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第6章 異変
5.異変
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「兄様は酷い。
それでも僕は…………兄様が、大好きです」
涙をたたえた瞳が、揺れた。
「まて、リオン!! 何をするつもりだ!!」
リオンはそれには答えず、悲しそうに微笑んだ。
音も無く刀身が、リオンの心臓に突き刺さる。
華奢な体が、ゆっくりと傾いで床に倒れた。
「そんな!! 嘘だろ!! なあっ!!」
飛び起きて小さな体を揺するが、答えは返らない。
「嫌だ!! さっきのは違うんだ!! なあ、目を開けてくれリオン!!」
心臓に刺さった魔剣エラジーの刀身が、持ち主の命が消えるのに呼応し、淡い光を放ち溶けてコトンとと落ちていった。
傷口からは血があふれ出し、リオンを抱きしめる俺の手を暖かく濡らす。
いつまでそうしていたのだろうか。
もう心が完全に麻痺してしまって、何も感じない。
向こうに転がっている4つの死体も、もうどうだっていい。
捨てた故郷の城は、おそらく落ちた。
父母も妹も、心優しい城の人たちも皆死んでしまったに違いない。
俺がリオンをそそのかし、連れ出したせいで。
無敵であったはずの『結界』を作ることを放棄させて助け出した弟は、目の前で心臓を突いて死んだ。
誰より大切にして、いっぱいの愛情を注ぎ、幸せにしてやるつもりだったのに……苦しませ悲しませ、化け物と罵って俺が殺してしまった。
リオンは本当に俺を助けたい一心で、エラジーを振るったのだろう。
俺は酷いことを言ったのに、それでも俺を助け続けてくれた。
この家に俺を連れてきたのは多分、気を失った俺を休ませるため。
実の兄でさえ恐れたこのリオンに、休む家を提供する村人は、おそらく一人も居なかった。
だからリオンは家人が兵士にすでに殺されたこの家で、しばし俺を休ませることにしたのだ。
さっきはランプの薄明かりの中、気がつかなかった。
でも、よく見ると、兵士たちが踏み荒らした跡がある。
複数の大人の足跡だ。家人を殺したのは、リオンでは無い。
思い返せば、リオンがクロスⅦを殺したのだって、自分のためではなく俺のためだった。
あの時は、死体を見たわけじゃなかったから実感が無かったけれど、クロスⅦを殺してしまったリオンは、泣いて震えていた。
クロスⅦのリオンへの接し方は非人道的ではあったが、それでも自分を育ててくれた親代わりのような彼を殺すことは、本当に怖く悲しい事だったに違いない。
俺が現れるまで、クロスⅦはリオンの世界そのものだったのだから。
「……リオンごめんな。でも俺はお前を一人になんてさせないよ。
生まれ変わったら今度こそ……普通の兄弟として幸せに暮らそうな?」
俺は事切れたリオンをしっかりと胸に抱き、ふわふわの髪を何度も撫でた。
そして持っていた護身用の短剣を鞘から抜くと、さっきリオンがやったように、切っ先を自分の心臓に向ける。
恐怖は無い。そんな心は、もうとうに麻痺してしまった。
むしろ死は、甘い安らぎを与えてくれるような気さえしていた。
それでも僕は…………兄様が、大好きです」
涙をたたえた瞳が、揺れた。
「まて、リオン!! 何をするつもりだ!!」
リオンはそれには答えず、悲しそうに微笑んだ。
音も無く刀身が、リオンの心臓に突き刺さる。
華奢な体が、ゆっくりと傾いで床に倒れた。
「そんな!! 嘘だろ!! なあっ!!」
飛び起きて小さな体を揺するが、答えは返らない。
「嫌だ!! さっきのは違うんだ!! なあ、目を開けてくれリオン!!」
心臓に刺さった魔剣エラジーの刀身が、持ち主の命が消えるのに呼応し、淡い光を放ち溶けてコトンとと落ちていった。
傷口からは血があふれ出し、リオンを抱きしめる俺の手を暖かく濡らす。
いつまでそうしていたのだろうか。
もう心が完全に麻痺してしまって、何も感じない。
向こうに転がっている4つの死体も、もうどうだっていい。
捨てた故郷の城は、おそらく落ちた。
父母も妹も、心優しい城の人たちも皆死んでしまったに違いない。
俺がリオンをそそのかし、連れ出したせいで。
無敵であったはずの『結界』を作ることを放棄させて助け出した弟は、目の前で心臓を突いて死んだ。
誰より大切にして、いっぱいの愛情を注ぎ、幸せにしてやるつもりだったのに……苦しませ悲しませ、化け物と罵って俺が殺してしまった。
リオンは本当に俺を助けたい一心で、エラジーを振るったのだろう。
俺は酷いことを言ったのに、それでも俺を助け続けてくれた。
この家に俺を連れてきたのは多分、気を失った俺を休ませるため。
実の兄でさえ恐れたこのリオンに、休む家を提供する村人は、おそらく一人も居なかった。
だからリオンは家人が兵士にすでに殺されたこの家で、しばし俺を休ませることにしたのだ。
さっきはランプの薄明かりの中、気がつかなかった。
でも、よく見ると、兵士たちが踏み荒らした跡がある。
複数の大人の足跡だ。家人を殺したのは、リオンでは無い。
思い返せば、リオンがクロスⅦを殺したのだって、自分のためではなく俺のためだった。
あの時は、死体を見たわけじゃなかったから実感が無かったけれど、クロスⅦを殺してしまったリオンは、泣いて震えていた。
クロスⅦのリオンへの接し方は非人道的ではあったが、それでも自分を育ててくれた親代わりのような彼を殺すことは、本当に怖く悲しい事だったに違いない。
俺が現れるまで、クロスⅦはリオンの世界そのものだったのだから。
「……リオンごめんな。でも俺はお前を一人になんてさせないよ。
生まれ変わったら今度こそ……普通の兄弟として幸せに暮らそうな?」
俺は事切れたリオンをしっかりと胸に抱き、ふわふわの髪を何度も撫でた。
そして持っていた護身用の短剣を鞘から抜くと、さっきリオンがやったように、切っ先を自分の心臓に向ける。
恐怖は無い。そんな心は、もうとうに麻痺してしまった。
むしろ死は、甘い安らぎを与えてくれるような気さえしていた。
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