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第12章 転機

10.転機

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 連れて行かれた先は、いかにも『悪党の根城』と言った感じの古びた城だった。
 今日はどんよりと曇っているので、その城もますます陰気に見える。

 元々は中級貴族の城だったのだろうが、庭園は荒れ果て草はぼうぼう。
 革命の頃の名残か、破壊された石像が草の合間から所々チラリと見えている。

 うえ。今日からこんなところでお世話になるのかぁ。
 あまりの荒廃ぶりに、俺の気持ちも今日の天気のようにどんよりとしてしまう。

 城の荒れ様だけじゃない。
 そもそもラフレイムは犯罪者や逃亡奴隷が多く居着く無法地帯で、今から訪ねる組織はここで勢力を持つ3大組織のうちの一つなのだそうだ。

 身を守るためには大きな組織に所属するのが手っ取り早い……というアリシアの論理はよくわかる。
 でもならず者の組織に身を置いて働くなんて、王子の俺に出来るのだろうか?

 歩きながらも不安ばかりが頭をよぎる。

 だいたい、よく考えればリオンの教育にも悪い。
 あんなに可愛いリオンが悪党たちに影響されてグレでもしたらどうするんだ?
 そうしてモヒカンにでもなったら――――――俺は間違いなく号泣する自信がある。
 事と次第によってはさっさと逃げ出して、他の国に行くのが良いのかもしれない。

 ただ、相当な不安がありながらもアリシアについてきたのは他に行くあてがなかったからだ。

 どこかで働くにしても、まっとうな国では俺たちは雇ってもらえない。
 リオンが魔剣士うんぬん以前に、就業するには年が足らないのだ。

 祖国では子供の就業はけっこう認めていた。
 勉学がおろそかにならない程度なら、社会経験を積むのはむしろ良いことだとされていた。

 でも他国ではそうではないらしい。

 『善の結界』の内なら、子供を酷く使う雇用主など全く居ない。
 しかし他国にはそのようなものなど無いのだから、子供を守るためには仕方のない措置なのだろう。

 そうは言っても、守られない子供たちもたくさんいる。
 子供の労働者も他国で見かけたことがあったはずなのだが、多分あれは奴隷だったのだ。

 巨大王国の王子として育った俺は、一生懸命勉強したつもりでもやはり色々と抜けている。
 全ての帝王学を学び終わる20才まで城にいたら、こんなことで悩みはしなかったろうか?

 それともやっぱり世間知らずなままだったろうか。

 ……いや、それを今更考えても仕方ない。
 俺たちは『今現在』を何とか生き抜いていかねばならないのだ。
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