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第3章 王家の秘密

5・王家の秘密

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 当時『世界最強』と言われていた魔道士兄妹は、結界内全ての人間の魔力を特殊な製法で造った『魔水晶』で吸い尽くした。

 『善の結界』の維持には、膨大な魔力がいるからだ。

 そしてその魔水晶を結界の核として、王の体内に移植した。

 この魔水晶は代々の王が受け継ぎ、全国土に敷かれた結界内の魔力を今でも吸い続けているという。

 我が国に魔法医がいないのは、おそらくこのためだ。

 次に彼らは、それでも足りない結界維持のための魔力を補うために、元々捕縛していた『魔獣』の力を使った。

 魔獣の存在は『伝承』としては各国に存在する。
 その中の彼らは、人間の手に負えるような存在ではなかった。

 稀に人の前に姿を現すこともあるようだが、けた外れの魔力を有し、怒らせれば一国を滅ぼすことさえ、たやすくやってのける。
 そんな人知を超越した化け物の制御など、本来なら出来るはずも無いのだ。

 しかしどのような方法を取ったのか、世界で唯一、大魔道士アースラだけは魔獣を魔縛することが出来た。
 大戦時はこの『魔獣』を使役してアレス帝国と戦い、その国に勝利したと伝えられている。

 母上の日記によると――――大戦後アースラは、国を守るために魔獣を地下深く閉じ込め、その魔力を利用したらしい。

 確かに魔獣は以後、歴史の表舞台から姿を消している。
 きっと、この頃に地下神殿が作られ、アースラによって籠められたのだろう。

 しかし話は、それだけでは終わらない。
 人には寿命というものがある。

 王家には魔水晶を継ぐ王と、封じられた魔獣を制御する役割を継ぐ神官魔道士が必要だった。

 アースラは、シヴァ王とリリーシャ王妃の子供のうちの一人を魔水晶を継ぐ偉大な王に。
 もう一人は、穢れた魔獣を継ぐ、決して表には出られぬ神官魔道士とすることに決めた。

 ……なんかけっこう酷いことしてるな、大魔道士アースラ。
 親友と実妹の子供の一人を神官魔道士にして、地下に閉じ込めたのか。
 一般に伝わっている伝承とは、ずいぶん違うぞ?

 大魔道士アースラは『慈悲』と『慈愛』の人……と先生たちから習った気がするんだが。

 そしてシヴァ王の子供は、史実では一人だ。

 シヴァ王とリリーシャ王妃は、元祖ラブラブカップルとして今でもいくつかの逸話とともに広く語られているが、他に子供が居たという記録はない。

 王家の過去帳にさえも、載っていなかった。 
 リオンのように、ずっと閉じ込められっぱなしだったということか。

 ともかく、それは因習となり、国民から隠されて現在まで続いているらしい。
 リオンのような不幸な子供は、そうして造られたのだ。 
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