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再会小話4・リオンのトホホ外伝 

再会小話4・リオンのトホホ外伝 1

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以前書いた『エルのトホホ外伝』の対になる話です。
目線は相変わらずヴァティールとなります。

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 ここは小さな宿屋の一室。
 アリシアの体を休めるため用意した部屋の中だ。

 大切な愛娘の体を傷めぬよう、慎重に魔力を右手のひらの上に集中させる。
 そうすると、そこに赤い影が浮かび上がった。
 ゆらゆらと光を放ちながら、それは形を成してゆく。

 出来上がったのは、上質なルビー。
 それを小袋に入れる。

 昔のワタシであれば、岩を黄金に変える事すらたやすかった。
 しかし今造れるのは、小指の爪の先ほどのサイズの小さな宝石だけ。

 それ以上のものを造ると『アリシアの体』を壊してしまうことになるからだ。

 しかし出来上がった宝石は、微細な内包物さえ含まない最上級品。
 サイズこそ小さいが、これで3か月分の生活すべてをまかなうことが出来るのだ。

 ワタシの今の体はアリシアのもの。粗末には出来ない。
 夜は今いるような、安全な宿屋のベッドで休ませてやりたいし、本体を探すための移動には、体に負担をかけぬための馬車も必要だ。

 服だって華美ではなくとも似合ったものを新調してやりたい。
 そのためには金がそれなりにかかるのだ。

 とはいえリオンに探知されるのが嫌で、魔力は使わず、バイトに励んでみたりもした。

 リオンはアースラの末。最後の神官魔道士だ。
 ワタシを封じる術を持つ。
 会わずに済むなら、そのほうが良い。

 だが、もうリオンを警戒する必要は無い。

 話してみると、リオンは意外と良いヤツだった。
 少なくともアホ×1000のエルよりは、うんと良い奴だ。

 ちゃんと和解出来たのだから、今後顔を合わせたところで封印されることはないだろう。

 それに、エルが何やら怒っていたから、当分はワタシのところにも来るまい。
 リオンはそれなりに話せるヤツだったが、それでもエルが嫌がることはしないだろうから。

 さて、まずは市街に出て宝石を金に換え、アリシアの冬服でも買いにいくか…………。
 ワタシがそう思ったときだった。

「こんにちは☆ ヴァティールさんっ!!」

 何の前触れもなくリオンが転移魔法で現れた。
 昔は転移魔法までは使えなかったはずなのに、いつのまにか腕を上げやがって!!

 そういえば、アースラも転移魔法は得意だった。
 人間の魔道士ではありえないほどの長距離を軽々と飛んでいた。

 だから、アースラの末であるリオンが転移魔法を使えることに対しては不思議でもなんでもない。
 アレス帝国の王や皇太子でさえ、転移魔法で兵をブルボアに送り込むことが出来ていたのだから。

 だが、来るなら一人で来いよ。
 うっと~しい兄まで一緒に連れて来なくても良いではないか。

 それに――――。

「オマエたちは何故ドアから普通に入って来れぬのだッ!!
 そんな訪問の仕方があるかッ!!!」

 人としてのマナーを説くために怒鳴ると、リオンはしょんぼりとした。
 伏せた瞳には涙がにじんでいる。

 ちょっと言い過ぎたか。

 そういえば、昔はワタシも『そんなこと』をしてたっけかな?
 うん、今思い出したけど、転移魔法で突然部屋を訪れて、アリシアやエリスをビックリさせたことが何度かあったよなァ。

 最近はすっかり人間の暮らしが板についてしまったうえ、魔力を使いすぎるとアリシアの体を傷めてしまうのでやらないが。

「……申し訳ありませんでした。丁度兄様とヴァティールさんの話をしていたときにあなたの魔力を感じたものでつい……」

 謝る弟のしょんぼりした姿を見て、馬鹿兄がアホ丸出しでリオンの援護を始めた。

「リオンはお前に会うのを楽しみにしていたのに、何でそんなこと言うんだよッ!
 酷いじゃないか、ヴァティール!!」

 叫ぶ馬鹿兄の言葉に、リオンがそっと涙をぬぐう。

「……いえ、気の利かない僕が悪かったのです。本当に申し訳ないことを……」

 うお。何だこの雰囲気。
 押しかけられたワタシの方がワルモノか?

 ヤッパ魔力開放なんてするんじゃなかったッ!!

「……ところで、ワタシの話をしていたらしいが、何の話をしていたのだ?
 ワタシの悪口でも言っていたのかァ?」

 とりあえず、話題を変えてみる。
 エルはバカのくせにネチネチとしつこいヤツだからなァ。

 そういえば前回の別れ際、バカ兄はワタシがリオンに手を出そうとしていた――――と誤解したままだったっけ?

 そんなわけあるかと叫びたかったが、説明するのもメンドーなので、とっととズラカッタのだ。
 ヤツはいったん思い込むと、話なんか聞きゃしないからなァ。

「いえ、悪口だなんてそんな……ただ、兄の誤解はすぐ解けましたし、今度ヴァティールさんにお会いできたらきちんと謝ろうね……ってそんな話をしていたのです」

「そ、そうか」

 そういうことなら、すぐに追い返すわけにもいくまい。

「しかし、嫉妬深いオトコと結婚すると、大変だなァ」

 同情の目をリオンに向けると、奴は意外そうに瞬いた。

「え? そんなことはないですよ!!
 焼きもちをやいてもらえるなんて、光栄だし嬉しいですっ!」

 リオンは幸せそうに頬を染め、エルは、

「あはは~。俺のリオンは本当に可愛いな~!!」

 と、まなじりを下げている。
 勝手にやってろ。

「しかし、どんなに美少女風に見えてもリオンは男なんだろ?
 人間は結婚し、子供に命をつないでいく事こそ『幸せ』なのだと本で読んだことがある。リオンにもそういう道は無かったのか?
 どうせ寿命は長いのだ。
 一回ぐらいは女の子と付き合ってみれば良かったのに」

 そう言うと、リオンは心外そうに首をかしげた。

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