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「晃先輩!今日もよろしくお願いします!」
結花はこれでもか、というぐらい頭を下げた。
「なあ。小松。センパイじゃないだろ……」
呆れたような晃の声に、結花はハッとして小さな声で言いなおした。
「あっ、樋口主任……」
「お前だってもう2年目だろ?それに俺に着いてから半年たつだろ。しっかりしろよ」
厳しい言葉と裏腹に、優しくポンと叩かれた頭を結花はそっと手で押さえると、そのまま席を離れた晃を見送った。
(やっぱり優しいな……晃セン……おっと、樋口主任)
「…ちょっと、ねえ、ちょっと結花!!結花ってば!」
その声に結花はハッと我に返った。
「あっ。千香……」
「もうとっくに樋口主任いないわよ」
腕を組んで小さくため息をついた、同期の結花の言葉に結花も頷いた。
「…うん」
小松結花 23歳 大手IT企業 サイエンスコーポレーション 海外事業部のアシスタント2年目。
ふんわりとした茶色の背中の半分ぐらいまである髪の毛と、クリっとした瞳。身長は160㎝。
それなりに整った顔立ちをしているが、黙っていれば可愛いのに…とすぐに言われる残念なタイプだ。
今まで男は全部友達になってしまうような性格で、悩みがなくていいねとすぐに言われる。
結花に声を掛けたのは、隣の営業部の同期で小池千香。
千香はすらっとして、落ち着いており、結花とは反対のタイプの女性でいつも結花を気にかけてくれる姉御肌の友人だ。
「だから!お昼!いかないの?」
千香の呆れたような言葉に、結花は慌てて腕時計に目を向けた。
「え?もうそんな時間?ごめんね。待たせちゃって」
結花は急いでパソコンの電源を落とすと席を立った。
「今日はどこに行く?」
千香は結花の準備が終わるのを、横目で見ながら聞いた。
「うーん。お蕎麦はどう?」
「ああ。いいね。天ざるにしようかな」
千香は少し考えるように言った。
二人は話しながらビルを出ると、少し路地に入った蕎麦屋に向かった。
【そば処 露庵】
営業中の看板と共に、お昼時という事もあり少し並んでいた。
最後尾に2人は並ぶと、店の入り口にあるお昼のメニューを眺めた。
「うーん、鴨汁南蛮も捨てがたいな……。結花は何にする?」
「確かに捨てがたいよね。私はどうしようかな……」
千香の言葉に結花ももう一度メニューに目を落とした。
5分ほどして、二人は店内の2人掛けの席に案内をされた。
それほど大きくはない店内は、お昼時のサラリーマンやOLでにぎわっていた。
注文を済ますと、千香はお茶を一口飲むと結花を見た。
「で?樋口主任とどうなのよ?」
「どうって。どうもないよ」
いきなりの質問に、少し言葉を濁しながら結花は答えると、お茶を一口飲んだ。
「もう何年?片思いして」
千香は頬杖をつくと、そんな結花を呆れたようにジッと見た。
「……5年」
「まあ、長い片思いだこと。えーと?なんだっけ?高校3年の時に、高校のOBの樋口主任がバスケ教えに来てくれたんだっけ?」
千香は昔結花に聞いた話を、思い出すように聞いた。
「うん。すごくカッコよかった。先輩……イヤ主任は結構長い時期見てくれてたんだよね……それからはたまにOB会で会ったりして」
結花は思い出すように言うと、うっとりした表情を見せた。
「で、会社も追いかけて入った訳だ。まあ、入れたのがすごいけど……すごい執念」
千香は運ばれてきた天ざるの海老天を口に放り込むと最後は呟くように言葉を発した。
「千香ってば、ひどい!」
「だって本当の事でしょ?5年も見ているだけって。会社まで追いかけたんだから告白ぐらいすればいいのに」
「まあ、そうなんだけど……猛勉強したし。就職試験はまぐれのような気がするけどね」
「でも本当にどうして今まで1度も告白しなかったの?」
千香は今更だけど……と聞いた。
「だって。初めて会った時には、先輩同じ大学の同級生に彼女がいて、追いかけて入ったら明らかに好きな人が……いたじゃない」
「結花また先輩になってるよ。好きな人って塔子主任?」
千香も、そっかと言う表情をして結花を見た。
塔子主任と言うのは、晃の前の海外事業部の主任で、晃の同期だ。
美人で、結花のようなアシスタントではなく、海外事業部初の女性管理職についた仕事の出来る人だ。
「見てすぐにわかったもん。ああ、あの人が主任の好きな人だって……。そして塔子主任相手じゃ勝てる気しなかったよ」
結花は箸を置くと、小さくため息をついた。
「まあ、勝てないわね、塔子主任みたいな完璧な人が相手じゃ」
「千香!さっきからちょっとひどくない?」
その言葉に、千香はクスリと笑うと結花を見据えた。
「でも、でも、喜んじゃいけないけど、樋口主任振られちゃったじゃない?そして、運命のように海外事業部に異動になって、私がアシスタントになれたんだよ!」
結花は、きちんと晃が振られたかどうかを確かめた訳ではなかったが、塔子は今年の春、会社の上司と結婚し、ニューヨークに行ってしまった。その空きのポジションに晃が異動してきた。
勢いよく言った結花を見て、
「そろそろ本気でがんばって」
千香はそれだけ言うと、蕎麦をすすった。
「いままでも本気だよ……」
呟くように結花も言うと、蕎麦に改めて手を付けた。
結花はこれでもか、というぐらい頭を下げた。
「なあ。小松。センパイじゃないだろ……」
呆れたような晃の声に、結花はハッとして小さな声で言いなおした。
「あっ、樋口主任……」
「お前だってもう2年目だろ?それに俺に着いてから半年たつだろ。しっかりしろよ」
厳しい言葉と裏腹に、優しくポンと叩かれた頭を結花はそっと手で押さえると、そのまま席を離れた晃を見送った。
(やっぱり優しいな……晃セン……おっと、樋口主任)
「…ちょっと、ねえ、ちょっと結花!!結花ってば!」
その声に結花はハッと我に返った。
「あっ。千香……」
「もうとっくに樋口主任いないわよ」
腕を組んで小さくため息をついた、同期の結花の言葉に結花も頷いた。
「…うん」
小松結花 23歳 大手IT企業 サイエンスコーポレーション 海外事業部のアシスタント2年目。
ふんわりとした茶色の背中の半分ぐらいまである髪の毛と、クリっとした瞳。身長は160㎝。
それなりに整った顔立ちをしているが、黙っていれば可愛いのに…とすぐに言われる残念なタイプだ。
今まで男は全部友達になってしまうような性格で、悩みがなくていいねとすぐに言われる。
結花に声を掛けたのは、隣の営業部の同期で小池千香。
千香はすらっとして、落ち着いており、結花とは反対のタイプの女性でいつも結花を気にかけてくれる姉御肌の友人だ。
「だから!お昼!いかないの?」
千香の呆れたような言葉に、結花は慌てて腕時計に目を向けた。
「え?もうそんな時間?ごめんね。待たせちゃって」
結花は急いでパソコンの電源を落とすと席を立った。
「今日はどこに行く?」
千香は結花の準備が終わるのを、横目で見ながら聞いた。
「うーん。お蕎麦はどう?」
「ああ。いいね。天ざるにしようかな」
千香は少し考えるように言った。
二人は話しながらビルを出ると、少し路地に入った蕎麦屋に向かった。
【そば処 露庵】
営業中の看板と共に、お昼時という事もあり少し並んでいた。
最後尾に2人は並ぶと、店の入り口にあるお昼のメニューを眺めた。
「うーん、鴨汁南蛮も捨てがたいな……。結花は何にする?」
「確かに捨てがたいよね。私はどうしようかな……」
千香の言葉に結花ももう一度メニューに目を落とした。
5分ほどして、二人は店内の2人掛けの席に案内をされた。
それほど大きくはない店内は、お昼時のサラリーマンやOLでにぎわっていた。
注文を済ますと、千香はお茶を一口飲むと結花を見た。
「で?樋口主任とどうなのよ?」
「どうって。どうもないよ」
いきなりの質問に、少し言葉を濁しながら結花は答えると、お茶を一口飲んだ。
「もう何年?片思いして」
千香は頬杖をつくと、そんな結花を呆れたようにジッと見た。
「……5年」
「まあ、長い片思いだこと。えーと?なんだっけ?高校3年の時に、高校のOBの樋口主任がバスケ教えに来てくれたんだっけ?」
千香は昔結花に聞いた話を、思い出すように聞いた。
「うん。すごくカッコよかった。先輩……イヤ主任は結構長い時期見てくれてたんだよね……それからはたまにOB会で会ったりして」
結花は思い出すように言うと、うっとりした表情を見せた。
「で、会社も追いかけて入った訳だ。まあ、入れたのがすごいけど……すごい執念」
千香は運ばれてきた天ざるの海老天を口に放り込むと最後は呟くように言葉を発した。
「千香ってば、ひどい!」
「だって本当の事でしょ?5年も見ているだけって。会社まで追いかけたんだから告白ぐらいすればいいのに」
「まあ、そうなんだけど……猛勉強したし。就職試験はまぐれのような気がするけどね」
「でも本当にどうして今まで1度も告白しなかったの?」
千香は今更だけど……と聞いた。
「だって。初めて会った時には、先輩同じ大学の同級生に彼女がいて、追いかけて入ったら明らかに好きな人が……いたじゃない」
「結花また先輩になってるよ。好きな人って塔子主任?」
千香も、そっかと言う表情をして結花を見た。
塔子主任と言うのは、晃の前の海外事業部の主任で、晃の同期だ。
美人で、結花のようなアシスタントではなく、海外事業部初の女性管理職についた仕事の出来る人だ。
「見てすぐにわかったもん。ああ、あの人が主任の好きな人だって……。そして塔子主任相手じゃ勝てる気しなかったよ」
結花は箸を置くと、小さくため息をついた。
「まあ、勝てないわね、塔子主任みたいな完璧な人が相手じゃ」
「千香!さっきからちょっとひどくない?」
その言葉に、千香はクスリと笑うと結花を見据えた。
「でも、でも、喜んじゃいけないけど、樋口主任振られちゃったじゃない?そして、運命のように海外事業部に異動になって、私がアシスタントになれたんだよ!」
結花は、きちんと晃が振られたかどうかを確かめた訳ではなかったが、塔子は今年の春、会社の上司と結婚し、ニューヨークに行ってしまった。その空きのポジションに晃が異動してきた。
勢いよく言った結花を見て、
「そろそろ本気でがんばって」
千香はそれだけ言うと、蕎麦をすすった。
「いままでも本気だよ……」
呟くように結花も言うと、蕎麦に改めて手を付けた。
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