53 / 59
これからの未来へ
第2話
しおりを挟む
「部長がいるからって諦められるぐらいの気持ちなんでしょ!」
叫ぶように言った日葵を、怖いぐらいに真剣な壮一の瞳が射抜く。
「そんなわけあるか! お前といることが苦しくて、でも会いたくて、そんな気持ちお前にわからないだろう。でも、俺の強引さでさんざん日葵を傷つけてきた。これ以上俺の身勝手でお前の幸せを壊すわけにいかないだろう! だから俺は……」
壮一は最後は振り絞る様に言った後、掴んでいた日葵の腕を離し、ツメが食い込むほど自分の手を握りしめる。
そんな壮一に、日葵は耐え切れず壮一の腕の中に飛び込んだ。
そ壮一の腕が反射的に、日葵を抱きしめようとするも、躊躇するように元あった場所へと戻る。それでも日葵は壮一に言葉を続けた。
「じゃあ、ずっと捕まえていてよ。もう私が二度と不安にならないように。崎本部長には謝ってきたんだから。あんな、あんな素敵で優しい人なのに」
子どもの頃のように泣きじゃくる日葵に、壮一は少し困ったように日葵を見つめる。
「ひま、俺本当はこんなに情けない男だよ。いつも日葵の前でカッコつけてただけで」
探る様に日葵を見る壮一に、日葵はキッと睨みつけた。
「そんなのもう知ってる!」
「お前を散々泣かせたのに?」
「それでもそうちゃんがいいって思っちゃたんだから仕方ないじゃない!」
「……やっぱりバカだな。日葵は」
苦笑するように言った壮一の言葉に、イラっとして日葵が視線を逸らそうとするのと今まで触れていなかった壮一の腕が力ずよく日葵を囲う。
苦しくなるほどの力に、日葵は壮一の胸を叩いた。
「ちょっと、そうちゃん苦しい……」
抱きしめてもらえたことの嬉しさと、少しの恥ずかしさに日葵が視線をそらそうとすると、壮一がそれを阻止するように頬を掬い上げる。
「やばい、嬉しい。もう一生泣かせない」
その言葉をこれまで一緒にいたどのときよりも近くに壮一を感じると、唇が優しくふさがれた。
「んんっ!」
初めて経験するキスに日葵は耐え切れず、声を漏らすも構うことなく壮一はだんだんとキスを深めていく。
「そうちゃん……もう。無理」
切れ切れに答えた日葵を、壮一は力強く抱きしめる。日葵の耳元に壮一は唇を寄せると少し震えた声で日葵に囁く。
「絶対にもう二度と日葵を泣かせない。大好きだよ」
その言葉にようやく日葵の中で呪縛が解ける気がした。ようやく遠回りをしたけど本当の居場所を見つけた気がした。
「どんなそうちゃんも好きだよ」
幼いころずっと完璧だと思っていた壮一の弱さを知り、生身の男性だと分かった。
これからは追いかけるのではなく、二人で一緒に歩幅を合わせて進んでいきたい。
心から日葵はそう思った。
そんな甘い空気を壊すように、ドアがバンと開かれる。
「壮一! 倒れたって……あらお邪魔した?」
冷やかすように言われた香織の声に壮一が大きくため息をつき、日葵は慌てて壮一から離れた。
「香織ママ……久しぶり」
日葵の声に香織がクスリと笑い声をあげた。
「その様子なら問題なさそうね。とりあえずお医者様が今日は入院するようにですって。日葵ちゃん、一緒に帰りましょう」
「え?」
香織の声に反応したのは壮一で、いかにも不服そうな表情の壮一に、香織はジッと壮一を見つめた。
「とりあえず今日は休みなさい。日葵ちゃんは逃げないわよ」
きっと二人の事などお見通しなのだろう。日葵も名残惜しい気持ちを抑えつつ、壮一に小さく手を振る。
「なんだよ」
ブツブツと文句を言う壮一を、香織も面白そうに見つめた。
病院を後にすると、日葵は澄んだ空気を大きく吸いこんだ。そんな日葵の隣を歩いていた香織は苦笑しつつ日葵に声を掛ける。
「ごめんね、日葵ちゃんも疲れたでしょ。ゆっくり休んで。とんだクリスマスイブになっちゃったわね」
香織の言葉に今日がクリスマスイブだったことを日葵は思い出す。
「そんなことないですよ」
確かにいろいろなことがあったクリスマスだったが、ようやく自分の気持ちに気づくことができ、長年の辛かった日々から解き放たれた気がした。
叫ぶように言った日葵を、怖いぐらいに真剣な壮一の瞳が射抜く。
「そんなわけあるか! お前といることが苦しくて、でも会いたくて、そんな気持ちお前にわからないだろう。でも、俺の強引さでさんざん日葵を傷つけてきた。これ以上俺の身勝手でお前の幸せを壊すわけにいかないだろう! だから俺は……」
壮一は最後は振り絞る様に言った後、掴んでいた日葵の腕を離し、ツメが食い込むほど自分の手を握りしめる。
そんな壮一に、日葵は耐え切れず壮一の腕の中に飛び込んだ。
そ壮一の腕が反射的に、日葵を抱きしめようとするも、躊躇するように元あった場所へと戻る。それでも日葵は壮一に言葉を続けた。
「じゃあ、ずっと捕まえていてよ。もう私が二度と不安にならないように。崎本部長には謝ってきたんだから。あんな、あんな素敵で優しい人なのに」
子どもの頃のように泣きじゃくる日葵に、壮一は少し困ったように日葵を見つめる。
「ひま、俺本当はこんなに情けない男だよ。いつも日葵の前でカッコつけてただけで」
探る様に日葵を見る壮一に、日葵はキッと睨みつけた。
「そんなのもう知ってる!」
「お前を散々泣かせたのに?」
「それでもそうちゃんがいいって思っちゃたんだから仕方ないじゃない!」
「……やっぱりバカだな。日葵は」
苦笑するように言った壮一の言葉に、イラっとして日葵が視線を逸らそうとするのと今まで触れていなかった壮一の腕が力ずよく日葵を囲う。
苦しくなるほどの力に、日葵は壮一の胸を叩いた。
「ちょっと、そうちゃん苦しい……」
抱きしめてもらえたことの嬉しさと、少しの恥ずかしさに日葵が視線をそらそうとすると、壮一がそれを阻止するように頬を掬い上げる。
「やばい、嬉しい。もう一生泣かせない」
その言葉をこれまで一緒にいたどのときよりも近くに壮一を感じると、唇が優しくふさがれた。
「んんっ!」
初めて経験するキスに日葵は耐え切れず、声を漏らすも構うことなく壮一はだんだんとキスを深めていく。
「そうちゃん……もう。無理」
切れ切れに答えた日葵を、壮一は力強く抱きしめる。日葵の耳元に壮一は唇を寄せると少し震えた声で日葵に囁く。
「絶対にもう二度と日葵を泣かせない。大好きだよ」
その言葉にようやく日葵の中で呪縛が解ける気がした。ようやく遠回りをしたけど本当の居場所を見つけた気がした。
「どんなそうちゃんも好きだよ」
幼いころずっと完璧だと思っていた壮一の弱さを知り、生身の男性だと分かった。
これからは追いかけるのではなく、二人で一緒に歩幅を合わせて進んでいきたい。
心から日葵はそう思った。
そんな甘い空気を壊すように、ドアがバンと開かれる。
「壮一! 倒れたって……あらお邪魔した?」
冷やかすように言われた香織の声に壮一が大きくため息をつき、日葵は慌てて壮一から離れた。
「香織ママ……久しぶり」
日葵の声に香織がクスリと笑い声をあげた。
「その様子なら問題なさそうね。とりあえずお医者様が今日は入院するようにですって。日葵ちゃん、一緒に帰りましょう」
「え?」
香織の声に反応したのは壮一で、いかにも不服そうな表情の壮一に、香織はジッと壮一を見つめた。
「とりあえず今日は休みなさい。日葵ちゃんは逃げないわよ」
きっと二人の事などお見通しなのだろう。日葵も名残惜しい気持ちを抑えつつ、壮一に小さく手を振る。
「なんだよ」
ブツブツと文句を言う壮一を、香織も面白そうに見つめた。
病院を後にすると、日葵は澄んだ空気を大きく吸いこんだ。そんな日葵の隣を歩いていた香織は苦笑しつつ日葵に声を掛ける。
「ごめんね、日葵ちゃんも疲れたでしょ。ゆっくり休んで。とんだクリスマスイブになっちゃったわね」
香織の言葉に今日がクリスマスイブだったことを日葵は思い出す。
「そんなことないですよ」
確かにいろいろなことがあったクリスマスだったが、ようやく自分の気持ちに気づくことができ、長年の辛かった日々から解き放たれた気がした。
0
お気に入りに追加
589
あなたにおすすめの小説
彼女の浮気相手からNTRビデオレターが送られてきたから全力で反撃しますが、今さら許してくれと言われてももう遅い
うぱー
恋愛
彼女の浮気相手からハメ撮りを送られてきたことにより、浮気されていた事実を知る。
浮気相手はサークルの女性にモテまくりの先輩だった。
裏切られていた悲しみと憎しみを糧に社会的制裁を徹底的に加えて復讐することを誓う。
■一行あらすじ
浮気相手と彼女を地獄に落とすために頑張る話です(●´艸`)ィヒヒ
【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?
おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。
『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』
※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。
ずっと君のこと ──妻の不倫
家紋武範
大衆娯楽
鷹也は妻の彩を愛していた。彼女と一人娘を守るために休日すら出勤して働いた。
余りにも働き過ぎたために会社より長期休暇をもらえることになり、久しぶりの家族団らんを味わおうとするが、そこは非常に味気ないものとなっていた。
しかし、奮起して彩や娘の鈴の歓心を買い、ようやくもとの居場所を確保したと思った束の間。
医師からの検査の結果が「性感染症」。
鷹也には全く身に覚えがなかった。
※1話は約1000文字と少なめです。
※111話、約10万文字で完結します。
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
好きだった幼馴染に出会ったらイケメンドクターだった!?
すず。
恋愛
体調を崩してしまった私
社会人 26歳 佐藤鈴音(すずね)
診察室にいた医師は2つ年上の
幼馴染だった!?
診察室に居た医師(鈴音と幼馴染)
内科医 28歳 桐生慶太(けいた)
※お話に出てくるものは全て空想です
現実世界とは何も関係ないです
※治療法、病気知識ほぼなく書かせて頂きます
甘い誘惑
さつらぎ結雛
恋愛
幼馴染だった3人がある日突然イケナイ関係に…
どんどん深まっていく。
こんなにも身近に甘い罠があったなんて
あの日まで思いもしなかった。
3人の関係にライバルも続出。
どんどん甘い誘惑の罠にハマっていく胡桃。
一体この罠から抜け出せる事は出来るのか。
※だいぶ性描写、R18、R15要素入ります。
自己責任でお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる