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エルとリオンのトホホ外伝

エルとリオンのトホホ外伝2

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 俺だってもう16歳だし、彼女とか、欲しくないわけではない。

 けれど、俺のために何度も命を懸けてくれた『可愛い弟』を蔑ろにしてまで、女性と付き合いたいってわけでもない。

 こういうのは『出会いの運命』を信じて、じっと待つのが賢明だ。
 ガツガツ探せば良いってものではない。

 いつか俺がもっと大人になったなら……リオンのように優しくて、リオンのように可憐で、リオンのように控えめで、リオンのように一途に俺を思ってくれる女性が自然と現れて、リオンと俺の両方を大切にしてくれるに違いない。

 まあ容姿については妥協する。

 リオンと同じほどの芸術的美しさを求めては、さすがに天地をくまなく探しても難しいことだろう。
 俺から見て中々可愛いと思えるほどの容姿があれば十分だ。

 現実を鑑みて、高望みなどは決してしない。
 俺は堅実な男なのだ。

 そう熱く語ったらアリシアは、

「けっ!」

 と吐き捨てた。
 本当に失礼なヤツだ。

「はぁ……言うだけならもちろんタダだけど……ソレ、絶対無理だからっ」

 どうしてアリシアは、いつもいつもこの俺を、そんなにも冷たい目で見るのだろう?

 これでも俺は凄くモテる。
 本当にモテる。

 幼い頃から『カッコイイ』だの『麗しい』だの言われまくり、世間のほとんどの女性からは老若問わず、良い扱いを受けてきた。

 告白だって……アリシアは知らないだろうが、この国に来てからでさえ数十人から受けている。
 もちろんそれはリオンの足元にも及ばない容姿の女性たちからではあるが、世間では十分綺麗、で通る女性や少女ばかりからの告白である。

 とはいえ、それらを受けるつもりなど最初からない。

 告白してくれるのは嬉しいが、俺にも『理想』というものがある。
 彼女たちは俺の理想にはちょっと足りない。

 ただ、その女性たちの人となりも知らないのにすぐに断るというのも『容姿を見て断ったのか』と思われ傷つけてしまうだろう。

 まあ実際そうなのだが、すぐに断っては角が立つ。
 大抵は少し世間話などをしてみてから断ることにしている。

 そうして15分ほど一緒に楽しくおしゃべりをしたら、皆一様に、

「弟さんと幸せになって下さいね。今日はありがとうございました」

 と言ってどの女性も礼儀正しく帰ってそれきりだ。
 きっと、俺の理想にはちょっと足りない事をそれとなく察して、賢く身を引いてくれたに違いない。

 うんうん。
 いつか、リオンのように優しくて、リオンのように可憐で、リオンのように控えめで、リオンのように一途に俺を思ってくれる女性と結婚して、リオン共々幸せになってみせるとも。

 君らの『尊い犠牲』は決して無駄にはしない。

 ……というわけで、彼女は居ないがモテないわけではない。
 なのに、アリシアにまったく『モテナイ男』扱いされるのは本当に不本意だ。


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