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第4章 鳥篭の外へ

6.鳥篭の外へ

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「や……違う! 違うって!!」

 むしろ反対。うちの王家は美形が多いと言われ、実際妹も兄馬鹿目線を差し引いても超かわゆいし、母も息子ながら見とれてしまうような美女だ。
 あの馬鹿父でさえ、国内で並ぶものは超絶美形な母の兄・エドワードぐらいしか思い当たらない。

 しかしリオンの容姿も、相当なものだ。
 そして、男にしておくのは……本当に惜しい。
 可愛すぎる。

 失礼にあたるので、当人の前では言えないが。

 そういう俺も今でこそ『男の中の男』だの『始祖王シヴァの再来』だのと言われているが、幼いころは女の子のように可愛いと言われ、女の子が欲しかった母などは、俺にヒラヒラのドレスを着せて遊んだりもしていたようだ。

 俺は全く覚えていないが、悲しいことに証拠の肖像画が残っている。

 ああ、そうか。
 今のリオンなら、むしろ女の子の服のほうがよく似合う。

「ちょっと待ってろよ!!」

 そう言って俺は元来た道を引き返し、下働きの女の子用の服を倉庫から失敬してきて、弟に渡した。

 年の幼い下働きの少年少女たちは、孤児がほとんどだ。

 国は、行き場のない子供を国立教会に引き取って学校に行かせ、服や食事を支給する。
 それと同時に、子供たちも無理のない範囲で国のために働き、将来身を立てるための技術を身につけていく。

 働かせることがメインではないため、支給される女の子の服は、かわいらしいものが多い。

 俺は、リオンのふわふわの髪によく合うように、ふわふわの水色の長いスカート、それに薄ピンク色のふんわりとした上着を選び、手渡した。

 そうして前回同様、リオンの肌を見ないよう、最大限注意して着せていく。
 弟の半裸を見て赤面するような、アホな失態を繰り返すわけにはいかないからだ。

 よし。
 さすがに二回目は、冷静に着せられた。(多分)

 見たかエドワード。
 俺は変態などではない。
 弟を手伝ってやる、思いやり深い良い兄だ。

 ホッとして、さっきまで背けていた顔を戻し、弟を見る。

 ……う、似合うっっ!!!!

 少女の服を着たリオンは、とんでもなく可愛らしかった。
 似合いすぎて、ちょっとマズイぐらいだ!!

 言葉もなく立ち尽くしていると、またリオンがシクシクと泣き始めた。

「……やっぱり……この服も似合わないのですね。
 着る本人が醜いのだから、服をいくら換えたって……ううっ……」

「ち、違う!! そうだ、眼!!
 いつもそうだったから、うっかり忘れていたけど……その目隠し、とって見ろよ。
 そうしたらわかるから」

 慌ててそう言うと、リオンは困ったように首を振った。

「鍵は、クロスⅦのポケットの中です。
 ……今頃氷室の中のクロスⅦと一緒に、カチカチに凍ってます。だから……」

 そ、それはちょっと取りに行きづらい。
 仕方の無い事と割り切ったつもりだが、今更死体を見たくは無い。

「馬鹿だな、鍵なんか無くても目隠しは皮で出来ている。
 リオンのエラジーを貸してくれるか?」

 エラジーは、リオンが持たされている武器だ。
 初代クロス神官が、『大魔道士アースラ』から直接授けられたらしい。
 鞘は手のひらほどの大きさの古びた金属なのに、引き出されると鞘自体も変形し、ごく細身の長刀となる。

 注意深く受け取ったエラジーを使い、俺は目隠しの一番細い部分を切った。
 そこから現れた大きな瞳は、俺と同じ淡い朱の宿った金色だった。

「……兄様…………」

 その瞳から、涙があふれる。

「ずっと、兄様のお顔が見たいと思っていました。
 思っていた通り、お優しそうでお美しくて……僕なんかが弟で良いのですか……?」

「当たり前だろ!
 それにお前は、すっごく可愛いよ。服だってとても似合っている」

 そう言って抱きしめてから刀身をかざし、映る姿を見せた。
 残念ながら、部屋に鏡は無かったからだ。

「あの……この服には色があるのですね。……綺麗……ですね……」

 リオンはびっくりしたように、スカートのすそを両手でつまんだ。
 そうすると、白く細い脚の大部分があらわとなった。

 うわわわわっ! 

「ば、馬鹿、駄目だろはしたない!!」

 思わず大声を出してしまう。

「え!? 『はしたない』って何ですか?
 どういう意味の言葉……なのですか、兄様?」

 大きな瞳をぱちくりとさせて、リオンが聞く。
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