28 / 437
第4章 鳥篭の外へ
3.鳥篭の外へ
しおりを挟む
「心配するなリオン!! 俺がついているからなっ!!
クロスⅦの死体はどうした?
見つからないように、始末しなければ……」
俺はもう覚悟を決めた。
リオンは俺を守るため、師であるクロスⅦを殺した。
俺に会うまでは『世界の全て』であったであろう彼を。
「…………あの……クロスⅦは……儀式の供物を貯蔵するための氷室に隠しました……遺体を痛めたくはなかったので……。
氷室の氷は、魔獣の力を借りて作ったものですから……術師であるクロスⅦが亡くなっても溶けることはありません……。
それで……よろしかったでしょうか……?」
リオンが涙でつまりながらも、細々と答えた。
「よし。上出来だ。
クロスⅦはどうやって食事の受け取りをしていたか、分かるか?」
「はい。食事のトレーは……地下神殿の奥にある暗い小部屋の天井の穴から1日に一度だけ、まとめて吊り下げられ……受け渡されます……」
「それ以外は、外部との接触はないか?」
リオンは「はい」と答え、小さく頷いた。
「……クロス神官と接触出来るのは、王お一人のみです。
それも、年に数回だけ……めったにいらっしゃいません。
地下神殿から出ることはクロスⅦも出来ないようで……こちらから王と接触を取りたい時は、回収される食事のトレーに白紙を置くことになっているようです……」
俺はリオンの言葉を元に、今後どうするべきかを考えた。
でも、どのように考えようと、結論は一つだけ。
「よく聞けリオン。俺はお前を国外に逃がす。
クロスⅦの死は当分は隠せるが、見つかればお前の身が危うい。
いや……俺も行こう。こんな狂った国、もう御免だ!!」
「……そ、そんな……そんな恐ろしい事……」
俺は、青ざめて震え上がるリオンを抱きしめた。強く。強く。
「俺と外で暮らすのは、嫌か?」
「……嫌なわけ、無いです。僕は兄様さえいれば……。
でも、僕はここから出たことが無いし、お外は恐ろしい所だと聞いているので、とても怖いです」
リオンは腕の中で、ガタガタと震え続けた。
「怖くなんか無いさ。外はきれいで素晴らしいぞ!
それに、もし怖い目に遭ったとしても、俺が絶対にお前を守ってやる。
実はもう、脱出ルートを作ってあるんだ。お前と暮す隠れ家もとっくに用意した。
……ただ、すぐにとはいかない。1週間待ってくれ」
俺は、抱きしめる腕に更に力を込めた。
「……兄様。僕は、いつまでだって待っています」
そう言ってリオンは、かすかにだが微笑んだ。
クロスⅦの死体はどうした?
見つからないように、始末しなければ……」
俺はもう覚悟を決めた。
リオンは俺を守るため、師であるクロスⅦを殺した。
俺に会うまでは『世界の全て』であったであろう彼を。
「…………あの……クロスⅦは……儀式の供物を貯蔵するための氷室に隠しました……遺体を痛めたくはなかったので……。
氷室の氷は、魔獣の力を借りて作ったものですから……術師であるクロスⅦが亡くなっても溶けることはありません……。
それで……よろしかったでしょうか……?」
リオンが涙でつまりながらも、細々と答えた。
「よし。上出来だ。
クロスⅦはどうやって食事の受け取りをしていたか、分かるか?」
「はい。食事のトレーは……地下神殿の奥にある暗い小部屋の天井の穴から1日に一度だけ、まとめて吊り下げられ……受け渡されます……」
「それ以外は、外部との接触はないか?」
リオンは「はい」と答え、小さく頷いた。
「……クロス神官と接触出来るのは、王お一人のみです。
それも、年に数回だけ……めったにいらっしゃいません。
地下神殿から出ることはクロスⅦも出来ないようで……こちらから王と接触を取りたい時は、回収される食事のトレーに白紙を置くことになっているようです……」
俺はリオンの言葉を元に、今後どうするべきかを考えた。
でも、どのように考えようと、結論は一つだけ。
「よく聞けリオン。俺はお前を国外に逃がす。
クロスⅦの死は当分は隠せるが、見つかればお前の身が危うい。
いや……俺も行こう。こんな狂った国、もう御免だ!!」
「……そ、そんな……そんな恐ろしい事……」
俺は、青ざめて震え上がるリオンを抱きしめた。強く。強く。
「俺と外で暮らすのは、嫌か?」
「……嫌なわけ、無いです。僕は兄様さえいれば……。
でも、僕はここから出たことが無いし、お外は恐ろしい所だと聞いているので、とても怖いです」
リオンは腕の中で、ガタガタと震え続けた。
「怖くなんか無いさ。外はきれいで素晴らしいぞ!
それに、もし怖い目に遭ったとしても、俺が絶対にお前を守ってやる。
実はもう、脱出ルートを作ってあるんだ。お前と暮す隠れ家もとっくに用意した。
……ただ、すぐにとはいかない。1週間待ってくれ」
俺は、抱きしめる腕に更に力を込めた。
「……兄様。僕は、いつまでだって待っています」
そう言ってリオンは、かすかにだが微笑んだ。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
子悪党令息の息子として生まれました
菟圃(うさぎはたけ)
BL
悪役に好かれていますがどうやって逃げられますか!?
ネヴィレントとラグザンドの間に生まれたホロとイディのお話。
「お父様とお母様本当に仲がいいね」
「良すぎて目の毒だ」
ーーーーーーーーーーー
「僕達の子ども達本当に可愛い!!」
「ゆっくりと見守って上げよう」
偶にネヴィレントとラグザンドも出てきます。
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる