422 / 437
再会小話3 そうだ、バイトをしよう
再会小話3 そうだ、バイトをしよう 6
しおりを挟む
「くっ……!!」
リオンの涙を見たエルが、タキシード姿で走り去る。
おーい。リオンは置き去りでいいのかァ?
……と思っていると、エルは何かを手に、すごい勢いで引き返してきた。
よく見ると、その『何か』は『伝唱石』だった。
その長細い石に向かって喋れば遠隔地の相手に声が伝わり、耳に当てれば相手の声が聞こえるという、大変高価な魔道具の一つである。
エルはその『伝唱石』を支配人に差し出す。
支配人は怪訝な顔をしながらもそれを受け取り、耳に当てた。
結果として、模擬結婚式はエルとリオンで盛大に行われた。
花嫁はとてつもなく貧乳だったが、女性客からの評判は概ね良かったようだ。
多分、美しさではかないようもない超絶美少女(仮)のその胸が『自分よりも小さいこと』が喜ばしかったのだろう。
支配人の方は、あれからずっと真っ青な顔をしていたから……相当高位の人間から叱られたと推測できる。
ワタシたちはバイト代に加え、高額の和解金を彼から受け取り、『お詫びに』と用意してくれた高級ホテルに引き上げた。
「なァ、あの伝話相手、誰だったのだ? まさか社長の第四王子か?
でもオマエラの情報って王子たちは知らないのだろう?」
たしか前に、そのようなことを言っていたはずだ。
本当はさっさと転進したかったが、興味が勝ったのでノコノコと部屋までついていき、人目がなくなったところで聞いてみる。
「ああ。伝話相手なら、ブルボアの現王だけど?」
当たり前のように涼やかに言うエルに、流石にビックリする。
「前にも言ったが、代々の現王だけは俺達の素性を知っている。
定期的に連絡もとっている。
『オマエのところの馬鹿息子の会社の支配人を締め上げろ。
さもなくば、伝説の魔獣ヴァティールが式場で大暴れするぞ』と言っておいた!」
エルは満足そうに胸を張った。
げェ!
「な、何でワタシが暴れることになっているのだッ!?
関係ないじゃないか。
どうせなら『極悪魔道士のリオンが式場で大暴れするぞ』とでも言っておけばいいのにッ!!!」
そういうと、エルはキョトンとした。
「えっ? 無理無理。俺の可愛いリオンは優しいからそんなことしないし。
だいたい、脅しだとしても、そんなイメージの悪いことに愛するリオンを使えるわけないって。
あはは~」
昔は『名宰相』の肩書きを持っていたというこの馬鹿男は、空気を読まずに爽やかに笑った。
貴様…………ワタシのイメージならどうなっても良いというのか。いつかコロス……。
しかしワタシは黙った。
「コロス」などと口に出すと、リオンが逆ギレするかもしれないからだ。
逆ギレのあげく、再び封じられでもしたらたまらない。
それに、今回はエルも『アリシアの体』に惑わされず、馬鹿なことを言わなかった。
空気は読めないなりに、進歩はあったと言えよう。
他は些細なことと思って我慢……我慢しかない。
リオンの涙を見たエルが、タキシード姿で走り去る。
おーい。リオンは置き去りでいいのかァ?
……と思っていると、エルは何かを手に、すごい勢いで引き返してきた。
よく見ると、その『何か』は『伝唱石』だった。
その長細い石に向かって喋れば遠隔地の相手に声が伝わり、耳に当てれば相手の声が聞こえるという、大変高価な魔道具の一つである。
エルはその『伝唱石』を支配人に差し出す。
支配人は怪訝な顔をしながらもそれを受け取り、耳に当てた。
結果として、模擬結婚式はエルとリオンで盛大に行われた。
花嫁はとてつもなく貧乳だったが、女性客からの評判は概ね良かったようだ。
多分、美しさではかないようもない超絶美少女(仮)のその胸が『自分よりも小さいこと』が喜ばしかったのだろう。
支配人の方は、あれからずっと真っ青な顔をしていたから……相当高位の人間から叱られたと推測できる。
ワタシたちはバイト代に加え、高額の和解金を彼から受け取り、『お詫びに』と用意してくれた高級ホテルに引き上げた。
「なァ、あの伝話相手、誰だったのだ? まさか社長の第四王子か?
でもオマエラの情報って王子たちは知らないのだろう?」
たしか前に、そのようなことを言っていたはずだ。
本当はさっさと転進したかったが、興味が勝ったのでノコノコと部屋までついていき、人目がなくなったところで聞いてみる。
「ああ。伝話相手なら、ブルボアの現王だけど?」
当たり前のように涼やかに言うエルに、流石にビックリする。
「前にも言ったが、代々の現王だけは俺達の素性を知っている。
定期的に連絡もとっている。
『オマエのところの馬鹿息子の会社の支配人を締め上げろ。
さもなくば、伝説の魔獣ヴァティールが式場で大暴れするぞ』と言っておいた!」
エルは満足そうに胸を張った。
げェ!
「な、何でワタシが暴れることになっているのだッ!?
関係ないじゃないか。
どうせなら『極悪魔道士のリオンが式場で大暴れするぞ』とでも言っておけばいいのにッ!!!」
そういうと、エルはキョトンとした。
「えっ? 無理無理。俺の可愛いリオンは優しいからそんなことしないし。
だいたい、脅しだとしても、そんなイメージの悪いことに愛するリオンを使えるわけないって。
あはは~」
昔は『名宰相』の肩書きを持っていたというこの馬鹿男は、空気を読まずに爽やかに笑った。
貴様…………ワタシのイメージならどうなっても良いというのか。いつかコロス……。
しかしワタシは黙った。
「コロス」などと口に出すと、リオンが逆ギレするかもしれないからだ。
逆ギレのあげく、再び封じられでもしたらたまらない。
それに、今回はエルも『アリシアの体』に惑わされず、馬鹿なことを言わなかった。
空気は読めないなりに、進歩はあったと言えよう。
他は些細なことと思って我慢……我慢しかない。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
子悪党令息の息子として生まれました
菟圃(うさぎはたけ)
BL
悪役に好かれていますがどうやって逃げられますか!?
ネヴィレントとラグザンドの間に生まれたホロとイディのお話。
「お父様とお母様本当に仲がいいね」
「良すぎて目の毒だ」
ーーーーーーーーーーー
「僕達の子ども達本当に可愛い!!」
「ゆっくりと見守って上げよう」
偶にネヴィレントとラグザンドも出てきます。
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる