復讐は正攻法で

コーヒー牛乳

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衝突

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 また取り損ねてしまった昼食の代わりにサンドイッチをつまんで野菜ジュースで流し込み、ちょっと散歩がてら違う階のトイレまで階段を使った。
 気合を入れ直しデスクに戻ったのが15時過ぎ。座るやいなや、彩さんと話し込んでいた清水さんが話しかけてきた。

「森田さん、どこ行ってたんですか?」
「お昼休憩に行けなかったので、さっと食事をしてきました」

 ハァーと長い溜息の後、昼休憩は既定の時間にとるようにと嫌味が続く。だったら昼食前に期限まで温められた仕事をわざわざ振らないで欲しい。

 こっちもハァ、とわざと溜息をつけば清水さんは般若のような顔になった。

「それで、なにか御用ですか?」
「……今日渡したB社の資料、まだ?16時のミーティングで使うんですけど」
「あぁ……昼休憩前に回ってきたB社の資料ですね」

 わざと勿体ぶった仕草でゆっくりと清水さんの歪んだ顔を見上げる。

 本件のB社の資料とは、まさしく昼前に渡された仕事である。
 もちろん、この資料が今日の16時のミーティングで使用するものだとは清水さんから聞いていない。いつも「早く仕上げて」だけなので。

 しかし、ここ最近は清水さんの分の仕事を肩代わりしすぎて内容を把握してしまった節がある。担当営業ごとに作ってほしい資料のくせやポイントはあるだろうが、それがわかってしまえば転用してしまえる。そう時間はかからない。

 ちょっと関わっただけでもちろん全部わかるわけではないので、確認が必要な部分もあった。だがしかし、清水さんに聞いても時間がかかるだけで解決しない。清水さんは自走する駒が欲しいのだ。ご要望通り、私は清水さんを飛ばしてB社の担当営業に直接確認することにしたのだった。

「それなら営業にお渡ししましたよ」
「……は? なんで森田さんが渡すの!?」

 清水さんの声に、また営業デスクの人々の視線がこちらに投げられた。またこの二人が面倒事を……と思われたらかなわないのでやめてほしい。
 興奮する清水さんとは違うことを協調するように、努めて穏やかに話すように意識した。

「B社の件は私が作成した資料ですので、当然ですよね。問題ありますか?」
「ありえないんだけど……報告フローとかあるでしょ!」
「報告……清水さんって私の上司だったんですか。初耳です」
「なっ……!」

 見下していいように使っていたやつに初めて言い返されて引っ込みがつかなくなったのか、どんどん清水さんはヒートアップしていた。あまり言い合いが長引けば二人まとめて呼び出されてしまうかもしれないので、ここまでにしよう。

「それよりいいんですか? 内容を把握しなくて。16時からですよね」
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