何とも艶かしい。

 親衛隊要員というよりは、エロブロマイド要員として入隊させたのではと疑問に思う。

 それでも100枚売れるごとに3エドルのバックが個人に入るせいか、アリシアは怒りもせずに太ももがあらわになるポーズまでとっている。しかも笑顔。

 なんという女だ、はしたない。
 このようなはしたない女は、一生売れ残るに違いない。

 ……しかし俺たちも、バックに釣られて良しとしたので所詮は同じ穴のムジナ。
 ああ、俺も段々貧乏性になってきたなぁ。


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