上 下
6 / 28

6 失敗ー2

しおりを挟む
俺は張り紙が剥がれ落ちて、捨てられているなんて知らず、神様が示した屋敷が見える所の茂みに隠れていた。

「さて、ここからどうしようか?入り口に人は居ない。が、狂暴そうな犬の鳴き声が聞こえるんだよなぁ。ここからじゃ姿は見えないけど、絶対ドーベルマンみたいなのがヨダレを垂らしてうろついてるんだ」

こういう所の犬はそうと決まっている!鑑定でどこに居るかわかれば、少しは動きようがあるんだけどなぁ。と思いながら屋敷を見上げると、“良魂”と言う文字が屋敷のあちこちに表示された。

しかし“良魂”って分かりやすいけど、他に無かったの鑑定くん?
さて、居場所は分かるようになったけど問題はどうやって接触して、説得するかだな。あまり時間をかけると見つかるしな。

屋敷を見上げるながら考えてると、“良魂”の文字が一ヶ所に集まりだした。しかも10人全員。
時間的に食堂かもしれない。しかし、10人だけなのかが問題だなと思ってると、今度は“敵”の文字が出てきた。

確かに俺にとっては敵になるかもだけど、この鑑定なんか俺に都合良く進化してないか?
とにかく今は、目の前の事を片付けよう。
“敵”の文字は有り難いことに“良魂”とは反対の方に集まっていた。
神様が運をあげてくれた効果かな?

このまま茂みに隠れて玄関前を通り(思った通りドーベルマンみたいな犬だったよ)、“良魂”の集まってる食堂の方へ向かった。

とても静かに食事をしていた。しかもなんか全員目が死んでるし、どう声をかけようか考えてると、こっち向きで食べていた少年と目があった。年の頃は14~5と言ったところだろう。
思わず俺は、「こんにちは」と挨拶してしまった。

確かに目があったのに、その少年はまた何事も無かったように食事を始めた。

「えーと、あのー、時間がないと思うのでそのままで聞いてください。俺はあまり言葉を多くは知らないので、単刀直入に言います。ここから逃げましょう。残念ながら、ここに居る10人しか助けられませんが」

俺の逃げるって言葉に数人が反応したけど、俺と目のあった少年の言葉でまた死んだ目になった。

「どこのどなたかは知りませんが、余計なことはしないでください。もし今逃げれたとしても、見つかって殺されるだけです。今すぐお帰りください。見つかれば殺されますよ」

食べ終わったのか、全員が席を立った。まずいと焦り、窓から中に入り

「俺は神様から君たち10人を助けてやって欲しいと頼まれたんだ。君たちはまだ引き返せるからって」

俺が言い終わると同時に少年が食器を投げ捨て、俺に掴みかかってきた。

「分かったようなことを言うな!何が神だ!俺たちは神なんて信じない!どんなに苦しくても、どんなに痛くても助けてくれなかった!それに、俺たちはこれしか知らない!もうマトモな生活なんて出来ないんだ!」

「そんなことはない!まだやり直せる!神様は言っていた、ここにいる10人は悪意に染まってないって!生まれたときからここに居るって言うのは君だろう?神様はちゃんと見ている。だけど、神様のルールで助けられないことの方が多いんだ。でも今は、俺を通して俺の手が届く範囲内だけど、助けてやれる」

捕まれてた胸元から手を外し、

「逃げよう?俺の居る教会には、俺が神様に頼まれて助けたスラムの子供達が居る。しかもその教会、神様が自ら加護をかけて、教会内の子供達を守ってる。教会に行けば、殺されない。だから、ここに居る皆で逃げよう」

神様は見てくれている。助けられないことに心を痛めてる。その事を分かって欲しい。俺の手を取って欲しい。

「行こう?」

と、手を出すと俺達のやり取りをみていたら子供達が俺の手を取ってくれた。そして、少年の手を取って俺の手に乗せた。

「おにいちゃん、いこう?もうおにいちゃんがいたいのみたくない。」

「お兄ちゃんがわたしたちのかわりにいたいことされてるの知ってるの」

「おにいちゃん、いつもまもってくれてありがとう。もういいよ?おにいちゃんはおにいちゃんをまもろう」

小さい子ども達の言葉に少年は泣き出した。俺も泣きそうだ。皆いいこや。
暫くして、泣き止んだ彼は

「逃げるとしたら今しかない。大切なものは少ないから肌身離さず持っている。このまま行ける!」

そう言うと、それぞれの大切なモノを首元から取り出し掲げて見せた。

「よし、この窓から行くぞ」

そう言って年長組の内2人が先に降り、次におチビ達を降ろした。後は一人で降りられるので、先に降りた2人が周りの警戒をしていた。流石、暗殺者の教育を受けてただけはある。連携が取れてるし、無駄がない。

誰にも見つかること無く俺が浸入してきた壁に着いた時、ドーベルマンに見つかった。

ワンワンワンと濁音が付きそうな声で吠えまくり、襲ってきた。
年長組がドーベルマンと格闘している内に、おチビ達を壁の穴から出していった。
俺と年長組を残して全員を出して

「後は俺達だけだ。大丈夫か?こっちに来れるか?」

「ああ、こいつで終わりだ!」

そう言って、ドーベルマンを倒したらこっちへ来て、穴を通って行った。最後に俺が出ていき、全員が居ることを確認したら、教会まで走り出した。

しかし、やはり追手が来た。俺はこの中で一番足が遅いので、少年に教会までの道を教え、先導を頼んだ。足が遅い事で必然的に殿を勤める事になった為、魔法を使い足止めを試みたが魔法初心者、あっさりやぶやれた。しかしめげずに魔法を使って足止めをした。

どのくらい走ったか、行くときはそれ程遠くには感じなかったけど、それなりの距離はあったらしい。走って、魔法で足止めをしてとしていると、見慣れた教会が見えたとこで、俺は叫んだ。

「走れ、走れ!チビ達は抱えて走れ!教会の中に入れれば大丈夫だから!とにかく、走れ!」

俺は無駄だと分かっていたが、魔法で壁を作り少しでも足止めをして彼らが教会に入る時間をかせいだ。
ふと、教会を見ると騒ぎに気づいて出てきたのかレジー達がいた。俺は咄嗟に

「レジー、そいつらを保護!早くしろ!」

レジーは年長組を集め、走ってきている10人の子供達を教会に引き入れた。後は俺だけ。
俺は後少しで教会に着く所で、追手の一人が投げたナイフが背中に刺さり、その場に倒れた。
また死ぬのかな?俺

気がついたら、腰に手を当てて怒ってますと言うような顔の神様がいた。

「私、言いましたよね?今回は危険だと。何で一人で行動したんですか!」

いまいち状況が読めないが、取り敢えず神様の質問に答えよう。

「レジー達は忙しそうだったし、神様だって特にレジー達に手伝ってもらえとは言ってないよね?丸投げだったし」

丸投げで少し怯んだが、

「それでも、誰にも何も言わずに行くのは団体生活の場ではあり得ません」

「メモしたけど?」

「剥がれ落ちて、捨てられたので伝わってません」

「あらら、落ちちゃったの?」

神様はあきれたように

「はぁ、今回は私も言葉が足らなかったと言うことで、小言もここまでにします。後はあの子達に怒られてください。怪我は私が治しました。ですが、今回限りです。次は助けられません。どうか気をつけて。追手の人達は加護に弾かれたときに記憶を改竄して子供達を見失ったことにしてます」

「怪我、治してくれたんですか?ありがとうございます。でも、あの子達って?怒られるって何ですか?」

神様は答えず、手を降って

「次回はまだ余裕があるので、親睦を深める時間に使ってください」

そう言って、俺の意識は現実に戻ってきた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

処理中です...