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第5章 外の世界

3.外の世界★

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 いや、まだ何とかなる。
 その証拠に、この兵士はリオンを見たのに、捕らえようとはしない。

 少年神官の風貌までは、詳しく知らされていないのだろう。

 これは推測でしかないが、何か用が出来て地下神殿に行った父王が、クロスⅦの死体を見つけてしまったのではあるまいか?

 なんというタイミングの悪さだ。

 しかしリオンはもう、神官服などではなく、城内の下働きの子供が着るような普通の服を着ている。
 さらに言うなら、どうも少年には見えていないようだ。

 父上が我が子のリオンを『賊』と言ったことに衝撃を受けながらも、冷静に逃れる方法を探る。
 今逃げないと、リオンも俺も、確実に殺されてしまうと思ったのだ。

 頭の中で何パターンかシュミレーションしていると、兵士は俺を見つめて言った。

「……王子様。いくら面食いだといっても、可愛い女の子を連れ込んで、一緒に盗み食いしている場合じゃないですよ。
 あなたさまの身に何かあったら、私どもがどんなに困るか、少しはお考えください」

 一兵卒のその男は、非常事態にもかかわらず、俺に説教を始めた。
 いや、一兵卒に説教されるのは昔からだし、うちの国のおおらかさが証明される良いところでもあるのだが、今は付き合ってる暇は無い。

「あの……神官服の少年、俺見たかも……」

 そう言うと、兵士は食いついてきた。

「どこです!!」

「3階の使ってない客室に、白い影が入っていくのをちらっと見たけど、お化けじゃなかったんだ……」

「3階!? 上はロイヤルエリアじゃないですか!!
 王子、しばらくここに隠れていて下さい。賊はおそらく王族を狙っているのでしょう。危険です!!」

 兵士は大声を上げながら、あわただしく去っていった。
 まんまと騙されてくれて、良かった。
 これでほとんどの兵が上に向かう。

 次は、おばさんを何とかしなくては。

「おばさん……賊は俺達を狙ってるらしいから、ちょっと様子を見てきてよ。
 この子も怯えちゃってるし、この食料棚の中に隠れてていい……?」

 これでも俺は『始祖王の再来』とまで言われている強さなのだが、恐ろしいことにおばさんの頭の中では、転んで「うえぇぇん」と泣いていた、幼いころのイメージが一番強いらしい。
 いつまでも俺を子供扱いしてくる。

 なので、怖そうにさっきのセリフを言うと、おばさんはフライパンと包丁で武装し、勇ましく厨房を出て行った。

 ……今だ!!

 心の中でおばさんに謝りながら、俺はリオンの手を引いて、裏口からすばやく走り出た。
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