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第4章 鳥篭の外へ

12.鳥篭の外へ

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  父上は、ずっと忙しそうだった。
 どうやら北の巨大帝国――――――アレス帝国が、わが国の同盟国に向けて進軍しているらしい。

 アレス帝国は、強大な軍事国家である。
 例の、美しいが性格の悪い年増の姫の居る……あの国。
 皇族すべてが、大変激しいことで知られている。

 しかし我が国は、軍事的にそれに劣ることはない。

 実は建国当時、うちの国とアレス帝国は、何度も戦争したらしい。
 でも、一度として負けたことは無い。
 それどころか、魔道士アースラの活躍で大勝し……以来アレス帝国は200年以上我が国の属国だった。

 あの国が独立国となって暴走を始めたのは、ほんの50年ほど前の話である。

 情勢がきな臭くなってきた今、このままリオンと共に国を捨てて良いのか少し迷った。
 だがアレス帝国が我が国に矛先を向けたとしても、あの頃よりも政情が落ち着き、豊かになったわが国が負けるわけが無い。

 今なら……結界の加護がなくともわが国なら大丈夫なはずだ。
 結界をあてにするやり方は、そろそろ改めるべきだろう。

 だとすれば、国を出るのは今のタイミングしかない。

 俺が行方不明となり、更に食事の受け渡しが地下の部屋で行われなくなったのを知れば、父王はすぐに結界の消失に気づいて軍を強化するだろう。

 平和主義者ではあるが、父は文武に長けている。頭脳も明晰だ。

 俺は手紙を父母とエドワード……そして今は字の読めない妹姫ヴィアリリスに残し、そのまま計画を決行することにした。


 俺とリオンは、深夜を待って目立たない服に着替えた。
 持っていく荷物は、いくらかのお金と小さな麻袋一杯分の砂金。

 質素に暮らせば、働かずとも20年は過ごせるだろう。
 もちろん大人になれば、俺も庶民に混じって働く。
 そのぐらいの覚悟は、あるつもりだ。

「さあ、行こう」

 俺は、ためらってうつむく弟に手を差し出した。
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