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エルとリオンのトホホ外伝

エルとリオンのトホホ外伝7

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 足取りも重く、すっかり疲れて部屋に帰る。

「兄様、どうかなさったのですか?
 何だか疲れた顔をなさっていますよ?」

 リオンが心配そうに俺に尋ねる。

「いや、なんでもないよ……」

 そう言って作り笑いを浮かべると、リオンはでっかい瞳に涙を浮かべた。

「どうして兄様は僕に『兄様の苦労』をわけては下さらないのですか!?
 僕は、大好きな兄様のためにだったら何でも出来るのに……」

 そう言って、ハラリと涙を流す。

 うっ!
 可愛いぃぃ!!

 なんと可愛いのだ我が弟よ!!

 俺は小さな弟を力いっぱい抱きしめた。

「兄様、少し苦しいです……」

 小さく囁かれ、力を緩める。

「ご、ごめん! 大丈夫か?」

 リオンはこんなに小さいのに、何をやっているのだ俺。

 もっと壊れ物を抱くように、優しく優しく抱きしめないといけないのに、ついつい可愛さのあまりギュウギュウと抱きしめてしまった。

 というか、これってどうなのだろう?

 相当頑丈なリオンが苦しがるぐらいだから、俺がうっかり女性を思いっきり抱きしめたら全身の骨が折れるのではないだろうか?
 そうしたら、モテるどころか……俺に近寄って来る女性は皆無になりそうだ。

 脳裏にアリシアの、

「けっ。ゴリラが!」

 という冷たいセリフと表情が浮かぶ。
 ゴリラじゃない……ゴリラじゃ…………。

 ひでェよ、アリシア。
 俺はこれでも『自分が美形だ』と思って生きてきたんだ…………。

「あの、兄様、僕の方こそごめんなさい。
 痛くはないのですが、少し息が苦しくなってしまって……。
 それより、何かお困り事がおありのように見えたのですが、僕に話しては下さいませんか?」

 リオンはホント優しいなぁ……。
 息が詰まるほどきつく抱きしめてしまったのに、怒るどころか益々俺に優しい。

 王やアリシアとは大違いだ。
 本当に本当に、天使のようだ。

 しかし俺を尊敬してくれているこの可愛い弟に、実は『俺が全くモテない男』だとバレたらどうなるのだろう……。
 年齢=彼女居ない歴だと知れたらどうしよう……。

 リオンはこの俺を『情けない兄』だと思うだろうか?
 王と同類の、一度もモテたことのない哀れな男だと白い目で見るだろうか?

 ああ、そんなことになっては兄の威厳は星の彼方に吹っ飛んでしまう。
 話題……話題をそらさねば。

「まあ、困り事って言うか、俺はさ、お前みたいな子と結婚したいな~。
 リオンみたいに『優しくて可愛い子』が俺のタイプだし……」

 あまりのリオンの優しさに、何だか気が弱くなっていたのだろう。
 ついついそんな事を呟いてしまう。

「前に教会の前で約束したろう?
 大人になっても俺の事が一番好きだったら、俺と結婚するって。
 今でも俺と結婚したいって思う?」

 何だかリオンの『幼い可愛らしさ』に癒されたくなってそう言うと、弟は黙り込んだ。

 えっ!?

 そこは、

「はい、兄様。もちろんですっ❤」

 だろう。

 前に何度か聞いたときには、一瞬の間もなくにっこり笑って頷いてくれたのに、何この反応?

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