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第13章 親衛隊候補生

3.親衛隊候補生

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 親衛隊候補生としての3ヶ月が過ぎた。
 いつもは城内で戦闘訓練や掃除をして過ごしているのだが、今日は王城の貴賓室にみんなして呼び出されている。

 何か重要な使命でも与えられるのかと思って背筋を伸ばしていたら、全く違う。

「はい、こっち向いてエル君。
 リオン君はもうちょっとお兄さんに寄り添って……そうそう、そんな感じ!!」

 眼鏡をかけた中年の男が、親衛隊見習い用の制服を着た俺たちをガン見しながら指示を出す。

 じぃぃ~~~~~~っと穴があくかと思うほど見つめられると、正直背中がモゾモゾする。

 ぎこちない笑顔を浮かべたまま、待つこと3分。

「はい、出来ました!」

 男が一枚の紙を渡す。
 そこには俺とリオンの姿が見事に写っている。

 念写と言うものを初めて見た俺は、さっきの不快さも忘れて写真に見入った。

 我が国にはクロスⅦとリオンしか魔道士はいなかった。
 その彼らも神官魔道士として『善の結界』を張ることのみが職務なため、念写師というのはエルシオン王国内には存在しない。

 それでも城には宮廷絵師がいたし、町にも安価な似顔絵描きが大勢いたので特に困るということはなかった。
 ただ絵師ではこんな短時間に、これだけ精密な絵を書くことはまず不可能だ。
 腕の良い念写師になると不自然にならない程度に美形度をアップさせて念写することも出来るらしく、需要は高いという。

 俺も暇を見てリオンと習ってみようかな?

 今は組織『ガルーダ』にお世話になっているが、もし麻薬などヤバイ仕事を扱わされそうなら、すぐに逃げねばならない。
 しかし、他国で働き口を見つけるのは中々難しい。
 就業には年がどうしても足らないのだ。

 ただ専門性の高い技能を持っていたら、また話は変わってくるのではないだろうか?

 俺だってリオンの兄弟なのだし、魔剣の刃も出せた。
 魔力はあるはずだ。

 国で習ったところによると、それなりの魔力を持つ人間は、世界的に見てもとても少ないらしい。
 でも俺には、血統により生まれ持った魔力がある。
 それを利用して、何か全世界で使える『就職に有利な特技』を身に付けたいものだ。

 ちなみにリオンに戦闘魔法を習って、どこかの軍に入るなどという案は無い。
 白系魔法師は世界中どこでも歓迎されるが『戦闘系魔道士』だけはまっとうな職にはつけない。

 300年前のアレス帝国とエルシオン王国の大魔道戦では、エルシオンが圧倒的勝者となった。

 これ以上の戦闘は不可能と判断した当時のアレス王は、なんとか戦争を早期に終わらせようと、我が国に和平交渉を試みた。

 その結果、大魔道士アースラはアレス帝国内での魔道士育成、全てを禁じる事を言い渡した。

 アレス王は、生き残った魔道士も全てアースラに引き渡し、大切な世継ぎさえも人質として差し出し、かろうじて停戦は成ったのである。

 和平条約が結ばれた後は、エルシオン王国内でも魔道士の育成が禁止された。
 魔道行為も禁じられ、転職するか、アースラの管理下に入るかを選ぶしかなかったようだ。

 身を立てる方法を奪われた魔道士たちが、アースラに反発したかというと、否である。

 大魔道士たるアースラの命令だから従った……と、俺は解釈していたが、それも『善の結界』の作用で、アースラの言葉に対して反発することができなかっただけなのかもしれない。

 アースラ自身も以後の魔道士育成は表立ってしておらず、そのことにより『最大の魔法大国』であった二国から魔道士が消えた。

 何故『世界最強の魔道士アースラ』を抱える戦勝国エルシオンまで道士育成を禁じたのかは、正確には伝わってない。

 魔道合戦により両国の国土が極端に荒廃したので、それを王たちが悲しんだのだとか、若い魔道士による下克上を防いで国を安定させるためとか……後世の人々たちが勝手に推測して書き立てているだけだ。

 その他の国では別に禁止されちゃいなかったけど、その後いくつかの国で戦闘系魔道士による国家転覆騒動が持ち上がったため、他国でも段々と戦闘魔道士は忌まれるようになり、姿を消していった。

 だから、戦闘魔道士になってもまっとうな職につくのは難しい。
 せいぜいマフィアぐらいしか就職先はないだろう。

 偏見というのは本当に怖い。
 魔剣士といっても、リオンは優しい良い子なのに。

 ……いやまぁ……俺も一度はその偏見の目でリオンを見、傷つけた側なのでアレコレおこがましく言うことはできないが。
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