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しおりを挟む「殿下、何度も申し上げますがわたくしにこのようなお話をされても困りますわ」
マデリン様の凛とした声に引き戻される。
さすが主役。注目を集める能力が高い。
「……ナタリア?」
「アル様、今はそれどころじゃないですよ。シッ」
アル様から何度か名前を呼ばれた気もするが、修羅場は待ってはくれないのだ。
「こっちも今いいところだったよね?」
ねえねえと手を握って気を引こうとするアル様の唇に指を乗せる。
「アル様。いい子でお待ちください」
ね、と念を押せば耐えがたい苦痛だったのか苦悶の表情で頷いた。
……おそらく、この修羅場が終わった時が、私の修羅場の始まりかもしれない。お父さま、お母さま、先立つ不幸をお許しください。
「やっぱり……マデリン様は許せませんよね……愛する殿下を奪ってしまってごめんなさい……!」
「あぁ泣かないで愛しい人。マデリン、長らく婚約者として縛ってすまなかった。君の気持ちに答えられなくて……すまなかった……」
「……ですから、この婚約は王家と我が公爵家の契約ですので、陛下とお父様にお話頂く必要がございますわ」
「では、許してくれるのか……!」
「わたくしは婚約が破棄されようがかまいませんので、お父様にお任せしますわ。もう行ってもよろしい?」
涙ながらに演説する二人にマデリン様はゆっくりと噛み含ませるように説明した。その姿はまるで聖母のようで。
感動の涙をぐっとおさえるように目頭をつまんだ。
マデリン様……成長されましたね……っ
「待ってくれ。マデリン、君の気持ちはわかっている。泣かないでくれ」
「……まだ何か?」
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