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再会小話5 だから、幸せに1

再会小話5 だから、幸せに3

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 忌々しいが、自力で封印を解くことが出来ない以上『助力』を得なくてはなるまい。

 真っ先に浮かんだのは、リオンの顔。
 ワタシを体内に封じていた頃ほどの魔力はもうあるまいが、それでも『アースラの末』である。
 奴なら何とかできるのではあるまいか?

 気は進まないが、頼んでみるか。
 なんせワタシの未来がかかっているのだ。

 手のひらを合わせ、魔力を使って小さな宝石を造る。
 赤い光が揺らめき、形を成してゆく。

 普段はリオンに探知されないよう魔力を潜めているが、これで奴にワタシの場所が伝わったことだろう。
 きっと今までみたいに『神速』で押しかけてくるに違いない。

 しかし、奴は来なかった。

 1週間待っても来なかった。

 くっ……ナゼだ。
 待ってないときには「こんにちは☆」と無理矢理押しかけてきやがるのに。

 理不尽さを感じるが、仕方が無い。
 馬車を用意し、記憶を頼りに奴らの家へと向かう。

 向かったら――――――――引っ越し済みだった。

 くっ……ナゼだ。

 これは新手の嫌がらせなのかッ!!
 さすがアースラの人器ッ!!

 いやいや、更正した後のリオンはウザウザ星人ではあるが、そこまで性格は悪くなかったはずだ。
 思い直して隣家に聞きに行くと、髪だけは不自然に若々しい、よぼよぼのじいさんが出てきた。
 そうして強烈に胡散臭そうな目でワタシを見る。

 ハテナ?

 アリシアは美しい。
 その見た目のおかげか、大抵の人間はワタシに親切にしてくれる。

 なのに変だと思っていたら、今回はその美しい見た目が災いしたようだ。
 何でもエルに一目ぼれした美人ストーカー集団が時々押しかけることがあるそうで、エルたちの引っ越しの原因はそれだった。
 そしてワタシもその一人に間違われたのだ。

 失敬なッ!!!!!!!

 何でワタシがあのアホ兄のストーカーに間違われねばならぬのだッ!!!

 必死で誤解を解いて、エルたちの新住所を手に入れる。
 そうしてまた馬車で延々と移動した。



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